| 1:精神安定剤 | 2:消えない罪 | 3:ひとをころすということ | 4:自殺 | 5:鬱 |
| 6:パニック | 7:モノクロの涙 | 8:血 | 9:悲劇のヒロイン | 10:暴言 |
| 11:出口のない迷路 | 12:隔離 | 13:絶望 | 14:赤い空 | 15:絶滅 |
| 16:終わる世界 | 17:no future | 18:もう一人の私(僕) | 19:死へのカウントダウン | 20:死神 |
| 1:精神安定剤 (中学校時ヒル魔→栗田) ひどく。 とてもひどく、こわくなる。 こうしてひとりでいると。 なにが、とはわからない。 けれど、とても無性に、なにかを、つぶしてしまいたくなるような。 焦げるような、感情。 立っていられないような、平面世界。 そこで足をすくわれて。 もう二度と、立てないような。 もう二度と、起き上がれないような。 そんな感情が湧き上がってきて、吐き気すらした。 ひとりじゃぁ、たっていられねぇんだ。 だれかに、手をとってほしいんだ。 そうじゃないと、とても怖くて。 こんなこと、他人にいえたもんじゃねぇ、けど。 ぎゅっと、ひざをかかえた。 とても、世界が赤くみえた。 全てを燃やしてしまうほど、赤く見えた。 いっそのこと、その赤さで俺も燃やしてほしいと思った。 こわかった。 うごけなかった。 きっと指先いっぽんでも動かしたら。 この世界は、俺を、つぶしにかかるだろうから。 つぶれて、それで、おしまいになってしまうのが怖かった。 ・・・・・・・・・どうしようもないくらい。 手は、伸ばせなかった。 そこにはなにもないとしっていたから。 ひたすら、ひざをかかえてひざをかかえてひざを、かかえて。 かえらねぇと。 かえらねぇと、いけないのに。 壊れて しまいそうだったから すべてがなにもなくなってしまうように きっと、このからだはばらばらになって、壊れてしまうとおもった。 叫びは届かない。 涙すらでてこない。 ただ、その感情は俺の頭に拳銃を突きつけて。 このままここでうたれてしまえばいいといっていた。 胸をかきむしって。 そうして穴をあけることができれば、よかった。 はやくはやくはやくはやくはやくはやく、どうか、はやく。 『いっしょに、帰ろうよ、ヒル魔君。』 動けないから、俺は動けないから動いたらバラバラにこわれてしまうからだからどうか。 いつも手を差し伸べてくれる、あの糞デカイヤツが、ここへきてくれることを、祈った。 あの手は暖かいんだ。 あの手は、安心するんだ。 この、劣情を、優しく、溶かしてくれるから。 こないことはしっていた 俺がここにいることを、知っているはずがないこともしっていた けれど そのありえない願いにすら今の俺は、すがっていて。 「くり、た。」 静かに、その名を凍った空気へと滑らした。 もう、こんなところから抜けだしたいから。 どうか、俺にその手を差し伸べて、どうか。 どうか。 |
| 2:消えない罪 (黒木→十文字→ヒル魔) もう、其れすらどうでもいいと。 他人などどうでもいいと思う自分が、ここにいる。 響く泣き声。 大の男が、泣いて、本当に阿呆だ、と。 そこにあるのはもはや、侮蔑と、冷めた眼差し。 「いやだ。」 うつぶせになってなくそいつは、それでもなお、俺の足をつかんで。 どうしてだろう、とふと思った。 考えたのは、如何してこいつのことをかけらでも愛していた自分が、いただろうということ。 俺を止めるその行為は、もう、迷惑以外の何物でもなく。 「なぁ、十文字ぃ、な、おねがいだから、お願いだからっ・・・・・・」 泣いているのか笑っているのかわからない顔で。 