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「……な、なんだってぇ?……大神と、ニャンイチローが入れ替わったぁ?!」
加山が顎の下を撫でると、大神は気持ちよさそうに目を細め、顎を上げる。本当に猫のようだ。
「んん………きもちいいにゃ………」
すると、大神(中身はニャンイチローらしい)が抱いているニャンイチロー(中身は大神らしい)がじたばたともがきながら鳴いた。
「う〜ん……ニャンイ…いや、大神は『触るなー!』とでも言ってるんだろうか……にしても、変な具合だなぁ〜語尾がにゃ、だもんなぁ〜」
いつの間に背後にまわったのか、加山の後頭部に猫キックが炸裂する。
先ほどまで、大神の身体を嬉しげに眺めたり触ったりしていたニャンイチローが、突然甘えた声を出した。中身がニャンイチローであるとはいえ、愛するあまり性別を乗り越えて妻とした大神の身体が、絶妙なしなやかさで擦り寄ってくるのだ。しかも語尾はにゃ。
「……旦那様ぁ……遊んで、欲しいにゃ」
足元にいたニャンイチロー(中身は大神)が暴れまくり、加山の足をひっかきまくっている。一方、加山の右手の指は大神(中身はニャンイチロー)によってぺろぺろと舐め始められていた。
「お、おおが……いや、ニャンイチロー……」
心なしか、ニャンイチロー(中身は大神)の鳴き声が涙声に聞こえる。大神(中身はニャンイチロー)は加山の右手を両手で持ち、ぺろぺろと桃色の舌で指を舐めながら、上目づかいで加山を見つめた。視覚的にも感覚的にも、加山にとっては非常に辛抱たまらん状態である。
「……ま、ま、マズイぞニャンイチロー!お、オレは大神のすべての要素にアンテナが立つ仕組みになっているんだからな!!」
もはやニャンイチロー(中身は大神)の鳴き声は完全に涙声だ。加山の足をひっかくこともやめ、ぶるぶると全身を震わせている。一方大神(中身はニャンイチロー)は、嬉々として加山の指やてのひらを舐め続けていた。中身も大神であるならば、なんとまあ素晴らしい状況であることか。
「……ご主人様ぁ…ボクの唇に、ご主人様の唇でちゅっ、ってして欲しいにゃ。さっきも下から見てて、したいなぁって思ってたにゃ〜」
加山は、大神(中身はニャンイチロー)をニャンイチロー(中身は大神)ごとそっと抱き寄せると、大神(中身はニャンイチロー)の唇にやさしくキスをする。
「ん……」
薄く開いている唇から舌を差し入れ、やさしく撫でるように探し当てた舌を愛撫した。大神の肩がぴくりと震え、おずおずと舌を絡めてくる。とても、好きな人とじゃなければできないキス。
「……っ加山っ!」
真っ赤になった大神が加山を片手で押しのけると、その腕の中でニャンイチローが元気に片腕を挙げていた。もともとのニャンイチローは、無口なのだ(無言の感情表現が豊かなのだとも言う)。
大神は複雑そうな面持ちで、目の前の加山と腕の中のニャンイチローを交互に見る。
「さっきオレが大神にキスしたとき、大神、ニャンイチローを抱っこしてただろ?きっとこう、至近距離でオレたちの愛にあふれたキス現場を見て、ニャンイチローは自分もしたいと思ったのに違いない」
そうだ、とでも言いたそうに、大神の腕の中でニャンイチローが大きくうなずく。
「その思いが強かったから、大神と入れ替わってしまったんだ。……きっとそのとき大神は、上の空だったんだろうなぁ〜………しくしくしく」
大神は加山の言葉に少し考え込み、突然顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。加山はそんな大神を見て邪な笑いを浮かべている。
「つまり、大神は、オレとキスをしたい!!とそれはそれは熱烈に思ってくれたに違いない」
からかうような口調で言われ、大神は顔を真っ赤にしたままぷい、と横を向いてしまう。
「んふふ〜オレは嬉しいぞぅ〜大神ぃ〜♪」
加山はでれでれと頬を緩めたまま、大神に後ろから抱きつく。しかし、その腕の中にニャンイチローがいるのを見ると、はっとしてその腕をニャンイチローに伸ばした。
「おまえは、悪いがこっちにいてくれ」
ひょいとニャンイチローを大神の腕から取り上げ、床に下ろす。
「語尾がにゃ、なのも、おねだりしてくるのもかわいかったけどなぁ〜♪」
加山は真っ赤な顔で向かってくる大神の腕をつかむと、そのまま自分の胸に抱きこみ、ぎゅっと抱きしめた。
「………かわいかったけど、中身も大神じゃないとなぁ〜。……ちょっと素直じゃないおまえがかわいくてかわいくて、オレはすごく好きだ♪」
べたべた。いちゃいちゃ。加山は自分の胸で頬を染めている大神をぎゅうぎゅう抱きしめたり、髪やまぶたや頬や、顔中にキスをする。されるがままになっている大神も、固まってはいるが決して嫌そうではない。
いちゃいちゃする2人を見て、また奥様が上の空のときに試してみよう、と思うニャンイチローであった。……新型くいっくるわいぱぁが安売り、なんて広告の入る日なんか、良いかもしれない。 |