みあげた空は、どこまでも遠く、遠く。










ネヴァースカイ







ふと見上げた空は、どこまでも青かった。
そういえば、昔誰かに聞かれたことがある。
どうして、空は青いかしってるか?と。
そのとき俺はなんて答えたか。
『んなもんしらねぇ。』
本当にしらなかったから、そう答えた。
そしたらそいつはなんていったか。
えらく、歯が浮くようなことをいっていたようなきがする。
だが、其れはどれだけ考えても思い出せなくて。

「おいヒル魔、こんなところでサボリか?」

ふと、見上げた空に一人の人間がはいってきた。
俺は慌ててガバっと起き上がって、そいつの顔をみた。
あぁ、なんでこんなところに。
瞬間おもったのは他愛のないこと。
けれど、其れは俺も同じかと思い直して。
「なんだ、用があんのか?」
寝転びながら、そいつに向けてそういった。

「いや、お前がいなかったからさがしにきただけだ。」
「そうかよ、ムサシ。」

サァ、と風がふいた。
その風で、髪がなびく。
どうにも防ぎようのない其れをむしして。
つ、と眼をあわせた。
すると、ムサシは俺の隣にすわりこんで。
「てっきりな、またなにかあったのかとおもった。」
おまえは何があっても何も言わんが、そういうときはいっつも授業を抜け出すだろう?
ふ、と笑みをこぼして、ムサシはそういった。


空を、仰ぎみた。
其れはいつもと変わらないぐらい、青く、青く。


「・・・・・・・・・・・・・別に、ただ他の人間と一緒にいるのがかったりぃだけだ。」
静かに、眼を閉じた。
眼を閉じた世界には、さっきと同じ、青が広がって。
いつも、想う。
この青空が、世界のすべてで会ってほしいと。
否、其れがありえないことは俺でもわかる。
そんなことは、ありえないのだと。
「・・・・・・うん?どういうことだ、そりゃ。」
「てめぇ日本語もわからねぇ阿呆かよ」
はぁ、と息をついて、起き上がる。
どこまでもひょうひょうとしたそいつの顔はあえて見ずに。


「人間が怖ぇっつーかな。めんどくせぇっつーか。」


ときどき、ひどく想う。
他人がこの世から全て、消えてしまえばいい、と。
もしくは、自分がこの世から消えてしまえばいい、と。
そういうときは如何しようもなく、叫びたくて。
如何しようもなく、何かを殴ってしまいたくて、たまらなくて。
想いの逝き場が見つからなくて。
ただ、こうやって孤独りで、空をみる。

そこには全てがあるようなきがするから。

こんな感情の全てなんて捨て去って、空を飛べたらどんなにいいだろうと。
子供じみたことを想ってる俺は本当に餓鬼だと思う。
けれど、このどうしようもない感情は。
俺をがんじがらめにして、そして沈めていく。
手を伸ばしてもそこにはなにもない。
あがいてもあがいても、浮き上がれない。
何をしてもどうあがいても、光なんてなくてただ、沈む。
希望を失って尚、沈む。
沈むだけの世界。
そう思えてならないときが、ある。

「他人なんざいなけりゃ、こんなに生きていくのに苦労はしねぇっておもうんだよ、時々。」

他人など要らないと拒絶して、鉄条網を張って。
どうか近寄らないでくれと警告する。
誰にも邪魔できない、誰も此処にこない。
其れはいともたやすい事。
ふれれば傷つく頑丈なあみ。
だから、誰も此処までは入ってこない。

沈んで、沈んで、それでも沈んで。
手を伸ばしても誰もこない。
自分がそうしむけてしまったから。

「でもな、それでもなんか、傍にいてほしいっておもうときが、ある」

なのに。
どうして自分の手を傷つけてまで、俺には。
こんなにも、他人と触れ合いたいと願う瞬間があるんだろうか。
ぎゅっと握ったその鉄条網は
俺の手にくいこんで血を、流す。
それでもかまわずに、俺は叫び続ける。
『だれか』
誰もこないそこで、叫びつづける。
『だれか、こい、お願いだから、俺を』
矛盾してるなんざわかってる。
他人を拒絶しておきながら、それでも他人が恋しいと叫ぶ。
他人と接していたいなら、拒絶なんてしなければいい。
けれど。

