36.Under debut

外がすっかり暗くなった頃、プールは自分の腹の音で目が覚めた。

『よう!目ェ覚めたか?』
「・・・ああ俺寝ちゃったのか。」

眠い目をこすりながら声の方を見ると、リオウが夕飯の準備をするためテーブルの上をしっぽではらいながら笑っていた。

『ぷーる、腹鳴ってたぞ〜ムフフ!』
「えっ」

思いがけないことを言われてプールは恥ずかしくなったが、次の瞬間リオウのお腹も鳴った。

『ケンコーケンコー!』
「ブフッ。」

プールはおかしくて吹き出した。

その日の夕飯はで仕入れてきた缶詰とリオウが捕まえてきた鳥を焼いたものだった。お世辞にもいいものとは言えないが、とりあえずはこれで毎日なんとかなっていた。

「明日の襲撃にプール、お前も来い。」

食事中に突然、ウォメ話を切り出した。皆の目が、落ちるのではないかというくらい大きく開き、口の中へ食べ物を運ぼうとした腕も口の一歩手前で止まった。そしてそれはそのまましばらく戻らなかった。

「・・・え?」

あまりに突然だったのでプールの目も大きくなり、聞き間違いかと思ってもう一度聞き返した。

「聞こえなかったのか。明日お前も一緒に仕事をすると言ったんだ。」

確信した他のメンバーは、一瞬間をおいて騒ぎ出した。

「な・・・まじ!?」
『おおー!とうとうデヴューだー!』
「じゃあ今夜は乾杯ね〜」

そう言ってアロエは部屋からボトルを持ってきた。

「あ!お前さんそんなもん一体どこに隠しとったんだ!?」
「ウッフッフー。こんな時のためにとっておいたのよ。」

楽しそうに騒いでいる皆を見て、プールはこんなにも皆が嬉しそうにしてくれるとは思ってもみなかったので、嬉しいと同時に少し恥ずかしくなった。
そしてシグマがボトルを開けようとしたその時、

「待て。まだ早い。」

ウォメが止めた。
皆の動きがとまって不思議そうにしていると、こう続けた。

「浮かれてばかりはいられんぞ。帰ってこれなければ意味が無い。」
「ま・・・ぁそうだけどさ。お祝いぐらいいいじゃないか?」

ウォメは一瞬プールの方をちらと見て、いつものように無表情で言った。

「祝うのは結構だが、その浮いた気持ちのままで仕事をして勝手に死なれては困る。」
「そんな死ぬだなんて。リデリアに乗り込むわけじゃないのよ?」
「念には念を。油断大敵だ。」

メンバーは顔を見あわせ、まぁしょうがないかという顔をして片付けはじめた。
自分のせいでなんだか空気が重くなってしまって、プールは少し気がめいて、同時に仕事がそんなにも大きなものなのかと少し不安になったが、沈んだ顔のプールを見てウォメが通りすがりに、

「そこまで心配することはない。一番始めの仕事は慣れることと、足手まといにならず自らを守るだけでいい。」

メンバーに聞こえないように小声でそう言って頭を軽くぽんと叩きながら、ウォメは奥の部屋に歩いていった。

「・・・・。」

プールは叩かれてびくっとして上がった肩を下げ、ウォメの歩いていった方を見ていた。不安になったものの、ウォメの言葉で少し安堵感がうまれた。
その瞬間、顔を後ろに向けているプールに、アロエが背中をばちんと叩きながら明るく言った。

「なにしょげた顔してんのよ!」
「?!えっ、えっ?」

しょげてるんじゃなくてホッとしたんだけどな、しかしその言葉はアロエたちの勢いに掻き潰されていた。

「わりーなプール!こんなことは日常茶飯事なのよ。」
リーダーも俺らのためを思って言ってくれてるんだよ。あんなだけどね〜
「わっはっは!それを言ったらおしまいだ!」

メンバーがいつものように明るく話しているので、プールはこれがいつものことなのだ、とまた勝手に思うことにした。ある意味のみこみがよかった。
その日は早めに床に就いたが、嬉しさと不安とでなかなか寝付けなかった。


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