カレイドスコープ 9

 「な……に、するんだよぅ、大神ぃ……!」

加山の質問に答えることなく、大神が加山の身体をまさぐっている。雨で濡れた服を剥ぎ取られると、大神のベッドに押し倒された。暗くてよく見えないが、見上げた大神の顔が酷く切羽詰ったような顔をしていたので、何も言えなくなってしまった。

「や……めろって!こんなの…………変だろう!」

大神の手が下着の中にまでもぐり込んできて、その冷たさにぞわりと鳥肌が立つ。握られたそこに血液が流れ込んで、びくりと身体がはねた。

「ん……なとこ触って…………どうすんだ、大神ぃ!」
「…………駄目だ、治まらないんだ……何とか、してくれよ……」

ようやく喋ったと思ったら、それが酷くかすれたため息まじりの声だったので、加山の背筋をぞくりとしたものが駆け上った。強い力で手を取られ、導かれた場所には大神のそれが膨れ上がって脈を打っていた。

「おまえっ……!」
「もう駄目だ、戻れないよ、加山…………」

大神の声が泣きそうで、加山は胸がしめつけられるようだった。ぞくぞくとした感覚が増して、血液がその器官に集まっていくのがわかる。貪るような激しいキスで、もう頭の中がぼうっとして何も考えられなくなっていた。あの大神がこんなことをするなんて、と現実を否定するような考えが幾度も脳をよぎったが、抱きしめてくる大神の力の強さや、大神の匂いにすべてかき消されてしまった。

「ん……っ、んう…………っ!」

唇を塞がれているので、声も上げられないし呼吸もままならない。酸欠で気を失ってしまうのではないかと思えた。それほどに、大神に擦りつけられるそこが熱く、わけがわからないままに射精感だけがこみ上げてくる。

「はぁっ…………加山、入れたい……、ここに……」
「じっ、冗談…………っ!」

ようやく息がつけたと思ったら、無防備なそこに大神の指が侵入してくる。圧迫感と羞恥心に、頭がおかしくなりそうだった。

「中、きつそう……入れてもいいか?」
「ぅわあっ……!やめ、っく、…………ああっ!」

そんなところをいじったことなんてないし、ましてや他人にいじられるはめになるとは夢にも思わなかった。加山は真っ赤な顔で涙をぼろぼろ流しながら、大神にしがみついているので精一杯だった。指が出て行ったと思ったら、もっと手に負えないものが侵入してくる。

「ひっ…………!」
「…………ごめん……っ」

ぎっちりと根元まで埋め込まれ、なんとか大きく呼吸をして気を紛らわせるしかなかった。萎えかけたそこを扱かれると、埋め込まれたもので内部をかき回される。

「ぐうっ……、ぅ……っ!」
「……ごめん、苦しい、よな……」

霞む視界で大神を捉えると、大神の方が余程苦しそうな顔をしているように見えた。とろりとした目をして、喘ぐ口元から覗いた舌が加山の耳元に降りてくる。

「…………俺も、好きだ」
「……っ!」

熱くて、苦しくて、大神に抱きしめられて揺さぶられて、たまらず閉じたまぶたの裏に極彩色の模様が点滅した。それは光を増して色数を増して、絶頂に向かって白く弾けた。



 松島は気絶して医務室に担ぎこまれたが命に別状はなく、風邪のような症状が出てはいるものの快方に向かっているらしい。藤咲、内藤、大神、加山、上原は教官に呼ばれて厳重注意を受けたが、あの兵器が重要機密だからなのか何なのか、これと言った処分はなしだった。


 「あー……文鎮、なくしちゃったなぁ」
「あれは一体何だったんだろうな?あの兵器に当たって不思議な反応を起こしていたし、何か不思議な鉱石の類だったんだろうか」
「まぁまぁ、何だっていいじゃな〜い。終わったことだしさ」

のんきに並んで歩きながら、部屋に向かう。窓の外は今日もいい天気だった。

「おい加山、おまえまた何かやらかしたのか?さっき三瀬教官が探していたぞ」

廊下の向こうから歩いてきた二号の矢口が、加山に向かって心配そうに言う。

「何ぃ?三瀬教官が?身に覚えが……」
「ありすぎるんだろ」

渋い顔をしている加山に向かって、大神が容赦ない言葉を浴びせる。

「ひ、酷い、大神っ」
「真実だろう」

大神はくすくすと笑って、加山にひらひらと手を振った。自分は部屋に戻るから、おまえは呼び出しに応じろ、というメッセージである。

「うわぁ〜ん、大神ぃ、慰める準備して待っててくれよなぁ〜!」
「はいはい」

加山の情けない声を背中に聞きながら、大神は部屋の扉を閉めた。加山のとぼとぼとした足音が遠ざかっていく。


 まったく、よくもまぁ次から次へと問題を起こす奴だ、と大神は苦笑した。開け放たれた窓からの風が心地よく吹き込み、目を細める。壁際に置かれた衣装箱の中には、加山が一生懸命に直した万華鏡が入っていた。

(……変わる景色、変わる気持ち)

それを箱から取り出すと手に持ち、中を覗き込んでみる。加山が壊してしまう前と、風景は変わっただろうか。それはわからなかった。

(…………よく変わる表情だ)

万華鏡は太陽の下で見るのが一番美しい、と夢みるように言い、贈ってくれた人を思い出す。それは、太陽の下を歩めという意味だったのだろうか、大神にはわからない。

(……ただ、きれいだな)

少しもじっとしていないその美しい模様を見つめながら、大神は様々なことを思い出していた。ずっと昔、幼かった頃のこと、数年前のこと、江田島に来てからのこと、ここ数日のこと。それから、これから向かう未来のこと。



 廊下を、聞きなれた足音が近づいてきていた。


終わり





モドル