35.出撃前夜

あれから毎日ケタンとの特訓を繰り返していたプールは、体術の特訓から武器を使った特訓の段階へと移っていた。

「あーくそ!」
「だぁからもっと集中しろって言ってんだろがアホ。」

その日の10時間を終えた二人が、モニターの部屋からフロアに戻ってきた。

「プールの上達具合はどうだいケタン。」
俺達、二人で毎日モニター観戦だよ!

特訓初日から毎日モニターで見ていたシグマとトラインは濡らした布を渡しながら言った。

「毎日見てんだったら今のプールの状態なんか聞かなくても分かるだろくそ。」

ケタンは歯を出しながらウンザリしたような顔で言った。

文句ばっか言ってるけどさ、プールが成長していくの嬉しいんじゃないの〜ケタン?
「わはは素直になれよケタン!」
「うるさいだまれ!」

図星をつかれたようにケタンは顔が赤くなり、タオルで顔を隠すように覆った。

「おーおーご本人さんはお疲れで眠っとるわ。」

10時間に疲れ果てたプールは、濡れ布を掴んで顔につけたまま床に倒れ込んで寝ていた。

「真夏でもねーのに汗だらけで寝たら風邪ひくっつーの!誰が面倒みんだよ薬もねーのにあのバァカ。」
ほらまたー
「わはは!布団でもかけてやったらどうだケタン。」

墓穴を掘ったケタンは、ばかいってんじゃねーと言いながら部が悪そうに部屋を出ていった。
シグマは棚からつぎはぎだらけの布団を取り出し、寝ているプールにかけ、言った。

「本当にお前さんの成長ぶりには驚かされるよまったく。」
よくもまあこんなに頑張るもんだよね。

トラインは労うように笑いながら、お茶をすすった。そしてシグマはその横に座り独り言のように言った。

「本当に・・・似てるよ。マトラに・・・。」

微笑ましそうな目をしたシグマを見て、トラインが尋ねた。

「"マトラ"って?」

はっとしたような顔をし、一瞬トラインに目をやって再びプールに視線を戻したシグマは答えた。

「息子だよ・・・。俺の。今はどっかに修行に行ってるがな。もう何年も会ってねえ。奴はバカヤロウだったよ。本当に。」

外では夕陽が沈みかけていた。



「・・・夜は嫌いだ。」

別の部屋に行ったケタンは窓から外を眺めながら独り言を呟いた。

やがて夜が来る。夜は彼らの時間だ。


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