その顔をぐちゃぐちゃにして、尚、それでも尚。 俺にすがろうとする。 今はその顔にすら吐き気がした。 「手を離せ、黒木。」 「ぃ、やだ。」 「離せっつってんだろこの、下種。」 愛してたなど、其れこそ笑わせる。 もう、この眼の前の『人間』には何の興味もなく。 ただ、俺の想いは遥か彼方に囚われたままで。 どうしてこいつは俺を止めるのだろうと。 うっとうしかった。 だから、足をつかんでいる手を思い切り、蹴飛ばした。 吹っ飛ぶ体。 後ろで鳴り響く、ガラスの砕ける音。 世界が壊れていく、音。 「一生そこでくたばってろ。」 言葉など、もうかけたくもなかった。 早く、この足が赴くがままに走り去ってしまいたかった。 その言葉が、俺の心をとめさえしなければ。 「捨て、捨てないでっ、十文字ぃ、捨てないでぇっ・・・・!」 ゆっくりと、黒木がいるであろう其処を、ふりかえった。 もう、何がなんだかよくわからないような姿になりながら。 まるで其れはぼろぼろの雑巾じゃないかと間違うような姿に、なりながら。 それでもその眼は、俺に助けを求めていて。 必死に。 必死に。 かつて俺が何度もなでたその黒い髪も。 何度も何度も覗き込んだ、その眼も。 なにも、かわらないままに。 手を、伸ばして。 いつもそうだった。 そうして捨てられることに脅えて。 脅えて顔色を伺って、かってにつぶれて。 かってに、喜んで。 俺の腕を引っ張って。 思い起こせば、其れは曲がりなりにも幸せだったのかもしれない。 だが、もう、俺がもどってくることは、ない。 其れをこいつは、おもいしらなきゃならない。 かろうじて、最期の感情を総動員させて、黒木へと近づく。 「・・・・・十文字?」 見上げた顔は、期待を寄せた感情でいっぱいになっていて。 それに、俺は何の感情も手向けてやらないまま、言い放った。 「てめぇ、もういらねぇんだよ。」 かつては、この絶望につぶれた顔をみるのが好きだった。 だが、今は、もう。 この心はあの人にこんなにも囚われてしまったから。 確かな形で、この手にしたい。 あの人を、ヒル魔さんを。 だからそのためには、俺は全てを捨てていこう。 貴方を愛する。 例え、もう二度と消えない罪がこの体を蝕んでいたと、しても。 |
| 3:ひとをころすということ (パラレルで中学時代ヒル魔→栗) ひどく、その感触が気持ち悪くおもえてならなかった。 否、もうその感覚には慣れきっているはずなのに。 それでも、こんなことをしている自分が、とても汚いと思えて。 『てめぇは人を殺すだけでいい。』 「・・・・・・・・・つ。」 何をやってるんだと殴られた跡がちりりといたんだ。 口元に手を伸ばす。 もう凝固してしまった其れは、悲鳴をあげて。 苛立ちに任せてかきむしれば、また新たな血を流した。 もう既に血で染まっているこの手を、新たに血で染めて。 指をにぎると、血の所為でそれはぬるりとした感触で。 慣れていたはずなのに。 最近サボっていたからか、それに嫌悪感すら覚えた。 『捨てられてたてめぇをすくってやったのはだれだとおもっている。お前は俺に逆らえない。 さぁ、今すぐ、殺して来い。お前には、その感情以外必要ない。』 人殺し。 其れが、俺に与えられた仕事。 誰が中学生が人殺しだと思うだろう。 否、中学自体が既に人殺しを隠すカモフラージュにすぎない。 けれど。 初めてだった。 トモダチというやつが。 初めてだった。 自分に、好きなことができたのが。 だが、其れを優先した結果がコレだ。 山ほど押し付けられた仕事。 人を殺す仕事。 「もう、うんざりなんだよっ・・・・・!」 