だって其れが日常ってもんだろ、こんな何もない日も、一波乱ある日も。










日常。











「栗田さん、大丈夫なんですか?その・・・・・」

ふと振り返ると、セナ君とモン太君が僕の後ろにたっていた。
僕は着替えを置いたまま、体ごと二人の方へと、むける。
時計はみなかった。
もう、チャイムがなっていることをしってたから。
二人は着替えながら、後ろをそろり、とみやった。

「すっげー、機嫌悪そうじゃねぇっスかー??」
「ほんと、いつもにもまして、すごいですよ」

すぐにふりかえってねーねーと僕に詰め寄ってくる。
僕はちょっと困った顔をしながら、二人をみやった。

「うん、でも、明日はきっと大丈夫なんじゃぁないかなぁ。」

根拠のない自信。
その自信すら、今はちょっとあやういものだったけど。

「ほら、それよりもはやく着替えないと学校しまっちゃうよ〜?」
「うわっ!やべ、もうこんな時間かよっ!」
「本当だ、早くしないと!急ごう!」

さりげなく下校時間が過ぎてることをしめすと、二人はあわてて着替え出した。
もう、小結君や十文字君たちはとっくの昔に着替え終わっていて。
さぁ、僕も急がないと。
そう思って、かごにきていたユニフォームを投げ入れた。

あえて、後ろはみなかった。
其処には、いつも以上に機嫌が悪いヒル魔がいたんだ。

そう、どうやら其れは僕が原因みたいなんだ。
考えてみれば朝の練習のときからおかしかった。
なんていうか、無言で僕のお尻をけることはあったけど。
無言で僕の足元に銃を乱射するなんてこといままでなかった。
どうしたのか、ヒル魔は僕と眼をあわそうともしない。
僕と、話をしようともしない。
やっと口を開いたと思っても其れは必要最低限のことかほかの誰かとの会話だったり。

(やっぱり、なにかしたのかなぁ・・・・・)

みためにも、きっと僕しょげしょげだ。
でも、それでも、思い返してもなんであんなにヒル魔が怒ってるのか検討もつかなくて。
やっぱ、僕って馬鹿なのかも。
はぁぁ、と不快ため息をつかずにはいられなかった。

ちら、とヒル魔の方をみる。
ヒル魔は、着替え終わったのにこっちを見もしないで外にでていった。
僕、だけ。
僕だけ、無視されてるんだ。
そうおもうと、ちょっとだけ胸がいたかった。


どうしてだろう。
なんでこんなことになったのかな。
・・・・・・・・・嫌われたのかな、僕。


そういう考えをしてしまうってことは、いけないんだ、きっと。
でも、それでも怖くてたまらない。
もしもヒル魔にきらわれちゃったら、僕にはいる場所がないから。
怖くてたまらない。

ヒル魔に、嫌われることが。

そうおもっちゃいけないって思うほど、僕はおもっちゃう。
何かの間違いかもしれないっておもうほど、其れは間違いじゃないって勝手におもっちゃう。
自分の都合のいいように。
もし本当にそうであっても、やっぱり僕の考えたとおりだったって言い訳できるから。
怖がらなくてもいいのに。
それでも、やっぱり怖いって思う自分がいて。
どうしてなんだろう。
怖いって思えば思うほど、墓穴を掘ってしまうのに。
どうしてなんだろう。
其の考えを振り払おうとするたび、現実になって襲い掛かってくるんじゃないかとおもっちゃうのは。



どうか嫌わないでほしい。
こんな弱虫の僕でも。
どうか嫌わないでほしい。



(・・・・・・・ううん、そんなこと、ない。)
そうやって自分を奮い立たせる。
気がついたら、部室に残ってるのは僕一人だった。
あ、はやくでないと。
そう思って、僕はかぎを手にとって戸締りをした。
シャランと鳴るカギの束。
月光が予想以上に眼にまぶしかった。
それを、直しにいく必要はなかった。
どうせ、僕が一番はやいんだ。
だから、いっつも僕がかぎをもってかえってる。

