漫歩計の山行記録: 雪の筑波山 2003年2月25日 |
コース:
筑波山神社 --- ケーブル駅 --- 中の茶屋 --- 男女川源流 --- 御幸ヶ原 --- 男体山 --- 御幸ヶ原 --- 女体山 --- 弁慶七戻り --- 弁慶茶屋 --- 筑波山神社
関東の住人でなくとも、筑波山の名を知らない人はいないでしょう。広い関東平野の北東部・茨城県にある周囲からほぼ独立した峰です。ケーブルやロープウェイもあり、観光地となっていますが、なぜか日本百名山に数えられています。低山ですが、平野部にある山だけにケーブルを使わずに麓から登れば、標高差も結構あって足自慢の方でも楽しめる山です。
東京駅八重洲口から直行バスに乗ります。これに乗れば約1時間40分で筑波駅に着くのですが、残念ながら途中の研究学園都市近辺で交通渋滞に巻き込まれ、2時間以上かかってしまいました。なお、筑波駅は、駅という名ですが鉄道は既に無く(廃止されたようです)、バスセンターがあるのみです。
夕べは東京は冷たい雨でしたがこの地方は雪だったようで、研究学園都市もすでに真っ白。雪がすべてを覆い尽くし、美しい田園風景です。天気は晴れていますが濃い霧がたちこめて山は見えません。筑波駅からバスを乗り換えて筑波山神社に着いたときも、相変わらずガスの中で展望はなく、5cmほどの積雪の中を歩き始めます。
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雪に彩られた静かな神社は荘厳さに美しさを加えて、時々さす日にきらきらと輝いています。健康と平安を願ってお参りし、神社を通り抜けて左にケーブル駅への道を見送り、新雪が積もった登山道に入ります。一緒のバスに乗っていた方のうち3名がケーブルの駅に向かわれまししたが、あとで聞いたところによると、ケーブルは雪のために始発から運行休止中で、再開までに2時間も待たされたのだそうです。
登山道は10−15cmくらいの雪に埋もれ、先行された方のトレース跡をたどります。木の枝の雪が時々落ちてきて冷たい! 傘やザックカバーを出そうかと思いましたが面倒なので、なるべく木の下を避けながら歩きます。でも新雪を踏みしめて歩くのは実に気持ちのいいもので、筑波山でこのような雪山を楽しめるのは本当に幸運です。朝はかなり冷えて風もあったようで、霧氷が素晴らしい自然美を見せてくれています。
登山道はケーブルの右側に沿う形でつづら折れに登っていきますが、相当な急坂で息が切れます。午前10時を過ぎてさほど低い気温ではなくなり、汗が出てきます。休み休み登るとやがてケーブル線路の真横(中の茶屋と呼ばれる地点だと思いますが茶屋はありません)に出ます。ちょうどケーブルの中間点らしく線路が2本ありますが、その上部で何やら人の声。見れば数人の男性がスコップとほうきを持って除雪作業中。ご苦労様です。早くケーブルを動かしてあげないとお客さんが怒るし、頂上の売店もあがったりでしょう。でも、スコップとほうき以外にもうちょっと近代的な武器は無いのでしょうか? 「俺たち真面目にやってるんだけどなあ。もう少し手伝いの人間をよこしてくれないかなあ」というボヤキの声が聞こえて、思わず笑ってしまいました。
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次第に雪が深くなり、やがてケーブルのトンネルの上の尾根を乗り越え、一度下って湧き水のある沢の源頭を通ります。ここは有名な百人一首の歌「筑波峰(つくばね)の峰より落つる男女川(みなのがわ)恋ぞ積もりて淵となりぬる」に詠まれた男女川の源流部。この川は男体山と女体山の間を流れ落ち、やがて桜川という清流になるのだそうです。
樹林の中をさらに登り、最後に急な階段状の道をあえぎ登ってようやく御幸ヶ原に到着。ケーブルの終点駅のある平地で、土産物店やレストランが並んでいますが、真っ白な雪は踏み跡もわずかで、ひっそり静まりかえっています。ケーブル運休のおかげで、従業員も上がって来ることが出来ず、珍しく静かな筑波山を楽しめることになったわけです。ラッキーでした。いつの間にか空は晴れ上がり、素晴らしい展望が開けています。目の前には加波山、背後には遠く広がる関東平野と所々に広がる雲海、周囲の広さを感じさせる雄大な眺めです。
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左へ階段を登り、売店前を通り過ぎて男体山(860m)を目指します。このあたりは美しいブナ林で、枝に着いた霧氷が美しい芸術作品のようです。まるで雪の花が咲いたようです。筑波で霧氷を見れるとは、本当にツイていると言うべきでしょう。
頂上には立派な社があり、展望も言うことなし。風もおさまり絶好の登山日和となりました。雪景色の晴天のもと、展望を楽しみながらの昼食は、まさに格別の味わいです。
食事をすませて再び御幸ヶ原に下り、こちらも美しいブナ林の中を女体山(876m)への登りにかかります。ケーブルが動き出したようで少しずつ人が増えてきました。観光スタイルの人も見かけますが、普通の靴で積雪30cmはある雪の中を歩くのは気の毒。変な優越感を感じながら、アイゼンを付けた登山靴で緩い坂を快適に登ります。
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女体山は標高も男体山より高く、狭い頂上ですが眺望はさらに素晴らしく、岩場の上に立って足下の関東平野を見下ろす高度感はなかなか迫力があります。こちらも立派な社が祀られています。
女体山からの下りは、変化を付けるためにつつじヶ丘(ロープウェイ駅)への下山道を選びました。最初は急傾斜の斜面で、ロープの張られた険しい岩場を慎重に下り、解け始めた雪の道を下って行きます。険しい道で、凍結していれば注意が必要です。でも巨岩があちこちにあり、展望もあって、樹林の中を登り続ける表登山道とはまた別の趣があります。どんどん下って、やがて弁慶が七回後戻りしたと言われる「弁慶七戻り」という名の岩のトンネル(上部に危なっかしい姿で引っかかっている巨大な岩が今にも落ちそうで、ちょっとスリルがあります)を抜け、弁慶茶屋で一休み。この茶屋も冬季は休業のようです。そういえば2月下旬のこの時期はロープウェイが約2週間の長期休業中で、筑波山が最も静かな時期だったようです。
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茶屋のベンチで休憩したあと、つつじヶ丘への道と分かれて筑波山神社への下山道を選び、解けた雪でぬかるんだ中を下ります。茶屋から下は変化の少ない樹林の中の道が続きますが、雑木林がいつしか杉林に変わると神社も近い。鬱蒼とした林を抜け、住宅街に出て、土産物屋が並ぶ神社前に着く頃には、朝あった雪はほとんど無くなり、観光客も少ないながら増えて来ました。梅の花も咲いています。おとぎの世界から現世に戻ったような気分です。
再びバスの客となり、筑波駅からは渋滞を避けるために土浦までバスで出て、JR常磐線で帰りました。車窓から沈みゆく真っ赤な夕陽がよく見え、雪の筑波山の美しい景色と重なって、印象的でした。
今日も一日、自然の中に浸って、元気をもらった感じがしました。