眼の前に横たわる死体をけった。 事後処理をまだしていなくて、血もとびちったままで。 なにもしていない其処に、ただ俺はたたずんだ。 もし、俺が普通の中学生だったら。 何も心配せずに、ただ笑って。 友達とつるんで。 栗田の糞でかいケツをけったり。 ムサシのオヤジっぷりをみて笑ったり。 大好きな、アメフトをしたり。 そんなことをして、生きていけたのだろうか。 ありえないことを夢想しても、所詮其れは幻に過ぎない。 だが。 「・・・・・・・・・・ぁ」 カラン。 瞬間、眼をうたがった。 思考が停止して、何も考えられなかった。 何も考えない頭のまま、ただ手に握っていたナイフだけが音を立てた。 「ヒル、魔?」 声がする。 俺はしゃべっていないのに声がする。 どこからだ、否、其れは眼の前の男から。 どうして。 どうして。 こんなとこにこいつがいるんだ。 心は物凄い勢いで今の現状を消しにかかる。 だが、その現実を受け止める頭はいま尚うごいていて。 殺さなければ。 見られてしまった、だから殺さなければ。 「ヒル――――――。」 「―――――――っっ!」 コンマの世界。 眼が理解しなくとも、頭はかってに足を走らせて。 自分の意識を無視して、かってに手刀をいれた。 それだけで動きがにぶいこいつは気をうしなって。 その上に、俺は馬のりになった。 (だめだ!!!!) かろうじて理性が本能にまさったのは、腰に挿していたナイフを地面に落としていたから。 手を伸ばしても、じぶんにの近くにはもう、其れはなく。 しかし尚、此処で首を締めてしまうのはたやすいことで。 (ころさなくては。) そう、思うのに。 (ころさなくては。) いったいなにが、どうなって。 (ころさ、なくては。) どうなって。 この眼からはこんなにも涙が溢れるんだろう。 あんなにも俺はひとをころしてきたのに。 そこに慈悲のひとかけらもなかったのに。 眼の前のこいつを殺すのは歩く事と同じようにたやすいのに。 「栗田、俺は、てめぇを、ころせねぇ、んだ」 涙が溢れて止まらなかった。 こんなにも血にまみれた手で生きていく事が、気持ち悪かった。 「ころせねぇんだ。」 どうかこのまま起き上がらなければいいと願った。 こんなにも、痛い、其れは。 人を、殺すということ。 |
| 4:自殺 (ムサヒル) このまま、この体が消えてしまえばいいと、想った。 何でもない、ただ、其れだけを果てしなく願った。 どうしてこんなにも息をすることがつらいんだろう。 どうしてこんなにも、この体に血がながれてるんだろう。 ガツッ、ガツッ、ガツッ・・・・! 遠くで聞こえたのは、誰かが此処へとのぼってくる音で。 そんな事も気にならないほど、俺は空を見上げていた。 なんて世界は青いんだろう。 なんてこの体は紅いんだろう。 どうしてこの心はこんなにも漆黒なのだろう。 気持ちいい風が、頬をなぶった。 「ヒル魔ぁ!!!!!」 その風が吹くままに、俺はそっちを振り返った。 なんてことのない、いつもの光景だ。 そこに立ってたのは、ムサシだった。 何をそんなに驚いているのか、ただその眼はおもしれぇぐらい見開いていて。 「なーにやってんだよ、ムサシ。」 こんなところで。 そういうと、ムサシはつかつかとこっちへやってきて。 「なにやってって、聞きたいのはこっちだろうが・・・!!!」 まるでなぐりかからんばかりに、俺の方へと駆け寄った。 否、実際絶対なぐられるとおもったんだがよ。 なぜか、この体はその、広い腕の中におさまっていて。 「なぁ、死ぬ勇気があるんなら、その分生きろよ、そんな勇気、いらねぇだろう・・・・・!」 自分をきずつけるのだって、勇気がいる。 