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「ね、今度はこっちこっち」
聴診器やピンセットを放り出して駆け出していく少年の後を追いかけ、階段を使って2階へと上がる。
「さっき読んだ本の中で、お姫様が犬にさらわれる話があっただろう?あれ、やろうよ」
先ほど待合室で読んだ絵本は、書かれている言語が何語なのかすらわからなかったので当然内容もわからないが、犬が出てきた本は確かにあった。暗い森の中で、木に縛り付けられた女性が、黒くて大きな犬に襲われている絵を覚えている。
何となく嫌な予感がしたのだがそれは的中し、次の瞬間には少年にぐいと腕を引っ張られ、俺は包帯で床の間の柱に縛り付けられてしまった。
「うー、わん!わんわん!」
俺を縛り終えると、少年は突然四つん這いになって犬の鳴き真似を始める。ぼうっと俺が縛られるのを見ていた加山も、少年に倣って畳の上に四つん這いになった。
「わんわん!」
じゃれつくように足元にやってきた少年が、突然俺の素足の太ももに噛み付く。そこで初めて、俺は自分が半ズボンを履いていることに気づいた。痛みの後に、少年の硬い歯と、やわらかい唇がそこに触れているのを感じる。
「くぅん、くぅ、くぅ」
犬になった少年が鼻を鳴らしながら伸び上がり、柱に俺を押さえつけて耳元や首のあたりに鼻を擦りつけている。視界の隅で金糸のような美しい髪がさらさらと揺れ、俺の頬や首すじを容赦なくくすぐった。
「わん、わん!」
四つん這いになった加山が俺の足にすりすりと身体をすり寄せてきたと思うと、太ももで何かが滑るような感触がある。首元を行き来する少年の頭ごしに下を見ると、先ほど少年に噛まれて赤くなっている部分を、加山が小さく赤い舌を出してぺろぺろと舐めているのが見えた。
「わん!」
耳元で大きな声を出されて驚くと、耳をがぶりと噛まれ、舐められる。ぴりっとした痛みの後に、痛みよりももっと我慢できない、濡れた舌が耳を這う感触に犯される。 |