「リラックス・ベイビー・ビー・クール」 小沢健二
おれは12月のひだまりの中で
ワインの瓶を手に持って飲んでる
おれは公園のベンチに座って足で地面に模様をかいてる
ハーヴェイ・カイテル
ダジャレはいいから
唾をたらすと土の上で丸くなる
糸をひいた唾の残りが
風に吹かれて頬にくっつきひんやりとする
走ってきた犬をおれは撫でる
硬くて短い毛がアザラシのようだ
逆さに撫でると手に刺さるようだ
逆さに撫でるといやがるようだ
しかし結局は
おれの手の匂いをかいだりしている
やがて犬はどこかへ行ってしまう
おれは映画を見に行くことができる
おれはマリファナを吸うことができる
おれはモーツァルトのカセットテープを買って
家で聴くことだってできる
おれは本を読むことができる
スウィフトやポオなんかを
いつもすぐ飽きちゃうけど
おれはハンサムなので
女の子を連れて帰って
オ・・・することだってできるだろう
おれはデパートへ行って
きれいなコップを2コ買って帰ることができる
おれは片足跳びで帰ることもできる
おれは口に含んだワインを
よく温めてから飲むことができる
おれは死ぬことだってできるんだろうな
だけどそれは
おれにできるたくさんの事柄のひとつに過ぎないし
その中で
特に魅力的なことって訳でもない
おれはこのままだらだらと
生き続けるのだ
おれは手紙魔になることができる
おれはテレビでボクシングの試合を見ることができる
おれは毛布にくるまって眠ることができる
あれは実にいいな
それにもうすぐ
クリスマスだってやってくる
おれは雨が降ると自分に審判が下るのが
少し先延ばしになったように感じることができる
おれは地下鉄に乗って
ケツにおできができるまで
一日中往復を繰り返すことができる
おれはもう少し髪を伸ばすことができる
あんまり長いのは嫌だけどな
おれは…
おれはおれの心に
まるで小さな猫にやるように
あったかなミルクを与えてやる
少しずつ むせないようにね
リラックス・ベイビー・ビー・クール
「DOOWUTCHYALIKE」vol. 6 1994/12