そんな勇気があるなら、生きる為にその勇気をつかえ、と。 眼の前の男が、見当違いのことをいう。 確かに、この腕には、もう綺麗な所が見当たらない。 とこまでもトワに咲く傷の花。 幾重にも広がる跡の海。 深く、深く、どこまでも、永遠に。 まるで其れは日の当たらない深海のよう。 「だって。」 「・・・・・・・?」 「俺は、生きることの方が怖ぇよ。」 最期なのだと、自分に言い聞かせた。 もう、こんなにこいつが俺を愛してくれるのは最期なのだと。 言い聞かせた。 何度も、何度も悩んで俺はそう決めた。 そうだ、俺は俺を殺すんだ。 そう誓ったから、だから。 きつく、きつくその体を抱き締めた。 ごつくてまるで男のその体を、きつく、きつくだきしめた。 愛してくれた、愛していた。 そうして優しく俺をかき抱いてくれた。 其れが、こんなにも温かいと。 初めて思えた、愛しい。 だからこそ、生きていくことを恐れた。 こんな自分など要らないと必死になって否定した。 どうか、ムサシを俺のような漆黒に染めてしまう前に。 恐れていた世界から離脱する決断を俺は、下した。 「てめぇは勘違いしてるけどよ」 「・・・・あ?」 「俺は、自殺するなんざ一言も、いってねぇ。」 だって、そんなことしたらお前が悲しむから。 唖然とするその眼を見据え。 隙をみて、わずかにその唇を奪った。 触れるか、触れないか、その程度の、まるでついばむような。 「なぁ、俺が俺を殺してもお前は俺を好きでいてくれるか?」 きっと、コレが見えてしまえばムサシは俺を止めてしまうから。 そっと、其れを、ポケットからとりだして。 背中越しに、見据える。 微弱の電気が流れる程度のスタンガン。 「何いって」 「愛してる、ムサシ。」 今も。 きっとこれからも。 俺が、死んでも、俺はきっとお前を愛し続ける。 こんなに汚い俺はいなくなって、新しい俺へと。 そうして俺はそのスタンガンを自分の頭に当てた。 「ヒル魔っ・・・・・・!!!!!!!!!」 悲鳴。 名前を呼ぶ、声。 風。 名前を呼ぶ、声。 空。 俺を抱き寄せる、腕。 青。 紅い、紅い、血。 「・・・・・・・・・・ぁ」 「おいっ!!!!!大丈夫かヒル魔・・・・・・・!!」 ゆさぶる腕。 見知らぬ顔。 「・・・・・・・だ、れだ?」 「ヒル魔?」 なぁ、だからいっただろう。 俺は自殺はしない。 けれど、俺は、俺を殺すって。 「おまえ、だれ、だ?」 愛してる。 それでも俺は、お前を。 |
| 5:鬱 (ヒル魔単発) どうしても、頭が痛いと思わずにはいられなかった。 ただ、その現象は俺の意思とは無関係に起こる物で。 其れが、明確に俺のどこかを、食い荒らしているようで。 いっそのこと、吐いてしまえば楽なのかも知れなかった。 正直、胃酸が食道をせりあがってくる感触が気持ち悪くて。 背筋に寒気が走るほど。 だから、吐くのは好きじゃなかった。 否、そんなの好き好んで吐くやつがいるのかしらねぇけど。 「・・・・・・・・・あー、もう、めんどくせぇな。」 持っていたケータイを、手放した。 あとからあとからくる吐き気に怒りがわきあがる。 どうして、こんなにも俺は弱いんだろう。 そればかりを、思った。 弱いんだ。 だからこそ、立っていられない。 コレが、精神からくるものだってのはとっくの昔からしってる。 だからこそ。 そんなモノに負ける俺が、弱くて、赦せなかった。 もっと強ければ、きっとたっていられた。 そんな吐き気なんて吹き飛ばして、笑って、たっていられた。 そうしていつもみたいに、走って、いられた。 こんな心臓を踏み潰すような痛みなど感じずに。 