其れは赦されはしない行為
けれど、そのでかいからだが俺を覆い隠すから。


















BrightNight  
















ふと、空を見上げた。
真っ暗で、赤い其れがしずんでしまった、空。
いつもみているはずなのに、其れは今日はより星が多い。
別に、なんでもないことだ。
そう思うのに、この眼はその夜空に奪われて。

いったい、いつからこの光景を見慣れるようになってしまったんだろう。
黄昏の日差しの中、安穏とかえっていた自分たちはもう、いない。

「ヒル魔〜、はやくしないと電車のりおくれちゃうよ?」

前では糞デブが早く来い、とせかしやがる。
その、太い腕は夜でも、はっきりと見えて。
たちどまって、空を見上げていた俺は、ゆっくりと、歩をすすめた。



いつからだっただろう。
いつから、こんなにも、まっくらな道をあるいてゆくようになったのだろう。



つい、この前までは。
たったふたりきりで、それでも、這いつくばって。
這いつくばって、進んできたのに。


「ほーらー、ヒル魔、おそいってばー!!!」


ジャンプするな、足元がゆれるだろーが。
一瞬、そういって一発ぶちかまそうかともおもったが、つまらなくなってやめた。


「・・・・・・・は。」


不自然に、こぼれた、笑い。




そうだ、本当に全ては”いつのまにか”


いつのまに、俺の周りにはこんなにも
こんなにも、笑う顔が増えたのだろう。



たったふたりであるいた、夕方の。
たった二人でつくった、濃い陰の。
たったふたりでまった、あの、暗い部屋の。



すべてがもう、いまとなっては懐かしいだなんて。



「は、阿呆か、俺は。」



とうとう、ここまできてしまったのだ。
俺と栗田が願っていたことが、ここまで。
叶ってしまったのだ。



どうして、止まれる?
もう、はしりだしてしまった。
止まらないし、とめられない。

俺は、走らなければいけない。

だが。







「もーう、なにやってんだよ、電車いっちゃったよ・・・」






顔をあげる。
眼の前には、線路をみて、俺たちが乗るはずだった電車を恨めしそうにみるヤツがいた。

「オラ、栗田、ちょっとこっちこい」

一瞬けりをいれてやろうかともおもった。
簡単にこいつは倒れるにきまってる。
実際、前にずっとそれで遊んだ事もあった。
其れは簡単だったが、でも。

つい、と、その眼の前の巨体のシャツをひっぱると、容易に俺の眼の前まで引っ張られて。

「わわわ、なに?ヒル魔〜・・・・・」

みあげた、弱った顔。
そんなことはしらねぇ。

ただ。







きっとこいつはそのためだけにでかいのだ、と錯覚してしまう。







フン、と鼻をならしてみせるが、それはなんの強がりにもならねぇ。
ただ、その肩を借りて俺は必死に其れを隠して。

叫びたい衝動、頬を伝う涙。
それらの想いを殺して往くこと。




「く、そ。」




誰にもそんな弱味はみせられねぇ。
弱味を見せたら、示しがつかねぇ。
しかし、せめて全てをしってるこいつのまえでだけは。


「ヒル魔、がんばろうね」


けしてこっちをむかずに。
けれど、俺にはわかってる、其れがどんなかおでいってるか、なんて。
きっとこいつは、ちょっと嬉しそうな顔でわらってやがるんだ。
ムカツクし、ほんとはそんな顔さしたくなんてねぇ。
は、ちょっとまえまでは跳び箱のなかでビクついてたこいつと、同類になりさがるなんて。
情けないったらありゃしねぇ。


けれども。





「・・・・・・・・・・・・・・誰かにしゃべったらぶっ殺すからな。」





腕の震えはまぎれもない事実。
恐れをこの胸に抱えている真実。
誰も、恐れていないやつなんていねぇ。
だからこそ、これは当たり前で。
ただ、それを俺は見せたくなかった。
それだけ。
口にした言葉は本物だ。
しかし、その約束がやぶれることがないことも俺は知っていて。


「うん。わかってるよ。」


へへ、とちからなくわらいやがるから。


「――――――・・・・・・」
「むぎょっっ!!!!」


そのケツにおもっきしキックをかましてやった。
なんとなく、その笑いがムカツいたから。









泣きたいぐらい。










そんなこと、俺様がするはずもねーけど。



「ほら糞デブ、電車のがしちまったんだ、はしっていくぞ。」
昔はよくやっただろ。

そう付け加えて、電灯の少ない路地へと足を向ける。
弱々しい顔などすてて、そして、前を。
前後の立ち位置が逆になって、俺はやつをふりかえった。
馬鹿か、あいつは。
けられても、それでも笑っていやがった。


「そうだね、じゃぁはしっていこう!」


心底うれしそうに。
よたよたと、その足を踏みしめて。


本当にばかだとおもう。
否、其れは俺かあいつか、それともどちらもなのか。

「もう、こうやってはしるのも、2人じゃないし、2人じゃないから、夕日なんてみなくてすむね。」

俺のスピードについてこようと必死になっているやつが、ぼそりともらした言葉。
それに俺は、あぁ、と小さく、もらした。





2人でみた夕暮れ。
練習終了の合図となっていた、赤。
それがいつのまにか、合図でも何でもなくなっていて。
いつも、夕日をみていたのに。
今は、真っ暗な夜道を、あるいている。


もう、2人きりなんかじゃねぇ。






俺たち、は。












「知ってる?ヒル魔が弱ってるとききまって栗田って名前でよぶんだよ。」
「てめーしにてぇか?」

ジャキン!と懐にあった拳銃をだすと、ひぇぇぇ〜と前をはしっていきやがった。
そんな格好がとてもおかしくて、思わず笑みがこぼれた。

泣きたくなるぐらいの夕暮れは、もう2人でみなくてもすむ。








「俺様の弱味を握ろうなんざ100億年早ぇ」








泣きそうになりながら、俺の涙をしっているその糞デブの後を追いかけた。
















20050506/はらっぱー
そうです栗ヒルですよ何か文句でも(笑)
うん、ヒル魔はきっとこのひとにしか受けに回らないとみた。
ずいぶんと局地的だけど、でもこの2人かきやすい・・・・!
あー、やばやば。