2.カエル

がさっ

物音がした。後ろに振り向くとそこにはカエルがいた。

がさっ

また音が聞こえた。今度は猫だった。その猫は左右の目の色が異なっていた。
猫は数メートルへだたりを置いてカエルとにらみ合っていた。カエルを狙っているようだった。だがカエルは目の前でじりじりと歩み寄ってくる猫を恐れている様子はなく、じっと静止していた。

「何でこんな所に…。っつーか何でこんな所で。おいカエル、のん気だな。逃げないと食われるぞ。」

言葉だけ聞いていれば、自然を愛する優しい心温かい青年。だがプールの顔は違った。この青年は腹が減っていた。
今プールの頭の中では、どっちを食うかの論争が行われていた。
カエルは見るからにまずそうだでも猫を食うのはなんか可哀相に思えてくるしかしそれはカエルとて同じことどっちにしようおい腹せかしてんじゃねぇようるせーよ早くしないと俺は死んでしまう猫は毛を取るのが面倒だカエルは皮はなんとかなりそうだパリパリみたいなそれどころじゃねぇ早いのはカエルだよしカエルだ!
無駄なことも考えていたが必死に考えてやっと決まった。もう美味いかどうかなんて関係なかった。
そしてプールは腰のホルスターにつけておいたナイフを抜いて、俺が食ってやろう!と言わんばかりに投げた。

ヒュッ

猫は危険を察知して一歩後ずさりした。ナイフはまっすぐカエルの方に飛んでいった。それは絶対命中する方向だった。
だが次の瞬間。



消えた。

カエルの体が金色の細かい砂になって、地面に吸い込まれるようにして消えた。
一瞬、破裂したかのようにも見えた。ナイフが刺さったから消えたのか、刺さる前に消えたのか、よく分からなかったがとにかく消えた。
プールは飯が無くなったことよりもなによりも、わけが分からなかった。
なんなんだ一体!バス停の看板はいつのまにか消えるし!カエルは目の前で砂になって消えたし!ここは何でも消えてしまうのかよ!
本当に怒りたかった。だがプールはもう気力が無かったので、口に出したその言葉は「!」がすべて「…」になっていた。
猫は既にいなかった。
そのとき、プールの目にはある物が映った。赤い、丸い、長い。

「バス停の看板…?」

そうだった。さっき消えたと思ったバス停の看板が後ろの丘を隔てて反対側にあった。停留所が2つあるはずはなかった。やはりあの看板が移動したとしか考えられなかった。

「もう、なんなんだよ本当に…」

プールは力を振り絞って丘を登り、停留所に向かって歩いた。ちょうどバスが来た。
ドアが開き、運転手が言った。

「はィ★このハイテク・バ〜スはフレイムブリ〜ッドま〜で参りまン〜ス。」

ふざけんな。人間語喋れ。プールは少し苛立っていた。

がしョん。ピーカすカスかすカス…

ドアが閉まった。ハイテクとか言ってたくせに、見かけはもちろん音がやばかった。バスには乗れたものの、無事に着けるかどうか不安になってきた。

「はィ★ドア〜が閉まっちゃいま〜した。それで〜は発進してみ〜ます。」

プールは運転手のその意味深な言葉を聞いてさらに不安になった。今度その言葉づかいをしたら乗り逃げしてやろうかと思った。
バスはゆっくりと、フレイムブリッドに向けて進んでいった。



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