こんな、俺という存在を消してしまうような闇なんて感じずに。 たからこそ、精神的にまいってる、それだけの理由で。 このからだがこんなにも壊れてしまうことが、赦せなかった。 もっとあるけるから。 もっと立てるから。 もっと、走れるから。 この足はまだ、走れるから。 はやく立ち上がって、そしていかねぇと。 そう、想うのに。 この体は、もうやめてくれと俺に懇願する。 もう動けないから、もう、走れないから。 そうして立ち止まろうとする。 全てを、かなぐりすてて。 そんなものに負けてしまう俺を殺してやりたいと。 いったい、なんど思っただろう。 実際、殺してしまえるはずなんてないのに。 けれど確実に、その感情は俺の心を蝕んで。 ギシ、と心が軋んだ。 其れは、今俺に届くどの音よりも大きく、この耳を侵した。 手放した指先には、もうなにもなかった。 ただ、そこには冷たい空気が流れるのみで。 ベッドから放り投げ出された腕に、だんだんと血がたまっていく。 其れはある種、水風船を想像させた。 どんどんみずがはいっていく水風船。 どんどん、重力にしたがってたまっていく俺の紅い血。 其れはきっと、今にもはちきれんばかりに飽和して。 その瞬間に腕を切り落とせたなら。 どんなにすさまじい血しぶきが飛ぶだろう。 この部屋中を、血の紅で染め上げて。 「ゲホ、ゲ、ゥ・・・・・・・ッ。」 そこまで考えて、考えるのをやめた。 「ハ、ハハハ、ハッ・・・!」 もう片方の腕で、ひかりをさえぎった。 狂気。 そうとしか思えないほどの、笑い。 ――――吐き気は止まらない。 否、吐き出したいのは胃の中におさまっているものか。 それとも、心に渦巻いている、闇か。 もう、何も動かせなかった。 学校はとっくの昔に始まってる。 せめて、あいつらに連絡しとかねぇとともおもったが。 もう何も、動かせなかった。 この指先すら、動かす事を拒否していて。 そうして俺は、静かに眼を閉じた。 俺は、きっと、そんな理由で全てから逃げようとしている、だけだ。 うごけないからきもちがわるいからはきそうだからもうたてないから だからもうだれもおれのじゃまをせずにどうかここでねむらせて 其れがわかっているからよけいに、自分を殺したくなった。 逃げたいから、だからこんな風に弱っているフリをして。 そうして逃げて、逃げて、逃げて。 気持ちが悪い事を言い訳にして、にげて、にげて、にげて。 本当はどこにも逃げられないと俺は充分にしっているのに。 にげて。 にげて。 『ヒル魔は無理しすぎだから』 ふと、脳裏をあいつの顔がよぎった。 『ヒル魔は、我慢して、我慢して、つぶれちゃうから。』 今はその声を、聞きたくないと思った。 『だから、僕達を、もっとたよってよ。』 頼る? そんなことしたら俺はもっとつぶれちまうのに? きっとそこでなにもしないまま。 俺は、ただ他人が差し伸べる手にすがって。 吐き気がした、そんな自分に。 ただもう全てが短絡的思考につながる。 自分が死んでしまえば、全て納まるんだとどこかで声がする。 昏い、昏い、其れは深遠の淵。 この闇は、どこからきてどこへいくんだろう。 そんな現実味のないことを、頭の隅で考えた。 もう、救いはいらない。 このまま、全てを引き千切る心をいだいて。 「誰か、俺を、殺してくれ。」 俺はいもしない神にそう、願った。 |
