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皆の機体からほとばしる霊力は、可視化されとても華やかな色に見える。
「……ワタシは、後悔なんかしてないワ。……あの方のために戦って、あの方のために死ねるんですもの……」
凝縮された霊力は空気中に存在する霊気を収束させ、その摩擦から火花が生じ、発火する。電気を帯びてぱりぱりと危うい音を立てていた水狐の魔操機兵が、ついにごうと火を吹いた。
「………サキくん」
燃え盛る炎は、まるで護摩の火のようにも見えた。業を焼き尽くし、安らかな思いでいられるようにと祈り燃える炎。
「……加山くん、ありがとう。あなたがいてくれてよかったわ」
かえでに微笑みながらそう言われ、加山は照れくさそうに思わずぱっと視線をそらした。
「いえ……差し出がましいことを言ってすみませんでした。それでは、私はこれで」
加山はきりっと姿勢を正し、椅子に座っているかえでに敬礼をする。一礼して司令室を出ていこうとする加山の背中を見つめ、かえでは一瞬逡巡した。
「……加山くん!私は……、……いえ、やっぱりいいわ。ごめんなさい。お疲れ様」
かえでは言葉を濁し、曖昧に微笑む。しかし、その笑顔は少し悲しそうに見えた。加山は突然呼び止められていささか驚いたが、かえでの顔を見るとにこりと笑う。
「……あなたは、素晴らしい副司令です。これからもよろしくお願いします」
「……大神」
頭の中で、苦しそうに腐肉を抱きしめる大神の映像が何度も再生される。
彼のことは勿論心配だが、それよりも加山は自分のことを心配すべきだろう。何せ、水狐に催眠術を教え、今回の事件の片棒を担ぐ格好になってしまったのだから。
「……もうちょっと、秘密部隊のあり方を考えるべきかもしれんなぁ」
ぶつぶつと呟きながら、加山は隠し通路を月組本部へと向かった。
「いよう、大神ぃ」
いつものごとく窓から大神の部屋を訪れた加山は、案の定といった感じに元気のない大神と会う。どう声をかけたものか、と逡巡する空気が伝わったのか、大神の方から口を開いた。
「………加山、今度は俺が、わからなくなりそうだよ。戦う意味」
しょんぼりとうなだれている大神は弱々しくて、数々の戦闘をこなしてきた優秀な部隊の隊長にはとても見えない。暗示にかけられたレニ、反魂されかけたあやめ、そして滅ぼされた水狐、大神の心労は随分なものがあるだろう。加えて水狐の言葉は、大神を揺さぶるに値するものだった。
「……死にたいのか?」
冷たい声で加山に言われ、大神ははっとした顔で加山を見る。しかしその声の調子とは裏腹に、加山は微笑んでいた。大神はその笑顔の意味を計りかね、曖昧に微笑む。
「死にたくは……ないよ。でも………自分のやってきたことに、後悔がないわけじゃない」
加山の顔を見つめたまま微笑んでいるのに、大神の瞳から涙がぽろぽろとこぼれた。白い頬をつたって、涙がするすると落ちる。加山は少し動揺したが、同時に素直にこぼれる涙に安心した。泣けるうちはまた浮上できると思えるし、何より、自分の前で泣いてくれることを少し嬉しく思う。
「……後悔のない人生など、ありはしないさ。戦う意味は、ひとつでなくてもいい。それが弔いだっていいじゃないか」
加山が腕をのばして、大神の頬をつたう涙を拭いた。
「………それじゃあな、大神ぃ。……早く、元気を出せよ」
彼女を撃ち殺した日の赤い月を忘れることは、きっと生涯ないだろう。
おわり |