オリエンテーリングの山 星ヶ山 


        箱根の今は

     今やドライブや観光の山と化した様に見える箱根ではあるが、そんな喧騒 から一歩山に向かえば豊かな自然がまだまだ多く残っている。金時山や 神山などの一流のネームバリューを誇っている山の陰に、鞍掛山や白銀山 星ケ山などひとけの無い山も多い。交通網の発達でかってハイキングコー スがあったルートも歩く人が減り、原始の姿に戻りつつある山々である。反 面、静かな山を愛する人にとっては最高のフィールドを提供してくれる山 でもある。
     そんな愛すべき山のひとつの星ケ山(814m)に先日登るこ とが出来た。実は昨年も1月に登ったが、私の確認不足でひとつ前のピー クを星ケ山山頂と間違えたことが判明した。偶然の幸運だけで登らせて もらった様な山だった。

        弾正ガ原まで

     登山口は箱根ターンパイクの大観山までの道を2/3程登った小田原市と 湯河原町との境界線で登り坂が右に大きくカーブしている所である。駐 車場は、そこから400m程登った下り車線の路肩に、2台程のスペースが ある。
     車道を登山口まで車に注意して歩き、山道を20mの登りで白銀山 からの道と合わさる。ここの標高が約930mで814mの星ケ山まで は116mの下りとなり、普通の登山とは反対になる。

     始めのうちは下草 もあまり無いが、5分も下ると箱根竹が熱烈な歓迎をしてくれる。箱根竹 の高さは1〜2m位のため自分の首より低い所は流氷の中を進む砕氷船 の船長になった様で、顔と同じ高さの場合は両手を前に出して顔を保護し ながら緑の海を泳ぐがごとく、それ以上深い所は海底2万マイルのノーチ ラス号のごとく静かに潜航してゆく。適度な下りのクッションの良い道が 足を無意識のまま運んでくれる。上半身に神経を集中して、箱根竹の歓迎 を全身で受け止めよう。

        ニセ星ヶ山

     30分も藪を楽しむと、ひょっこりカヤトの弾正ガ原に出る。「弾正屋敷跡」 と書かれた真新しい道標があり、空が大きいのに何となく雰囲気が無気味 に感じるのは自分だけなのだろうか。
      良く踏まれている山腹の道は、しばらく行くと小田原城C・Cにつきあたっ てしまう。道標には「この先行き止まり・途中から星ヶ山」とあるが、星 ヶ山への道はどこにも無い事は昨年来た時に確認してあるので、今回は始 めから小田原市と湯河原町の境界線を示す1、5mの赤い杭を頼りに、目の 前のピークに向かう。

     この杭は20〜50m間隔にターンパイクの所か らあり、杭を外さずに歩いて行けば星ヶ山に着くはずである。疎林だった 山腹が、頂上に近ずくにしたがって第1級の藪になる。前回このピークか らの帰りに方向を見失い、30分も籔の中を泳ぐはめになったのに懲りて 用意したテープを30m程引っ張りながら突破する。
     藪の中の標高約 820mのピークからはテープを引っ張りながら次の杭を捜すが、全く見つ からない。どうみても山頂部なので、星ヶ山山頂と決めこんで430FMで CQを出す。関東に開けたロケーションのおかげで順調に局数を稼いでそ ろそろQRTという時に、イヤホンをしていない耳に人の声らしきものが 聞こえてきた。

     初めは混信かと思ったが、コールが途切れたので無線機の スイッチを切ると、籔の中から道を探しながら登って来る人の声がする。「こ こは低くなっているから道じゃないかしら」「こっちは籔がひどい」とか苦 労している様である。思わず「山頂はここですよ!」と声を掛けたら、まさか こんな所に人がいるとは思ってもみなかったのか急に静かになってしまっ た。「だれかいるみたい」と言いながら中年4人のパーティーが予期せぬ方 向の藪の中から現れた。お互いの情報交換をすると、この先100m程が ひどい藪で30分前に星ヶ山の三角点を通過したとのこと。ここで始め て現在位置が星ヶ山でないことに気付く。

        星ヶ山の三角点

     時計を見ると,まだ12時前で時間はたっぷりある。荷作りをしてテー プを杭にセットしようとした時、先程のパーティーと入れ違いにー人のハ イカーが現れた。「こんなひどい籔の道、テープがなかったら登ってこなかっ た」と言う。「ここから2人で星ヶ山まで行きましょう」と話しがまとまり、先程の パーティーが出てきた方向の竹の根元を見ると、僅かに窪地になっている のに気付く。地図を詳しく見ると、境界線はこのピークから直角に曲がっ ているので、テープを引きながら強烈な藪の中に突入する。

     ここから100mがこのルートの核心部。神経を地面 のわずかぱかりの踏みあとに集中して進む。テープが残り少なくなった 所でようやく道らしくなる。いったん下った道を同じくらい登り返して、どうや ら山頂部とおぼしき所にでた。左側はゴルフ場のためか、プレーする人の声 が時々聞こえるが、藪のため全く見えない。
     丁字路になった所から20m進 んで東側を見ると、航空測量に使う白い目印板が藪の中から出ているでは ないか。たぶん、その下に三角点が在るはず、と箱根竹の中にとび込む。在 りました。3等三角点の石柱が!!。山名を示す物が全く無い山頂である。人 の訪れが無い山らしく、さりげない雰囲気に包まれている。今度来るとき はかならずこの三角点の横でQRVするぞ、と心に決めて冬の午後の陽射 しの山頂を後にした。

        コースタイム

     駐車場5分登山口40分弾正ガ原15分無名のピーク20分星ヶ山(帰 りは登りのため多少時間がかかります。)

 

1997年 1月19日(晴れ)

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