
□医療行為必要な障害児の就学 伊予市出身の折田さん 松前で懇談 主張続け行政変
えよう 教育現場の環境整備急務
人工呼吸器を使いながら大阪府池田市の普通中学校を今春卒業した折田涼君(1
5)と母親のみどりさん(43)=伊予市出身=がこのほど来県し、伊予郡松前町筒
井の町総合福祉センターで、県内の障害児の母親たちと懇談した。みどりさんは、涼
君の就学をめぐる行政との“闘い”を紹介し、「主張し、活動し続ければ行政の意識
も変えられる」と愛媛の母親たちにエールを送った。
涼君は脊髄(せきずい)性筋委縮症という病気で、生後六カ月のころ気管切開し、
人工呼吸器を着けて生活。痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療行為が欠かせな
い。三歳半まで入院し、同年代の子どもとのかかわりが少なかった。「地域で暮らし
たい」との思いは強く、涼君と家族は市立保育所を希望。だが最初の壁にぶつかるこ
とになる。
入所は認められたものの、当初は週一回の交流保育だけ。それ以外の日に行くと、
所長は「ほかの日は来ないでください」ときっぱり。涼君がいる前で言われたことが
ショックで「しばらく眠れない日が続き、ああ、これが障害者差別なんだ」と気付
く。
交渉の末、看護師を配置してもらい、卒園までの半年間は母親の付き添いなしで生
活できた。
次は就学。「保育所と同じでいい」と考えていたが、教育委員会という壁は想像以
上に大きかった。市教委は涼君の生活介助のために看護師二人を配置したが、「医療
行為はやりません。保護者が責任を持って行ってください」という姿勢だった。
みどりさんは、涼君の小学時代の四年間、校内で付き添った。市民による署名運動
などにも発展し、市長部局の福祉部からの看護師派遣が実現。付き添いの負担は解消
された。
「行政側はいつも『何かあったら』と言う。何か起きた場合を想定してそれに対応
できるよう整備してくれればいい。そのための協力ならいくらでもする」。みどりさ
んはこう強調した。
涼君は高校入試に合格し、今月から高校生活が始まる。会話ができない涼君はまば
たきで意思表示する。
懇談の中で、涼君は介助者を通じて「中学を卒業し、春から高校生になる折田涼で
す。よろしくお願いします」とあいさつ。みどりさんは「高校受験もスムーズに進ん
だ。これまでの活動が実を結んだような気がする。涼の高校生活が楽しくなるよう側
面からサポートしていきたい」と笑顔で話していた。
涼君に同行した、人工呼吸器をつけた子どもたちの保護者でつくる「バクバクの
会」(大阪府)の穏土ちとせ副会長は「誰もが障害者になる可能性があり、障害児の
親たちが頑張っていることは、最終的には自分を含めてみんなに返ってくる。そう
やってみんなが生きやすい世の中をつくっていこう」と訴えた。
愛媛では、医療行為が必要な子どもたちの場合、学校現場では保護者の責任で医療
行為を実施するよう求められる。中には、車いす介助だけを必要とする子どもにさ
え、保護者の付き添いが求められるケースもある。「愛媛に生まれてよかった」。誰
もがそう思える環境整備が急がれる。
愛媛新聞社2005.04.06 朝刊