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気仙川支流大股川における砂防ダムからの汚泥流出事故と魚類産卵床への影響について
現地調査と専門家による鑑定結果から 2003年
事故の詳細→大股川砂防ダム(中井堰堤)からの汚泥流出事故
魚類産卵床調査
2003年12月12日、岩手県住田町大股川で当会世話人代表による、魚類(サクラマス・ヤマメ・イワナ)の
産卵床調査をおこないました。
調査にあたっては、「岩手県」と気仙川漁協の認可後、細心の注意を払いました。なお、世話人代表は、
気仙川漁協組合員です。
【調査日時】
2003年12月12日
【調査の目的】
2003年11月24日、津付ダム建設予定地直下の砂防ダム(中井堰堤)において、突発的に堆積汚泥が
流出したため、産卵時期の終わったサクラマスやヤマメ、イワナなどの産卵床への影響を明らかにするも
のです。
【調査場所】
大股川下流で、産卵床として使われている河床一帯の中から、最も下流側の産卵床を目視で確認し、
選定しました。下流を選定した理由は、目視でも上流ほど砂防ダムからの汚泥が多く、調査によりまき
あがる汚泥の2次被害をふせぐため、上流よりは沈澱の少ない一帯で調査をするためです。
【調査方法】
上記調査場所の産卵床から、タモ網ですくいあげました。その際、可能な限り沈澱した汚泥を撹拌しな
いよう、またその汚泥が下流へ流れる量が少なくなるように注意を払いながらおこないました。
【調査結果】
下記の調査報告書を作成し、写真と合わせ、気仙川漁協へ提出しました。
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調査報告書
去る11月24日早朝、気仙川支流の大股川中井地内にある中井砂防堰堤
〈ダム〉の底が抜け大股川と気仙川がダム上流の土砂で濁り、秋に産卵した
山女、岩魚、サクラマスの産卵床が埋まったのではないかと調査した結果を
報告いたします。
1、大股川下流域下柏里地内では産卵床が汚泥で埋まりサクラマスの卵が
腐っていました。上流ほど被害が多いと思われます。
2、山女、岩魚については産卵床が小さいためと産卵から時間が経っている
ため見つけられませんでした。
〈意見〉サクラマスは流芯よりに産卵し、山女、岩魚は川岸よりに産卵するた
めサクラマスより被害が大きいと思われる。
【写真】汚泥の中で見つかった、死んでいるサクラマスの卵(撮影:当会世話人代表)
大股川で見つかった卵の鑑定結果について
2003年12月12日、大股川で気仙川漁協組合員である吉田正洋(陸前高田市在住)に
より、大股川の魚類産卵床調査がおこなわれた。その結果、3個の卵が採取された。
この3個の卵について、北里大学水産学部環境生物学講座水圏生態学研究室の井田
齊教授が鑑定をおこなった。鑑定は2003年12月24日に、大船渡市三陸町の北里大学内
でおこなわれた。
結論として、大股川で採取された卵について、「サケ以外のサケ科魚類であり、海へ下
らないサケ科魚類ではない。サクラマスか、アメマスのもの。ただし、気仙川の実情から
アメマスのものである可能性は、ほとんどない。サクラマスの可能性が高い」というもの
だった。
鑑定結果の理由については、次の通り。
シロザケの卵は、親ザケの年齢と大きさに比例する。気仙川におけるシロザケの調査
結果より、3年魚、4年魚、5年魚の中で最も卵径が小さい3年魚のものでも卵径は7mm
以上の大きさになっている(各河川の卵径の経年変化 KEの数値 気仙川での調査結
果より)。
サクラマスのデータは少ないながらも、70年代の加藤守によるレポートの中で「卵径モー
ドの季節的変化」という調査結果が存在する。この中で、卵径が最大のものは、5mm強
の大きさとなっている。(加藤守 海洋生活期におけるサクラマスの性比、抱卵数および
成熟より)
今回、鑑定した3個のうち、卵径を測定できたものふたつについては、それぞれの卵径
が、5.82mmと5.70mmであった。
卵径からの鑑定として、上記の結果となる。
なお、DNA鑑定については、卵のカビが多すぎることから、実施するには不可能な状況
であることが判断された。大股川で採取された段階で黒いカビにおおわれており、その後、
冷凍保存を鑑定の寸前まで続け、カビの繁殖が極力おさえられていた状況にもかかわら
ず、サケ科魚類のDNAよりカビのDNAを判定しかねないためというのが、DNA鑑定を見送
る理由となった。
補足的に、採取場所での産卵床の大きさを撮影した写真からも、その産卵床は、大き
さが、約90cm×約120cmほどあり、ヤマメやイワナのものよりはるかに大きいこと、そして
その大きさのものが複数、連続して存在することからも、採取された卵はサクラマスのもの
である可能性が高いことが確認された。
さらに、その採取場所は吉田により、毎年、サクラマスが産卵床をつくる場所となってい
ることが確認されており、今年の場合は、体の大きさが比較的大きく、色は比較的黒くか
なり早い段階で遡上してきたと判断されたサクラマスのメス個体と複数のオスヤマメによ
る一連の産卵行動が当該産卵床も含め、近辺の複数の産卵床でおこなわれていたこと
が目視により確認されていた。その点も井田教授により、今回見つかった3個の卵がサク
ラマスのものである決定的な判断材料になることが指摘された。