| 7:モノクロの涙 (小学生ヒル魔) 痛い、とそれすらおもいもしなかった。 俺にとってはそんなのどうでもいいことで。 痛みなんて俺に生きていることさえおもわせてはくれなかった。 「あー、よごれんな、このままじゃ。」 もう、服が泥でべたべたになってて。 どっちにしろもうこの服が使い物にならないことぐらい、俺にでもわかった。 泥に混じって、血がついてることも。 この服、きにいってたのに。 ふと、そんなどうでもいいことが頭をよぎった。 「かばん、どっかにいっちまった。」 ゆっくりと、あきあがった。 どこもおれちゃいねぇ。 ただ、頭だけがいたかった。 や、あたりまえか、あたまから血がでてんだから。 ぱたぱたと、地面に血が落ちる。 当然のように涙はでなかった。 もう、涙なんてからだのどこにもなかった。 どこかに消えた。 まるでシャボン玉。 屋根まで飛んで、壊れて、消えた。 でもみんなそうだ。 ちょっとぐらいじゃ、なかねぇから。 だから俺もそれが普通だとおもってた。 この世界に、色がねぇことも。 色がない、色がない、生きていない世界。 呼吸はできる、でもただ心臓が動く世界。 それが普通だと、俺は信じてた。 でも、それはどうやら違うらしい。 みんな、いたかったら泣くっていう。 それがどうしてだかおれにはわからなかった。 ただ、わめいて、わめいて、そうして、なくらしい。 おれはもうそんなもんもってなくて。 「・・・・・・ぅ。」 たちあがろうとしたら、血溜りで足をとられそうになった。 そんなに血はでてない、でも少しのそれでもつるりとすべりそうになって。 「あ」 「大丈夫?」 そのからだを、なにかよくわからねぇもんがつかんだ。 「ぼく、おとうさんよんでくるから」 それは俺を座らせると、たどたどしい足で階段をのぼってった。 俺がおちた階段の上には、寺がある。 そこの子供か、とぼんやりと、思った。 ここでなけたら、俺はちゃんとした人間になれるんだろうか。 なくという感情がなくても、俺はちゃんとした人間なんだろうか。 ただ、なんでか其処だけがおれからぽっかり切り取られていて。 痛みは俺に生きていることを知らせてはくれない。 生きているのかわからない、この世界。 モノクローム、白黒の。 そんな世界でさえ俺が流す涙がないんだと、 思い知ったら胸が少し痛んだ。 |
| 8:血 (栗ヒル) こつり、と其の拳銃を頭にあてた。 今まで引き金を引いたことは何度もある。 それをするのはなんてかんたんなのだろうと。 実際使ってる俺でさえ、そうおもってしまうほどで。 がシャリ、と安全装置をはずす音がした。 何処か現実味がない、とても空虚な音だ。 くだらねぇ。 そんな現実さえもくだらねぇ。 眼の前の鏡の中にいる自分が、ひどくゆがんで見えた。 頭に拳銃を撃ちつける自分。 どうして俺は今までこの引き金をひかなかったんだろうか。 否、ひいたところでこの中に入っているのはゴム弾で。 死ぬはずもない、それはわかりきっていた。 だが、こんな現実のほうが、くだらねぇ。 だんだんと其の鏡の中の自分を見ているのがひどく億劫になってきて。 バ リ ン うった。 それは粉々にくだけて、おちた。 散らばる鏡の破片。 まぁこのままほうっておいても糞マネが片付けんだろ。 そんなことを考えながらも、俺は無意識に手の中の拳銃を放った。 がシャン、音をたてておちる其れ。 地をつくひざ。 気がつけば、鏡の破片を手の中で握りつぶしていた。 血、血、あふれ出るのはとめどなく体を流れる紅。 痛みはねぇ、そんなことすらどうでもいい。 ただ、ひどく生きていることが億劫だった。 この血が、温かいことが、怖いとさえ思う。 この体が、息をしてることが、恐ろしいとさえ思う。 否定しないで、生きていることを。 其れをいったのはいったいいつで誰だったか。 「――――――――!――――、――――・・・・・・・!!」 いつの間に扉が開いてたのか俺が気づかなかっただけなのか。 