『誕生日はさ、好きな人と過ごしたいよね』
ンなコト、誰かが言ってたな。誰だっけ?
同じクラスの女子か下級生のコか。誰でもいーけどサ。
誕生日なんて興味ないし、誰かと過ごしたいなんて思わねぇし?
俺は、誕生日は、ひとりが、いい・・・
―八月七日―
「天気悪ぃの」
灰色空を眺めて呟いた台詞にくすりと笑う気配がして、俺はちょっとムッとした。
「んだよ」
「台風が近付いてるらしいからな。太陽がないと元気出ないですか」
「ま・あ・ねー。充電不足」
弥勒先パイの背中に寄っかかってぶーたれてみる。
元気出ないワケじゃーないけどさ、なぁんかすっきりしないじゃん?こんな日って。
「将斗が大人しいとかえって不気味ですな。こんなところで油売ってて良いんですか?今日はバスケ部のヘルプでしょう?」
「んー。今ミーティング中だって。もちっとしたら行く」
うにーっと伸びをしながら背中を押しつける。
ついでだから全体重のっけてやろっと。
「重いですってι」
うん。ヒマだから、ちょっとイジワル。
「先パイも大変ねー。夏休みなのに部活の監視役なんて」
「部長ですから」
ぺらぺらとページを捲りながらすまし顔で言うから、またまたイジワル。
「珊瑚ちゃんに会えるから、嫌じゃーないか♪」
一瞬ピクリと指が止まった。へへっ図星♪
「先パイ分かりやすー♪幽霊部長だった人が今年ンなってから一回もサボッてねんだもん。たーんじゅん♪」
「単細胞のお前にだけは言われたくない台詞ですな」
単細胞だって。ひっでーの。
容姿端麗のくせに結構毒舌なんだもん。おっもしれ。
窓の外は変わらずのBlue Feeling Sky。
夏だってのに勿体無い気もすっけど、仕方ないか。
それに。
この空彩・・・今の俺にはぴったりの彩かもしれない。
「お前、三日後誕生日ですな」
「っと、あれ?よく知ってんね」
イキナリ話題振られて、ちと驚いた。
そう、八月十日は俺の誕生日。
だけど先パイに言った覚えはねぇぜ?
すっと身体を離して上体を捻ると、スコアを捲る長い指が見えた。
「17か。誕生祝いだ、何か欲しい物あるか?」
お祝い、ねぇ・・・。
んな“めでたい”モンじゃねっけど。
「欲しいモン、ね・・・。んじゃー珊瑚ちゃん♪」
「却下」
あはは。すげー即答!顔見えねーけど、きっと今すんげー青スジ立ってんだぜ?
「冗談も程々になさい。何もあげませんよ?」
うん、いらない。だって欲しくねぇもん。
「いーよ。気ぃ使うなんて、らしくねぇじゃん?」
ぺしぺしと肩を叩いて、俺は席を離れた。
そろそろ戻らないとな。
「将斗?」
「じゃ!俺戻んね。珊瑚ちゃんに今度デートしよって言っといて♪」
「阿呆」
呆れ声とともに落ちた溜息を見送りに、俺は音楽室を後にした。
誰もいない廊下はすっげー静かで。
孤独感――――それが今は、心地好い。
「・・・めでたくなんか・・・ねぇよなぁ?」
足音響く中、ぽつりと呟いた台詞は蒸した風に攫われてって・・・。
夏の午後・・・
誕生日――――俺が生まれた日
“イラナイ子” ダッタ俺デモ ・・・ 祝ッテクレマスカ ・・・ ?
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