42.奴のもの

「いいかプール、お前の頭に叩き込んだ作戦どおりに動くんだぞ。」
「うん。」
「地上まであと1メートルってところで拳から力いっぱい気孔を出して着地するんだぞ。」
「うん。」

太陽が沈みかけた夕方頃、プールはホールのガラスのない窓の前で皆に色々なことを復唱された。無理もない。これが初めての上からへの下降だ。プールは緊張で顔から足の先まで全てカチカチに固まっていた。
彼の両腕には今、リオット(剣兼盾)という武器が握られていた。
リオットは普段はケタンが使っている武器だったが、今回だけケタンはプールに貸した。
それは今日の朝のことだった。




「おいプール、そういやお前まだ自分の武器もってねーよな?」
「?持ってるよ?ちゃんとナイフ。」
「ちがうってんだよ。オーカーに対してはもっときちんとした武器じゃないとあんまり効かないんだ。」

プールはきょとんとした顔をした。そんなこと思ってもみなかったからだ。
けれどどうだ。そう考えてみればなるほど。だからあのとき俺のナイフが刺さったままでもアロエは銃を使えたんだ。(5話参照)プールはそう感じた。
オーカーには普通の武器では、単なる「攻撃」はできても核心を突く攻撃はできない。上の人間には通用しない。

「だからほら、これ使いな。」
「え。」

ケタンはそう言って、二つの大き目の物を投げた。
それは一つずつ両手に持つ形になっていて、持つと肘から下の腕を覆う盾の役目を果たした。

「これ、いつもケタンが使ってるやつじゃないのか!?」
「そうだけどいーんだよ。今日だけお前に貸してやる。」

いつものように軽く言うと、ケタンはその武器の説明をしだした。

「おい、いいか?これはこうやって持って、この盾の部分で敵を殴ったりもできる。そんで、この持つところを強くギュッと握るとな・・・」

バシュッ

「うわっ!?」
「あははははっ驚いてやんの!」

ケタンがギュッと握ってみせたところ、盾の拳側にあたる方から、収納されていた剣が勢いよく出てきた。

「ジャマなときはこいつはしまっておいて、使うときだけ出すってわけだ。いいか?」
「いいはいいけどさ、ケタンはどうするんだ?」
「俺?俺はいいよ。今日はそれの練習用を使うから。」
「じゃあ俺が練習用でいいよ!お前こっち使えよ!」
「いーの!遠慮すんなよ俺が言ってんだから。それに・・・」








プールは何のことだかさっぱりだった。とりあえずケタンから借りたリオットを使うことにしたが、何かが心の中で引っかかっていた。

あの寂しそうな眼はなんだ・・・?

そう思っているのも束の間、の方から夜を警告するけたたましい鐘の音と人々の慌てる声が、ほんの微かに聞こえてきた。


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