がし、と強い力で腕をつかまれた。 「痛ぇじゃねぇかよ、この」 其れはひどく場違いな言葉だとおくれて頭をよぎった。 だが、そんな言葉かまいなしにそのでかい巨体は俺の体をだきよせ、心配そうな顔をして。 「―――――――――!!」 すべてが、まるで鏡越しの世界のようだと思った。 聞こえない、声が聞こえない。 其の言葉すべてを拒否するように、何も、聞こえない。 何も聞きたくなかったのか? 俺はいつだってこいつの声が聞きたいと、こんなにも切望してたのに、か? やがて、其の腕は俺をおいて、歩き出そうとする。 きっとなにかがあって、だが俺は其れが少し恐ろしくおもえて。 慌てて、離れまいと其の腕をつかんだ。 力じゃまける、だがそれでも。 どこからもなにも沸いてこない。 生きていることが億劫で。 どこからもなにも見えてこない。 ただ、この体に血が通っていることが恐ろしくて。 「栗田、怖ぇよ。」 ただ、恐怖。 それ以外なにもない。 だから此処にいてほしいと思った。 お前がそばにいる間は少なくとも恐怖を忘れていられるから。 見上げると、そっちがなきそうな顔をしてつぶやいた。 其の言葉だけは、辛うじてこの耳に届いた。 もう、大丈夫だから、と。 おれは、あぁ、とかるくうなずいて、其のでけぇ胸に顔をうずめた。 ぽたぽた、と血が落ちる感触。 唯、今はそんなものよりもこの柔らかな温かさをむさぼるためにまぶたを、おとした。 最近自分の文章がだめだめなんじゃあないかーとか似たりよったりじゃねーのかーとなやんどります。
心象風景をキャラに当てはめてかいてるだけっていうか!! もうちょっとほんわかラブラブをめざしますよーう。 ↑ |
| 9:悲劇のヒロイン (ムサヒル。) どこまでも、其れは落ちていく感覚だった。 どこに、それはわからねぇ。 ただ、落ちて、おちて、堕ちて。 どこまでも、どこまでも。 この手は何もつかまなかった。 この足は、どこの土も踏まなかった。 ただ其処にあるのは、いつも悠々と駆けていた空。 「・・・・・・・んで。」 言葉なんて、うかびやしねぇ。 ただ、熱に浮かされたみてぇに。 この眼は何も、みない。 この耳は何も、聞かない。 ただ頭の中で言葉が反芻する。 なんで。 なんで、俺が。 ただ、それだけ。 瞳にうつる雲は、たゆたうだけ。 俺をもう、天空へと連れ戻したりは、しなくて。 この、背中に生えている羽が無意味にばたつく。 いっそのこと、もう切り取ってしまえばいいとさえ思った。 それができないのは、まだ俺には願いが残っているからで。 ――――手を、伸ばした。 はるか空高く、手を伸ばした。 まるで掬っても零れ落ちる砂のようだった。 いつもは掻き抱けた筈の空気が。 今は、こんなにも、手の中からすり落ちて。 あぁ。 もう、戻れねぇんだ。 漠然と、思う。 そして、落ちていく。 あんなにも、この手を血で染めてきたのに。 あんなにも、てめぇのために、この手を血で染めてきたのに。 『俺はな、ヒル魔。お前の、このきれいな金髪がすきだ。』 俺にそうささやいたのは嘘か。 そうして俺を抱きしめた其の腕は。 俺に甘言をささやいた其の口は。 其の眼は、其のすべては。 全部、嘘なのか? 「うそだ。」 そういって、俺は虚空を抱きしめた。 ぎゅ、と、硬く、硬く。 もう、其処には優しいぬくもりはなくて。 もう、其処には優しい言葉もなくて。 残ったのは喪失感。 其れと、もう二度とあの頃には帰れないんだという確信。 そんな確信、しなけりゃよかったのに。 羽が、抜け落ちていくのが見えた。 落ちているのにとべねぇ、そんな羽はもう、必要ない。 