『俺を、ここから、出してくれ。』








こういうことを考える自分は卑怯だとわかってる。
だからこそ、此処から抜け出さなきゃならねぇことも、しっている。









「なのに、俺はなんもしねぇでそのまま放置して、よけいイライラすんだよ。」
わかったかこの糞ジジイ。
ペラペラと此処までしゃべってしまったことを、いまさらになって後悔した。
なんでここまでしゃべっちまったんだ。
だが、そんなこと考えてももう、遅くて。
ムサシは俺の顔をみてふっと微笑った後に。
「お前な、かんちがいしてねぇか?」
「あ?」
「傍に、いるだろ。もう。」
俺と、栗田が。
そういって。
ムサシは俺の頭に、手をおいた。
「それともなんだ?俺と栗田はお前の傍にいつもいるのにお前は傍にいないとかいうのか?」
「てめぇ自分がふけた顔だからって俺を子供扱いすんじゃねぇ」
「だれもそんなあつかいしたとはいってねぇだろ」
はっはっは、そうやって豪快に笑って。
ムサシは、頭上の高い空をみた。
「なぁ、周りなんてどうでもいいじゃねぇか。
お前が周りを拒絶してても、周りがお前を拒絶するだけだ。
――――――それに、本当はそんなお前の力になりたいやつがいるのに。
それすらお前が拒絶しちまったら、こっちはどうするんだって話だ。」

ぐい、と予想外の力で、頭が引き寄せられて。
其れはなんの抵抗もなく、ムサシの肩の上に置かれた。

あぁ。
そして同じ空をみた。

鉄条網は、確かにここにある。
誰も寄せ付けない、なれも入れない、その網は確かに此処にある。
だが。
そう、こいつらはとっくの昔に、その中にはいってきて。
伸ばした手は、必要なく。
もう、伸ばさなくてもいいと。
知っていた。
知っていた。
ただ、それに気がつかなかっただけで。

誰よりも近いところに、こいつらが、いただけの話。

あんなにも、網の向こう側の空にあこがれた。
その空は、俺の直ぐ傍にあっただけで。

「な、親友なんだから、頼れよ。」
「うっせぇ、ま、気が向いたら頼ってやらねぇこともねぇけどな。」
「うわ、励ましてやったのにそれはないだろ、其れは。」


そうやって、笑った。
全ては、其処にあったのだと、気がついた。
ただ、俺には、こんなにも頼れる、仲間がいる。
それだけで、俺は充分生きていける、と。


「お〜〜〜〜〜〜い、ヒル魔〜〜、ムサシ〜〜〜〜!」
「ほら、いつまでもお前が戻ってこないから栗田が心配してきちまったじゃねぇか」


がばっっとムサシは物凄い勢いで立ち上がった。
その拍子に俺の頭は前方へ大きく倒れて。
首が痛くて、この状態からケリをすねにぶちこんでやろうと思った瞬間。

「ヒル魔、せっかくだからこのまま3人でどっかいくか」

そうやって、手を差し伸べるムサシがいた。

助けて欲しい、と望んだ。
助けて欲しい、と望まなくてもいいことを、知った。
そんな望みなんてなくても。
此処に、手を差し伸べてくれるやつがいるから。

「は、じゃぁ飯くいにいくぞ。」

とりあえず今回は。
この自由な空が俺の中にもあると、知ったから。
それに免じて、一発けりをいれてやるのはやめることにした。

「ムサシ、ありがとうな」
「お前がお礼をいうなんて明日は大嵐になるかもなぁ」






差し伸べられた手を、とる。
そして、俺は自由であることを知った。










20050529/はらっぱー
否、他人を拒絶してるくせに他人に甘えたいておもってんのは自分なので!
本当、弱気になってちゃいけないよって話です。
いつだって手を差し伸べたいのに気づいてもらえなくてかなしんでる人は傍にいるとおもう。
そんな感じで書いた本当にキャラ壊れた散文でした。
ちなみにどこで2人語ってんだよってつっこみは、不可!(笑)