今年も無事新年を迎えることができた。陽光は眩しく帝劇に降り注ぎ、正月もまだ3日、街は活気に満ちてはいるものの、どこか独特ののんびりとしたムードのそれである。
今日は、俺の誕生日だ。……と言っても、今までは年が明けたら年を取るものとして過ごしてきたので、「お誕生日おめでとうございます」と言われても、いまいちぴんとこないというのが本音なのだが。
花組には外国出身のメンバーが多く、いつの間にかそれぞれの誕生日を祝うのが恒例となっていた。
昨年末のクリスマス・イブにはレニの誕生日パーティをしたし、今日の夜には皆が俺を祝うパーティを開いてくれるという。これほどに嬉しいことはそうそうないが、祝われる当事者は準備を手伝うわけにもいかないらしく、劇場も正月は休み。手持ち無沙汰で劇場内をうろうろしていれば、誰かに見咎められて「部屋でくつろいでいてください」と追い払われる始末。なんとも贅沢且つ複雑な気分だ。
追いやられた自室のベッドにばたりと倒れ込むと、見上げた窓から冬の低い太陽が見える。寒い季節に生まれた者は寒さに強いなどと言うが、自分は果たしてそうだろうか。
暖かな地中海で育った織姫くんなどはしょっちゅう「ニッポンの冬は寒すぎでーす!凍えてしまいまーす!」などと言っているが、ロシア生まれのマリアを始め、花組のメンバーは帝都より寒いところの出身者が多い。とても暖かいはずの沖縄出身のカンナなどは、寒さは気合でなんとかなるものらしく、寒空の下でも胴衣1枚で飛び回っていたりするのだが……
………そう言えばあいつは和歌山出身だったよな?……わかやま、かやま……まさか洒落じゃないよな、などと思いつつ、彼と過ごした士官学校時代のことを思い出す。
同時に、俺の意識は白くぼやけ、ふわふわとした浅い眠りをたゆたい始めた。
……そうだ、士官学校の冬は……
……瀬戸内の冬は暖かかったなあ…………
うとうととしてどれくらい経っただろうか。30分、もしかしたら5分程度だったかもしれない。
その暖かい瀬戸内の冬を共に過ごした彼が窓から訪れたのに、俺はまるで気づかなかったようだった。