「・・・・・・・はぁ。」

そうしてまた、深いため息をつく。
どうしても、明日のことを考えずにはいられなかった。
明日、また、僕はヒル魔に無視されちゃうのかな。
どうしたら、無視されないですむのかな。
どうしたら、また、笑ってもらえるんだろう。
どうしたら、僕は、僕は。

胸が痛かった。

考えれば、考えるほど、どうしたらいいかわからなくなって。
明日のことを考えるのが、ほとほと憂鬱だった。
どうしたら、ヒル魔と。
頭を巡るのは其の言葉ばっかり。

「ヒル魔、明日も、怒ってるかなぁ。」




「てめぇ、本当に何もわかっちゃいねぇんだな。」
「えっ・・・・・・・!?」

ふと顔をあげると、其処には一瞬先まで考えていた、ヒル魔の姿があった。
どうして。
瞬間駆け巡ったのは其の言葉。
僕の家と正反対の場所にヒル魔の家はあるのに。
すると、その考えが手にとるようにわかったのか、ヒル魔は。

「てめぇをわざわざ待ってやってたんだよこの糞デブ。」

よっこらしょ、と軽々といままで座っていた塀から飛び降りた。
其の動作はまるで猫そのもの。
ふ、と一瞬見とれていたけど、すぐに僕は首を振って。

「ヒル魔、ごめん・・・・・!!!」
「は?」
「だって、怒ってたでしょ、だから、ごめん・・・・!」

あわてて、頭を下げた。
どっちかっていうと、顔、見れなかったんだとおもう。
怖かった、其れが怒ってる顔してるんじゃないかと。
おもって、しまったから。

しばらく、声はなかった。
其の代わりに、ものすごい勢いで入るローキック。
「ふぎゃ!」
へんなこえがでて、僕は地面にしりもちをついた。
いてててて。
お尻をおさえてると、今度は頭をぐいっとおさえられた。

「こっち見ろこの糞デブ。」
「え」
「人と話すときは眼をみやがれ。」

そうして見たヒル魔は、僕の想像してた顔とはちょっとちがった顔をしてて。
なんていうか、淋しいような。
悲しいような。
憤ったような。
そんな、顔。
でも、怒ってる顔じゃなくて。
どうしてそんな顔をするんだろう、とぼんやりおもった。

「てめぇな、本当に自分が悪いことしたっておもってんのか?」

すると、ヒル魔は変なことをきいてきた。
怒ってるから、僕が悪いことをしたと思ったのに。

「だって、ヒル魔おこってたよ。」
「だからっててめぇは全部自分が悪ぃっておもってんのか?」
「だって」

其れをさえぎって、ヒル魔はちょっと怒ったような口調で、いった。

「あのな。そうやって逃げんのはやめろ。てめぇの悪い癖だ。」

全部自分が悪いとか。
そうやって、何が起こっても自分が悪いで済ませてしまうのは、逃げだ、とヒル魔はいう。
僕は、怒られてるのか、あきれられてるのかわからなくなって、ただただしゅんっと身をちぢこませてた。

「おまけにすっげー鈍感だしよ。わからねぇのか?
俺が怒ってんのは俺の自分勝手で、てめぇがわるいわけじゃねぇ。」
「・・・・・・・・・どういうこと?」
「だーっ、ここまで言わせてまだわかんねぇか?要するにてめぇが何か俺にしたんじゃなくて、俺が勝手に拗ねてただけなんだよこの糞デブ!!!!!」
それなのに自分が悪いみたいにこんなしょげられたら、俺が安心して拗ねられねぇだろうが。

どういう理屈なのかはわからないけど、どうやらヒル魔は拗ねてるっぽくて。
”てめぇが、俺が拗ねてるって気づくまでぜってなにもいってやんねぇとかかってに決めてた”
とか、いうし。
わからなかった。
でも、これだけはわかった。
きっと、ヒル魔は何も怒ってなんかいなくて。
それは、僕の勘違いだったってこと。

