41.その金の砂は綺麗?

「ああ。おそらくこのまま行けばリデリアのお陰でシマルダンは絶滅するだろうな。」
「やっぱり・・・!」

またひとつ、プールの中でリデリアが膨らんだ。
どこまで、どこまでやれば気が済むんだ。プールの中はその問でたくさんだった。

あいつは・・・自分のこと以外は何も考えていない。」
「"あいつ"?」
イリキ。リデリアのトップの奴だ。」

ウォメが言うには、昔はイリキもウォメ達の仲間だったという。

「あいつも昔は・・・優しい人間だったのだがな・・・。今では慈悲のかけらもない。」

ウォメは目を細め、みけんにしわを寄せた。

「シマルダンが滅べば次は別の生き物を尽きるまで使い、それが尽きればまた次の生き物を使うだろう。そうやって奴は周りを犠牲にしてゆく。本当に、心の底から何も考えていない。」
「イリキは・・・一体何がしたいんだ?」
「さあな。だが善からぬことだというのは誰にでも分かる。」

ウォメは椅子から立つと、窓の方へ行き傾きかけた太陽を眺めた。そのウォメをプールは眺めた。

「自然に人工的な要素を組み込もうとすれば、必ず自然に刃向かった代償がついてくるものだ。あのカエルが死ねば金の砂になって消えるのも、自然に手を加えたからだ。正常な死に方ではない。もはやあのカエルは自然に返ることはできん。」

プールの頭の中に何かが通り過ぎた。
"オーカーは?"
能力を不当に得た者はともかく、たとえ正当に得たとしても、それはやはりアマラ族が生まれつき持っている能力を人工的に得たことには変わりない。自然に刃向かっているに他ならない。
プールは聞くか聞くまいか迷った。その頭の中では今まで聞いた全ての話の内容が激しく飛び交った。おそらくウォメは話すべきことは全て話してくれるだろう。今話してくれないことは聞くべきではない。プールはそう言い聞かせようとしたが、そう抑える前に口は動いてしまった。

「おっさん・・・サイマグネットもアマラ族が生まれつき持っていた自然の能力なんだよな?」

ウォメは外を眺めながらプールに背をむけたまま、ああ、と言ってうなずいた。
その落ち着き様は、まるで次に来るプールの言葉が分かっているかのようだった。
プールの心臓は激しく鼓動を打った。そして速さが増していった。

「おっさん達は・・・。オーカーは・・・もしかして死ぬと・・・。」

ウォメは体を向き直し、笑ってはいなかったが穏やかな目をプールにむけた。
ウォメはもともと笑顔を見せない仏頂面だったが、もし笑う人であったらばきっと今は寂しげな、優しい笑顔であったろう。
それは己で悟れとでも言うかのような視線であった。
だが悟らずとも分かる。直截な答えは貰えなかったが、プールは分かってしまった。

「金とまでは綺麗にいかないがな。」

ウォメはそうとだけ言うと、再び背を向け窓の外を眺めた。
自然に刃向かえば、必ず天罰が下る。
命を全うしても、再び自然に返るための灰になることすら許されない。


オーカーは、死ぬと砂になる。


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