◎奈良県県会議員政務調査費違法支出損害賠償事件訴状

 

                    訴状

 

  平成19年11月  日

                        原告ら訴訟代理人

                                弁護士    石   川   量   堂

奈良地方裁判所 御中

 

                当事者目録

 

             別紙当事者目録記載のとおり。

 

     訴訟物の価額   金160万円

     貼用印紙額 金1万3000円

 

  政務調査費違法支出損害賠償命令請求事件

 

第1 請求の趣旨

1 被告は、別表請求金額一覧1記載の各相手方会派に対し、同目録記載の各返還請求金額及びこれに対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。

2 被告は、別紙請求金額目録2記載の各相手方議員(但し、同目録18記載の議員を除く)に対し、同目録記載の各金額及びこれに対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。

 3 訴訟費用は被告の負担とする。

  との判決を求める。

第2 請求の原因

 1 当事者

(1) 原告らはいずれも奈良県の住民である。

(2) 被告は、現在、奈良県の執行機関たる奈良県知事である。

(3) 相手方らは、いずれも平成18年度における奈良県議会の会派ないし奈良県議会議員である。

  2 政務調査研究費の交付とその使途基準

(1) 奈良県は、平成13年4月1日、地方自治法100条12項、同条13項の規定に基づき、議員の調査研究に資するための必要な経費の一部として政務調査費を交付するため、「奈良県政務調査費の交付に関する条例」(以下、「本条例」という。)を施行し、平成18年度は本条例に基づき、各会派に対し月5万円に当該会派の所属議員数を乗じた額が、各議員に対し月額25万円の政務調査費が、それぞれ交付された(本条例3条、4条)。

(2) ところで、政務調査費は、本条例施行規則5条の別表1、2所定の各項目の各内容に即して使用されなければならないとされている(本条例9条)。よって、各会派の当該経費の支出が、上記別表1,2に即していない場合は、本来、政務調査費の支給対象とならないというべきである。

(3) したがって、各会派が、本条例施行規則5条別表に照らして政務調査費の支給対象とならないと認められる活動に政務調査費を充てた場合、当該支出の金額を返還すべきである。

ところが、各会派の支出を見ると政務調査費の対象にならない支出に政務調査費が充てられている。

 3 政務調査費支出の適法性審査の基準

 (1) 政務調査費の透明性確保の要請

   ア 政務調査費の透明性に関する法の趣旨

地方自治法の改正(平成12年法律89号)により、平成13年4月から、条例の定めに基づいて会派または議員に対する政務調査費を支給できることとなった。

上記地方自治法の改正の趣旨は、地方議員の調査活動基盤の充実にとどまらず、政務調査費の使途の透明化という点にあった。それは以下の(ア)〜(ウ)のような諸事情を見ても明らかである。

  (ア) 地方自治法の一部を改正する法律案の趣旨説明

第147国会衆議院地方行政委員会は、平成12年5月18日、地方自治法の一部を改正する法律案起草案を委員会の成案とする決定をしたが、その際の趣旨説明において、「地方議員の調査活動基盤の充実を図る観点から、議会における会派等に対する調査研究費等の助成を制度化し、あわせて、情報公開を促進する観点から、その使途の透明性を確保することが重要になっております。」と述べられている。

  (イ)自治省行政局行政課長通知

「地方自治法の一部を改正する法律の施行について」と題する、平成12年5月31日付の自治省行政局行政課長通知は、「政務調査費については、情報公開を促進し、その使途の透明性を確保することも重要であるとされていることから、条例の制定にあたっては、例えば、政務調査費にかかる収入及び支出の報告書等の書類を情報公開や閲覧の対象とすること検討するなど透明性の確保に十分意を用いること。」を求める。

  (ウ) 地方制度調査会の答申

地方制度調査会は、平成12年10月25日、「地方分権時代の住民自治制度のあり方及び地方税財源の充実確保に関する答申」において「条例により政務調査費を交付することができるようにするとともに透明性を強化すること」を求める。

 (2) 政務調査費の使途基準、議長の調査権限、会計帳簿等の整備保管

政務調査費は、その支給目的が「議員の調査研究に資するため」であり、この支給目的に即して定められた使途基準(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条別表1、2)に従って使用しなければならず(奈良県政務調査費の交付に関する条例9条)、会派の代表者及び議員は、年度終了の翌日から30日以内に収支報告書を議長に提出しなければならない(同条例10条1項)。収支報告書の提出を受けた議長は、適正な運用を期すため必要に応じて調査がすることができ(条例11条)、交付された政務調査費を使途基準に従って使用した額を総額から控除した場合に残余があれば、会派及び議員はこれを返還しなければならない(条例12条)。何人も議長に対して収支報告書の閲覧を請求できる(条例13条2項)。そして、上記規程7条は、会派の政務調査経理責任者及び議員は、会計帳簿の調整と証拠書類(ここに領収書が含まれるのは性質上当然である。)の整備保管し5年間保存しなければならないと定める。

上記条例及び規程及び政務調査費の趣旨に照らすと、交付の趣旨及び使途基準に照らし、県政に関する調査研究に資すると認められない場合、当然、当該部分は違法支出として返還が求められると解すべきである。

 (3) 適法性審査基準

透明性確保の要請及び政務調査費の使途基準の整備、議長の調査権限、会計帳簿等の整備保管の要請等の制度に鑑みれば、収支報告書の収支の記載内容が、実際の政務調査費の支出内容と大幅に相違していたり、その支出内容が使途基準に適合しているかどうかを確認できないような場合は、収支報告書の作成を義務付けて政務調査費の適正な支出とその透明性を確保しようとしている上記各規定の趣旨目的を満たすものとはいえず、当該部分の支出は政務調査費の適正な支出とみとめることができないので、これは法律上の原因を欠く不当利得として県に返還すべきである。

 4   平成18年度における政務調査費の違法支出

奈良県議会の各会派及び各議員の収支報告書の収支の記載内容は、別表3、4記載のとおり、実際の政務調査費の支出内容と大幅に相違していたり、その支出内容が使途基準に適合しているかどうかを確認できず、各支出は政務調査費の適正な支出とみとめることができないので、これは法律上の原因を欠く不当利得として県に返還すべきである。

なお、別表4の番号18の笹尾保博議員は死亡しているため、相手方から除外した。

  5 監査請求

原告らは、平成19年8月28日、地方自治法242条1項の規定に基づき、被告らの上記各支出についてその返還を求める等の監査請求を奈良県監査委員に対して行ったが、奈良県監査委員は、同年10月26日、原告らの監査請求は理由がないとして一部棄却、また、一部について監査請求の要件が具備されていないとして却下の決定を行い、その通知は翌日原告らに送達された。

  6 結論

よって、原告らは、被告に対し、地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき、不当利得返還請求として、相手方らに請求の趣旨各項記載の請求をするよう命ずること求めて本訴に及んだ。

 

                      立証方法

 

  追って書証を提出する。

 

                      附属書類

 

訴訟委任状                                                   55通

                                                                    以上