16.身を守るすべ

「お前プールだよな。」
「あ、ああ。」
「フレイムブリッドまでバスで来た、その原因は数日前に届いた手紙、だろ?」
「!!」

プールは心臓に矢でも刺さったかのような顔をした。
何故あいつがそのことを知っているのか。プールという名前は、ウォメ達と話しているときに耳に入ったのかもしれないが、フレイムブリッドに来た理由など一言も話していなかった。

プールのその顔を見てケタンはまたニヤと笑い、
「なんで知ってんだ、って顔だね。」
と言った。そして続けた。

サイマグネットはお見通し!」

ケタンは足をかけていたプロペラの軸からくるりと床におりた。

「サイマグネット・・・?」
「・・・。ねぇ、これお前のだろ?」

プールが何か訊きたそうなのを流しながら、ケタンはプールに何かを投げ渡した。
それはプールの、ナイフが数本入ったホルスターだった。でリデリアに連れていかれた時にとられたままだった。

「リデリアの飛行船が止まってたとこにあった。」
「ああ俺のだ・・・ありがとう。」

ナイフはなくなっているのはなく、全部そろっていた。
プールはお礼を言おうか一瞬迷ったが、とりあえず言っておいた。

「たぶんお前を飛行船に乗せるときに、赤兵がとって落としたんだろうね。」
「赤兵・・・って何だ?」
ああ。リデリアの兵隊のことだよ。やつら赤い服を着てるだろ?だから”赤兵”とか”赤軍”とか呼んでるんだよ。俺らは。

トラインの説明を聞きながら、プールはナイフの入ったホルスターを腰に付けた。
すると、ケタンがつっけんどんに聞いた。

「そのナイフ。お前の得意技?」
「え。あー。ああ。まぁ一応 身を守る手段のうちの一つ、だよ。」
「ふーん。」

そう言うとケタンは笑みを浮かべてあごに手を当てて、何か考えているようだった。
ケタンの目線はナイフに向けられていた。

その間は一瞬だった。プールの視界からケタンが消えた。

「!?」(なんだ!?消えた!?)

プールが、ケタンが消えたと確認した瞬間ケタンはプールの背後に回っていた。そして神業のごとくプールの腰のホルスターからナイフを一本抜き取った。プールはその気配を察知し、素早く後ろに向き直してナイフを手にした。



(速い!)

プールはケタンの刃筋をかろうじて防ぐことができた。だがケタンの動きはプールの目をもってでも全く把握することができないぐらいの速さだった。

「俊敏性、動体視力、瞬発力、判断力、俺から見たらまだまだだけどまぁギリギリ合格ってとこだね。」

ケタンは構えをといてプールの正面に向き直った。

(な、なんなんだこいつは・・・!;)


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