「聖なる日に」









華やかなイルミネーションに飾られた街中。賑わい放つ群衆の中に、あたしはひとり。

活気に満ちた忙しない騒音たちは、聖なるその日を祝福し。

冬枯れの雑踏に多様の彩を灯していた。



「こんな日にあたしひとり、か・・・」

少し・・・寂しい、な。



行き交わる人の群れはみな穏やかに微笑み。“特別な日”を演出していた。

手をつなぎ、微笑み合い、そして愛を語る。

「仕方、ないよね・・・」試験じゃあ・・・。



今頃きっと彼は静かな時間の中で答案用紙に向かっている。



頑張って・・・と思う反面こんな日に・・・とも思う。

あたしって、サイテー



木枯らし吹く街角。

ショーウィンドウに映る自分の顔が、惨めに見え。

珊瑚は小さな溜息をついた。





「よぉよぉ彼女。ヒマそうじゃん?」

あたりを見渡せば幸せ色の人たちで溢れているのに。

・・・こんなのしか声掛けてこないなんて・・・とことんサイテー

軽薄に声を掛けてくるチャラチャラした男に、珊瑚はうんざりとうなだれてしまった。

「一人だろ?んなら遊びにでも行かね?オレも一人なんだよねー」

「・・・悪いけどあたし約束あるから」

嘘だけど。

こんな日にまで馬鹿と付き合いたくない。



ちろりと一瞥する珊瑚の瞳は、とても冷ややかだった。

すたすたと立ち去る珊瑚の後ろで、バカ男の吠える声が聞こえたが、関係ない。

気にも止めずに、彼女は去っていった。





“特別な日は特別な人と”なんて、いつから定着したのだろう?





「・・・外出たの、失敗だったな」

部屋でひとり淋しく過ごすよりは・・・と思っていたが。

ますます淋しくなった。



すれ違う恋人たちが羨ましいのではない。

逢いたくなってしまうのだ。

彼に・・・。





「・・・折角のイブなのに・・・な」

仕方がないと言い聞かせてみても、女は我儘な生物で。

隣にいる筈の彼を、ついつい探してしまうのだった。



ふぅっと。本日何度目の溜息だろう?

肌に突き刺さる風にぶるりと身を震わせ、珊瑚は小さくなる。





「そこの彼女、暇そうだね?」

ああ・・・またか。

背後から掛けられた声にがっくりと脱力しつつ。いい加減苛々が募っていた珊瑚は、段々とムカッ腹が立ってきた。



「っもう・・・あたしは忙しいの!暇じゃーないんだからっっ!」

はっきり言って八つ当りである。

ナンパくんには悪いがこの際だ、的になってもらおう。

キッと睨むように振り返った珊瑚だったが。振り向いた瞬間、ぽかんとしてしまった。

「――――――……‥え?」

「ほぉ、忙しいのか。では誘っても無駄・・・か?」

にこにこ、にこにこ。



毒気も抜けるような温厚笑顔で珊瑚を見つめるのは――――――弥勒だった。



「弥勒先輩・・・え、だって・・・試験・・・?」

「もう終わりましたよ。私が模試ごときに手間取る筈ないでしょう?」

きょとんと見つめ返す珊瑚に穏やかな笑みを向ける。

そうだった。

この男はいつも突然。

突然驚かせて・・・喜ばせてくれるのだ。




「それで?忙しいのか?それとも?」

だけど、今ほど嬉しい事はないかもしれない。



だって今日は特別な日で。

彼は試験だったのに。

約束も何もしてなかったのに。

あたしを“見つけて”くれた・・・。





紫黒かかった瞳が、揺れる。

すべてをつつみ込むような、優しい双眸の輝きに。





「・・・・・・もちろん!」





珊瑚は至極幸せに・・・微笑むのだった。










聖なる日は・・・大切な人と・・・。















‐END‐










Merry Christmas!

2005.12.25