「ね、ヒル魔。」
「あぁっ!?」

そういったヒル魔は、まるで噛み付きそうな猫そのもの。
いっつもだったら、銃を乱射されてそうな勢いだったけど、僕の顔をみておどろいたのか。
こっちがびっくりするぐらい、あっけない顔をしてて。

「やっぱ僕ヒル魔が大好きだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・なっ」

んな、いぬみてぇにうれしそうな顔でいうんじゃねぇよ・・・。
ぼそりとヒル魔がつぶやいた。
自分でもわかるくらい、顔がにやけてたから。
だって、うれしい。
たったこれだけのことが、こんなにも、うれしい。
ヒル魔が、笑いかけてくれるから。
僕のことを見てくれるから。
こうやって、触ってくれるから。
ヒル魔が、僕を認識してくれているだけで。

だって、ほら。
こんなにも僕は、生きてるってわかるから。

ヒル魔は、しゃぁねぇ、って感じで僕の肩に手をおいた。
前に、この状態から背負い投げをされたことがあったっけ。
でも、今はまったくそんな様子は、なくて。
ただただ、僕の顔をみて、こういう。
「あー、なんだ。その、すまねぇ。」
ヒル魔らしくなんてぜんぜんない。
こんな風に謝るのだって、とてもとても珍しい。
でも、本当に自分が悪いっておもったら、ちゃんと謝ってくれるって僕はしってる。
だからこそ、僕はそのまま抱きしめた。

「うん。」

唯、頷いて。

「俺の行動ひとつで、てめぇがそんなおちこむとかおもってなかった、から。」
「うん」
「っつーかんなことでてめぇそんなしょげるんじゃねぇよ」

やっぱ、最後の最後で悪態をつくところが、ヒル魔らしいとさえおもった。

「・・・・うん。」

本当はなくかとおもったんだ。
この腕の中に、こんなにも体温があることのいとしいこと。
其れがきみであってくれたから、今の僕が此処にいる。
其れを、こんなにもしってしまったから。
だから、もう、手放したりなんかしないよ。

きっと、これからだって僕は勝手な勘違いをしてくんだ。
かってに、自分は嫌われてるとか、のけ者にされてるとか、そんなことを。
本当はありもしないことを、かってに想像して、かってに、夢想して。
そうして勝手に落ち込んで、つぶれていくんだろうな。
でも、僕はちゃんとしってるんだ。
ヒル魔。
ヒル魔が、そんな勘違いを否定してくれるって、こと。
そんなことねぇよって。
いってくれるから、僕はまたこうして明日さえ歩いていけるんだって。




「だいすき。」
「あー、はいはい。」




俺もナ。
つぶやき、どちらからともなく抱きしめた。

「ってーかいきなり話ぶっ飛ばすんじゃねぇしかもやっぱ俺のことすきってさっきいっただろなんなんだよやっぱってあぁ??」
「ちがうよ!だって僕がすきなのはヒル魔だけだもん」






きっと其れが日常。
こんな、不安で仕方がない日も、こんなうれしくてなきそうな日も。
きっと、其れが日常。
ずっとずっとつづいてく、変わらない、道。








余談になるけど。
ヒル魔が拗ねてたのはやっぱ僕の所為らしくて。
『てめぇが夜中まで糞デブJrにつきあって最近俺の家にこねぇからだろうがっっ!!!!』
っていわれてめちゃくちゃおこられちゃった。
うん、反省。
だから赦してね、ヒル魔。






20050611/はらっぱー
なんなんだろうなぁこの話は。
っていうかなんか暗くない話をかきたかったのに意味不明な話だ!
へタレな栗田と尻に敷くヒル魔な話。
っていうか最後赦してねとかいうわりにまたやっちゃってそれでヒル魔にまたおこられるんだ。
そういう関係なのがいいなぁ。
あ、あと、相手がなんかおこってるなぁってときは無理にうごかないほうがいいってことをいいたかったんですよ。
どうにかしたくてうごくんじゃなくて、相手もあいてなりの感情があってうごいてるっていうか。
自分の都合でおこっててほしくないってのは逃げって話をかきたかったんでしょうなぁ。