そんなこと、わかっているから。
あんたがそういう人間なんだってこと、俺は知っているから。
つないだ指先
ポツリ、と雨が降ってきたことにきがついたのは、いったいだれが一番最初だったか。
夕立かと思われた其れは、今ではザザぶりの雨になろうとしていて。
何も身構えず、ただ空を見上げた。
(・・・・・・・こりゃ、本降りになるか。)
眼を細めないと、ともすれば眼球に入りそうなしぶき。
それにぬれるのは、嫌いじゃない。
だが、こうしていても体を壊すだけで。
どう考えたって明々白々な其れを考えて、グラウンドを横切った。
夜、9時。
テスト期間中で、だからクラブは一週間お休みにしましょうとかぬかしやがったのはどこの糞マネだったか。
照らされるライトは、雨の所為で自分の足元しかうつさずに。
それでも、まだ口内に誰かいるから、といまだ光をともし続ける其れを横目に、部室のドアの前まで歩いた。
何故だか、部室に入るのは躊躇われた。
理由は、わからねぇ。
ただなんとなく、肩にかけてあったタオルで自分の頭をガシガシとふく。
あぁ、もしかしたらちゃんとふかねぇと風邪、ひくかもしんねぇ。
着替えないと、其れこそ熱だすかもしんねぇ。
でもそんなことはお構いなしに、俺はその場に駄々ずわりになった。
(基本メニューは後ちょいで終了、ってとこか。)
雨、その音を聞きながら、ぬれた髪を壁にこする。
じっとしてるのは性に合わねぇから、なにかどこかうごかして。
あぁ。
こうやって、1人で練習すんのも、本当に久しぶりなのだ、と。
何故、部室にはいりたくないかの理由に思い当たって、1人ごちた。
昔は、よく1人で練習した。
あの糞デブは放課後は直ぐに帰って阿呆みてぇに夜中から練習する。
俺は、放課後遅くまで残ってから家に帰る。
どっちも、校内にはいる許可はあの糞校長にとらせた。
だからか。
部室に、誰もいないことを俺はしっているから。
そこに誰もいないことが、わかっているから。
俺は1人だと、実感してしまうから。
否、そうでなくても今でも俺は1人だが。
それでも、あの昔を思い出してしまうから。
馴れ、っつーのは恐ろしいもんで。
今、こんなにも部員がいることに慣れすぎて。
2人きりだったあのころを思い出すと、少し胸がきしむ。
・・・・・・・その程度だが、そのきしみを実感する俺が。
どうしても、弱いのだと実感しちまう。
だからだ。
俺が此処に、今、入りたくないのは。
「―――――ち、弱いのが何ぼのもんだってんだっっ!!」
悪態をついてから、のろりそろりと立ち上がった。
疲れてたから、立ち上がるのもしんどい。
っつーのは言い訳で、そんなことを考える自分をふりきりたかっただけだが。
おちたタオルを拾って、ドアの前にいきり立つ。
―――――――――――――――と。
カタン、と音が鳴った。
不意打ちだ。
完璧にそう、おもった。
開いたドア、その先の部室には誰もいないと思っていた。
否、そうだった、はずだった。
ふいに、間抜けた顔になっている自分を認識した。
どうして、今、此処に、こいつがいるのだろう。
糞デブとか、糞デブJr.とか、あいつらならいざしらず。
どうして。
どうして、こいつが。
「・・・・・・ヒル魔、先輩。」
カタン、と。
さっきと似た音がした。
進路を塞ぐ机をけって、俺のほうへ手を伸ばした。
「なんでてめぇここにいる、十文字。」
「俺がここにいちゃいけないんスか。」
いちおう、自分が後輩であるという自覚があるのか。
すこし頭を下げて、そして近づく、その、足。
不意打ちを食らった。
そりゃ、そうだ。
こんな、普通だと先公もかえるような時間に。
しかも練習にやっと最近参加するようになったこいつが、ここにいる。
さっきまで、そこには誰もいないと疑って信じなかったから。
わけはない、驚くのも。
だがどうしてこの振動はこんなにも、鼓動をはやくうつのか。
「あー、たしかにいちゃいけねぇとかそういうきまりはねぇな。・・・・だが、驚いた。
こんな時間に、しかも練習にあまりきょうみねぇてめぇがいるのにな。」
鼓動はまだ早くうったまま。
しかし、それでも平静な心をたもったまま、俺は。
肩にかけていたタオルを投げて、そして中央のいすにどか、と腰をおろした。
自然、見上げる形になる。
背の高さも大して変わらないヤツと。
「いまからなにかするなら、もう時間ねぇぞ。俺がかえるからな。」
暗に俺が帰れば学校はしまるぞ、と言い含めて、十文字の眼をしたから見上げた。
十文字は何も、応えなかった。
ただ、ただ俺を見下ろして。
「――――――――――。」
何かをいいたげに、けれども何もいいたくなさそうに。
「・・・・?何もようがねぇなら、俺、かえるぞ。」
「――――――。」
すわりながら、ヘルメットを脱ぎ、そして上半身を着替える。
手際よく、ただ汗にぬれた背中は拭かなかったが。
ズボンに手をかけて、さっさとはく。
その間、何も言葉はなかった。
そこにあったのは、雨が地面を打つ音とどこか遠くでなる雷鳴と。
ジャキン。
「おぃ、てめぇ、何かいいたいことがあるならはっきりいえ。」
ったく、誰かの助け舟がねぇと何もいえないのか、こいつは。
ふ、と軽く息をはいて、俺の持ってる獲物の中でも割と小型の拳銃を、その額に突きつけた。
「俺は」
「ん?」
驚くでもたじろくでもなく。
ただただ、十文字は。
額に突きつけられた拳銃がまるで見えていないかのように。
その言葉を、ぼんやりと呟いた。
「俺は、あんたを俺のものにしたい。」
――――――――――NEXT?
20050519/はらっぱー
いや、なんかつづいちゃいました。
初!十ヒル!このCP結構好きかもですよー。