17.高血圧な猫

プールはあっけに取られていた。
自分は構えていた。不意な攻撃にも対応できるよう警戒していた。だが、見えなかった。ケタンの動きが全く見えなかった。

「・・・なるほど、これがあんたらカディラの力ってことか。」
「それほめてんの?甘く見ちゃーいけないよ。実力なんてこんなもんじゃないさ。」

ケタンは腕を組んで続けた。

「ああ、そういえばまだ俺の名前言ってなかったね。誰かさんがうるさいぐらい大声で叫んでたからもう知ってるだろうけど。」
あれはお前がなかなか出てこなかったからだろ!俺はがんばったんだよ!

笑いながらケタンに言われて、トラインはムキになった。それを見てケタンはもっと笑った。プールも笑いそうになったが、こらえた。

「俺はケタン。



そう言って抜き取ったナイフをプールに差し出した。プールはさっきまでケタンの速さに驚愕していたので、ナイフを抜き取られたことをすっかり忘れていた。
そうだ、俺はナイフを抜き取られた。速すぎてわからなかった。そうやって色々考えてしまった。その間は決して長くはなかったが、ナイフを差し出したケタンの手はじっとしてはいられなかった。
ケタンはゆっくり数歩、後ろにさがった。

ストン!
「ビンゴ!」

プールの左横を何かが通った。ホルスターを見てみると、ケタンの取ったナイフがきっちりと入っていた。
ケタンは数メートル離れたプールのホルスターに、ナイフを投げ入れたのだ。

あーもう。ケタン!からかうためだけに無駄な労力使うなって前にウォメに言われただろうがよ。もったいないだろ。サイマグネットを持ち歩けるのはお前だけなんだぞ!プールがここに来た訳とかは後で詳しく聞くからさ!
「無駄かどうかなんて俺が決めることじゃん。それにさっきのは俺の意志じゃないさ。リオウがどーーもプールが気になるんだと!その左腕の傷跡とかね。」

ケタンがそう言うと、後ろの物陰の方から猫が出てきて、プールに言った。

『よ!!俺リオウ!!好物はかまぼこ!!よろしく!!』
「よ、よぅ;俺はプール。好物は別にないや;よろしく。」(血圧高そうな猫だな;)

プールは、猫が喋ったことに少し驚いた。
リオウはプールの目の前まで来て、しげしげと左腕の傷跡を見た。

『あんときは悪かったな。その腕、痛いのか?』
「ああ。あのとき路地でリオウが攻撃したとき痛み出した。でも今はなんともないよ。」
『おかしい。』
「え?」

リオウはプールの前でお座りをして言った。

『俺はあのときプールにはその場から先に進めなくなるような攻撃をしただけだ。痛みを伴うような攻撃はしてない。』
「じゃあ、あのときの痛みは・・・?」

プールは、リオウは能天気な騒がしい猫だと思ったが、今の真剣な顔を見て、考えるときはちゃんと考える真面目なやつなんだな、と思った。しかし、

『なんで痛んだんだろうな!わっかんねーー!ハハハ!!な!今さっき俺シリアスでちょっとカッコよかったか!?な!な!』
「・・・・・。」

プールはさっき思ったことをすべて撤回した。
するといきなり、

すぱーん!
『ぶっ』

リオウがハリセンで叩かれて吹っ飛んで、プールの目の前から消えた。
何事かと思って後ろを見ると、ハリセンをもったウォメが立っていた。

「さわぐな。やかましい。機関室のエンジン音だけでも充分うるさいのにもっとうるさくなるだろうが。」
あれーリーダーお帰り!
「ああ、今帰った。お前が言った通りにやってきたぞ。」
『おぉっウォメがトラインの言い付けを聞いたのか?ってことは何だ!リーダー交代?』

リオウはもう元気になっていた。
トラインはリオウに、そんな、リーダー交代なんて有り得ないよ、と笑いながら言った。

「まあ、俺が今 外でしてきたことについての皆への報告も含めて、これからプールに、カディラやリデリアや俺達の世界について本格的な説明だ。」

ウォメはそう言ってドアの方へ向かい、すれ違いざまにプールの頭をポンと軽く叩いた。そしてプールに、

「いよいよお前のお待ちかねの謎解きだ。」

と言った。

トラインは”全員フロアに集合”の放送をかけた。
機関室からは人影がすべて消え、ただエンジンの音だけがたくましく響いていた。


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