|
突然、加山の行く手から大きな音と衝撃が伝わってきた。
「なんだ!?」
足音を忍ばせることをやめ、バラックに向かって走り出す。加山は大神が出て行ってから数分後に、同じく部屋から抜け出して来た。妙な胸騒ぎに襲われ、いてもたってもいられなくなったのだ。
「…………加山さん!!!」
前方から誰かが走ってくる。暗がりでよく見えなかったが、近づくと三号の上原だということがわかった。
「どうした!何があったんだ?!」
慌てふためく上原の言では要領を得ない。上原を押しのけて先に進むと、闇の中で動く異形の影があった。ゆらゆらと周囲の空気を歪め、轟音を響かせながらその巨体を振り動かしていた。
「大神ぃっ!!どうした!!」
駆けつけてきた友人に大神が目を丸くする。その場にいた皆が土ぼこりにまみれているのを、暴れる兵器のヘッドライトが照らした。
「うわあっ!!」
ヘッドライトの光に目を射抜かれたそのとき、操縦席にしがみついていた松島が振り落とされた。その身体がまるで人形のように空中に放り出される。加山と大神は同時に走り出していた。
「松島ぁっ!!」
間一髪、蒸気を噴出しながら暴れる兵器に踏み潰されそうになる松島を、加山が抱きかかえて植え込みに飛び込んだ。慌てて兵器の方を振り仰ぐと、大神が操縦席に飛び乗るのが見えた。むちゃくちゃに揺れる操縦席にしがみつきながら、レバーを検分する。非常停止装置のようなものがあるだろうと踏んでいたが、何せ状況が状況だけにうまくいかない。もうもうと上がる土煙と、兵器が吐き出す蒸気の中、ヘッドライトがサーチライトのように方々を照らす。
「?!」
加山はそのとき、自分が握り締めていたものの存在に気づいた。何の気なしに持ってきた、窓辺に置かれていた文鎮だった。ごつごつとしたそれが、手の中で熱を帯びているのがわかる。先程までまったく気づかなかったが、それは既に火傷をしそうなくらいに熱くなっていた。
「大神ぃっ!!!」
加山は、無我夢中でそれを兵器の頭部に向かって投げつけた。それが頭部に当たるとまるで爆薬でも投げつけたかのように火花が飛び散り、兵器がばりばりと電気的な音を立て、一瞬動きを止める。
「今だ、早く止めろっ!!」
内藤の声が飛ぶ。大神がひとつのレバーを握り締め、全体重をかけてそれを引いた。すると、耳障りな嫌な音を立てて突然に機関が停止し、ぴたりと動きを止めた。
「松島、大神、無事か?!」
藤咲が駆け寄ってくる。大神が慎重に操縦席から飛び降りるのが見えた。加山の腕の中の松島はぐったりと動かない。慌てて脈と呼吸を確かめると、どうやら無事らしいことがわかったが、一刻も早く手当てをしなければならないことは明らかだった。
「先輩ー!!」
校舎の方の小道から上原の声が聞こえる。懐中電灯の明かりがいくつか見えているので、おそらく誰かを呼んできたのだろう。 |