だから、特別其の羽が天空を舞っているのをみてもなんとも、おもわなかった。 ただ、あいつが好きだと。 一等きれいな羽だとほめてくれた其れ。 其れが抜け落ちていくのが、少し悲しかった。 『ヒル魔、俺は』 「やめろ」 『俺は、お前が』 「やめてくれ」 羽はもうない。 俺はもう戻れない。 其れなのにどうしてこんなに記憶が俺を、苛むんだ? 『俺は、お前を愛しているから』 「やめろ!其れならどうして俺をすてた・・・・!」 そう、ゆったじゃねぇか。 俺を、愛してるってゆったじゃねぇか。 そうやってこの頭をなでたのは誰だ? そうして俺を抱きしめたのは誰だ? そして俺を愛したのは、誰だ? お前だろう? 「ムサシ・・・・・!!!!」 『ヒル魔さん、知ってますか?もうムサシさんはヒル魔さんがいらないそうですよ。』 「・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・・!」 ずきり、と、胸が痛んだ。 あまりの痛みに、うめきそうになった。 其れは、思い出したくもない、顔。 あの、糞アークエンジェル。 ミカエルの名を冠した、悪魔。 セナ。 『ヒル魔さんは力をつけすぎたんですよ。ムサシさんは其れが怖いらしくて。 だから、あなたには堕ちてもらわなくっちゃ。』 はい、邪魔なんです、あなたが。 そういって、あいつはムサシが俺を捨てた事実だけを残して、俺を堕とした。 笑って。 嘲笑って、そして。 『僕だって好きであなたを堕とすわけじゃない。だって、僕はあなたが好きですから。』 其の、一言だけを残して。 あぁ、どうして俺はこんな無様な格好をして生きてんだ。 もう、すべてがこの体からすり抜けて、落ちていったっつーのに。 何もない。 ただ、ムサシのために必死に体を張っていたのに。 この体がぼろぼろになろうがおかまいなしに。 殺して、悪魔をすべて殺して。 この手を、染めてきたってのに。 どうして、だ。 どうして今ごろ、この心は絶望に染まるんだ。 「いらねぇ」 もうなにも、いらねぇ。 希望は無意味。 手立ては、ない。 ならばせめて、この体が真に絶望に染まるまで。 体を動かすのは赤い血じゃねぇ。 ただただ、復讐の其の日まで、生きるために。 「もう、なんもいらねぇ。」 背中が、酷く疼いたきがした。 視界が映すのは、黒。 一面の、黒。 やがて其れが、黒い羽だと気がついたとき。 背中から生え出る、黒い翼。 浮かぶ躯体。 ただ其れは、俺をこんなトコロに堕としたやつらを殺してやるためだけに生き長らえた。 「全部、ぶっ潰してやる。」 いとしさもせつなさもすべて其の感情で塗りつぶして。 だからせめてこの手でてめぇをてめぇらを、葬ってやる。 ふわりと、足が地面を捉えた。 見上げる天空ははるか遠く。 俺が堕とされた地獄は、近い。 「ムサシ、てめぇを愛してた。だから俺がこの手ですべてぶちこわしてやる。」 魔王ルシファー、生誕。 唯、其の心に神への愛と殺意を抱いて。 はいというわけであいかわらず暗いですね!
っていうかこれは神→ムサシ、大天使ミカエル→セナ、大魔王ルシファー→ヒル魔って話でした。 ミカエルとルシファーは双子で、ルシファーはもともと天使(一番位の高い)だったのに強大な力を持ちすぎて神の座を狙ったために魔王に堕とされたという。 其れがどうしても、いっつも見るたびにミカエルの策略によって魔王にされた風にしかみえないのでこんな話に。 ちなみに俺っちのセナ観はだいぶ黒いです。これも、なんかすきすぎていじわるしたいからもう悪魔になっちゃえよって感じで。 あぁぁ・・・・!石をぶつけないで・・・・・!(笑) ↑ |