[紹介本] 

  NO.2(2004年9月)

 

 

  タイトル   科学小説 宇宙戦争

 

   原作      エッチ・ジー・ウエルス(H.G. WELLS)

   翻訳      光用穆

   出版社     秋田書院

   発行      1915年(大正4年)1月

 

解説

 私は、まだ小さい頃、SF小説というのをまだ読む前は、SF小説というのは、宇宙人や怪獣が地球を攻めてくる内容のものであると当然のごとくおもっていた。それがまた小説だから面白おかしい内容だろうと。しかし、その後、本屋に行ってSF関係の本を読むと、SF小説というのは、そいうものではなくて、もっと「高尚」なものであるらしい。ということがわかり、どこかに私が求める「SF小説」なるものはないのだろうかとおもい願ったこともあったが、そんな時に、海野十三の作品と出会い、なんだ日本にも面白いSF小説があるんじゃないかと読みふけっていた時期もありました。

 左記の本は、更にそれの元祖とも言うべき、H.G. ウェルズの「宇宙戦争」である。この本は、大正4年発行で、おそらく日本で一番最初に「宇宙戦争」を翻訳した単行本である。この次は、改造社から昭和4年に、ベルヌの「海底旅行」と併録され出版された「世界大衆文学全集」の第24巻である。

 明治から大正にかけて、ベルヌやウェルズ、意外とハガードもたくさん翻訳されています。この3人の中では、ベルヌがやはり一番人気だったのでしょうが、ウェルズもかなりの種類が出版されていますから、ウェルズも人気が高かったんでしょう。

 この「宇宙戦争」、オリジナルは、19世紀の末、1897年に、「ペアソンズ マガジン」の4月から12月に連載。この「ペアソンズ マガジン」は、イギリスで発行されていた冒険小説を多く掲載していた雑誌で、同じ号には、コナン・ドイルの作品も掲載されています。海外のSFマニアの間では、レアな雑誌として有名なようですが、何れ機会がれば、この「ペアソンズ マガジン」についても紹介してみましょう。

 アメリカでは、フランク.R.ポールの表紙で有名な1927年2月号の「アメージング・ストーリーズ」で掲載されたのが最初ではなく、同じく1897年、今でも発行されているあの「コスモポリタン」に連載されたのでした。当時の「コスモポリタン」でも、もちろん小説雑誌ではなく、表紙は赤と黒の印刷で、今からみると地味ですが、やはりグラフ誌です。単行本は、翌年の1898年に布張りハードカバーで、ちょっと表紙は地味ですが、発行されます(1stは、Heinemann Booksから、同じ年には、Harper & Brothersからも出版されています。)。

 この当時は、まだパルプマガジンは、発行されていません。やはり、ウェルズクラスだと、ちゃんとしたスリックマガジンに掲載されています。余談ですが、この当時は、まだまだ大衆読物は、ヨーロッパが主流の時代。アメリカは、既に、パルプの前身、ダイムノベルが大量に出版されている時期で、日本では、「フランクリード」シリーズが有名でしょうか? 私個人としては、ダイムノベルというと、やはり「ニックカーター」シリーズとおもうのですが。たぶん日本では、翻訳されていませんが、1910年頃に映画としては入ってきています。それと、ニックカーターというと、やはり映画の「ジゴマ」でしょうか。「ジゴマ」は、フランスの三文小説家レオン・サジイ(1909年〜 全28巻)の作品ですが、映画の「ジゴマ」の第2作目に、監督とサジイのトラブルから、主役の探偵ポーランを降ろし、なんとニックカーターが登場するという、たまらんことになっています。日本では、江戸川乱歩などにも影響したという「ジゴマ」ですが、フランス本国では、人気はなくて、同時期の作品の「ファントマ」(1911年〜 全43エピソード)がヨーロッパ、アメリカでは人気高いんですよね。何れ、この辺も紹介できたらとおもっていますが。

 話が少し脱線しましたが、この「宇宙戦争」ですが、確か1894年に火星が地球に接近した際に、イタリアの天文学者の報告から、火星表面に「運河」がみえると誤訳したことと、火星表明に光がみえたという報告とで、にわかに火星に生命がいるのではという推定から、お馴染みの火星人が想像されます。この蛸形の火星人も含めて、前世紀に日本でも想像を逞しく、戦前の野村故堂「火星探検」や海野十三「火星兵団」、大城のぼる「火星探検」。戦後だと、手塚治虫「火星博士」や小松崎茂「火星王国」等々と、さまざまに私たちを楽しませてくれたわけです。

 左の本は、こういう火星人襲来という、もう今では難しい題材ですが、20世紀に日本で大いに楽しませてくれた、種本ということになります。

 

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