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拒絶されたことだけが、はっきりとわかった。
「……オレは、弱い。だから、甘やかしてしまうと思う、おまえを。そしておまえは、普段張り詰めてる分、甘やかされたら止まらなくなりそうだ。お互いのために、よくない」
そもそも、どうして俺はこんなことを言ってしまったんだっけ。
「オレは、放っておけないだろう、頑張っているおまえを。そして、余計な手出しをしてしまうと思う。これは、オレの弱さなんだ。……今まで、これで相手を傷つけてしまったことが数度ある」
目の前に立っている彼に、つい口が滑ったとしか言いようがない。
「だから大神、おまえとはそういう関係には、なれない。……ごめんな」
「隣、座っていいですか」
十分に座るスペースはあるはずなのに、彼は太ももが触れるくらい近い位置に腰を下ろした。
「いやぁ偶然ですねぇ、こんなところで帝劇支配人とお会いできるなんて」
軽い口調でぺらぺらと流暢な日本語を喋るので、奇妙で仕方ない。
「さっき、立ち聞きしちゃったんだよねぇ。支配人が、誰かと喋ってたの。支配人室の前で」
タイミングよく停車した帝鉄を、手を引かれて無理やり下ろされる。
手を引かれて、路地裏の1件の店に入った。
「奥、いいかい?」
その店の主人なのか、カウンタの中の女性との簡単なやり取りの後、奥の薄暗い席へと連れて行かれる。
「で、どうしたの?どうして君みたいな人が振られるの?」
女性が運んできたボトルの酒をグラスに注ぐと、カミュは俺に手渡す。
「……甘やかしてしまうから、駄目と言われた。よく、わからないけど」
見つめていたグラスに酒が注がれ、促されるままにグラスを傾ける。
「本当は、言うつもりなかった、ってこと?」
カミュが目を丸くして驚いている。緑色の瞳が、店内の暗さで灰色がかって見えた。
「どうしてかな……口にして初めてわかったんだ、自分の気持ちが」
気づいたときには既に、かなわぬ恋となっていた。
「……少し、疲れてるんじゃない?支配人」
ぐいと腰を抱き寄せられ、やわらかいソファの上でバランスを崩し、カミュの胸に倒れこむ格好になる。
「ほら、こうして……抱かれてると、安心するでしょ?だからさ」
背中と腰を抱かれ、彼の胸に密着した形で、耳元で囁かれる甘い言葉。
「ボクが、君を甘やかしてあげるよ。君は、少し誰かに甘えた方がいいんだ」 |