| 43.逆光の笑み |
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「全員そろったな。」 ウォメは窓の少し右横に立ち、フロアに集まったカディラのメンバーはその前に並び、各々自分の装備のチェックをしていた。 空はもう暗くなっていた。下からは地上の人々の叫び声が聞こえてくる。リデリアがもう向かっているようである。 「ふん。少し遅れをとったようだな。準備はいいか?」 メンバーは、おう、という返事と共に、2人一組で整列した。 「よし、では第一!アロエとリオウ、その後続いて、ケタン・プール、最後にトライン・俺だ。」 アロエは後ろ向きに窓の枠をつかみ片足を乗せ、部屋の中を向いていた。リオウはアロエの肩にちょんと乗った。 真っ暗な窓の外は風が強く、ひゅうひゅうと音をたてて、行けの合図を待つアロエの束ねた髪をばたばたとはためかせた。 「いいか皆、
言葉と共にウォメは上げていた腕をバッと下ろし、同時に窓で構えていた第一陣はその腕を放し、足で枠を強く蹴り、そのまま後ろ向きに頭から落ちていった。 バタバタと服がはためく音がしたかと思うとすぐにやみ、アロエとリオウの姿は見えなくなっていた。 窓から飛び降りることや、その着地の仕方は事前に聞いてはいたものの、いざとなると足がすくんだ。なんせ、下が見えないようなほどの高さから、命綱なしで飛び降りるのである。 ただプールは、その緊張と不安と同時に、何か胸にしこりのようなものを感じた。 合図を出す直前の先ほどのウォメ。 笑って・・・いた・・・? 月の光による逆光であまりよく顔は見えなかったが、確かにウォメは、笑っているように見えた。 おどろいた時も、悔しんだときも、冷静で常に無表情であったあの彼が、笑っていた。それも、リデリアの邪魔を楽しむかのように、嘲るかのように。 プールはウォメの足元の床のあたりを、ボーっと見つめながら、ウォメについて錯綜する情報を、頭の中で必死に整理しようとしていた。 「ぉぃプール!!」 急に名前を耳元で呼ばれ、プールははっとした。 「あっ・・・ごめっ」 「プール大丈夫か?なんか青ざめてない?」 心配そうにトラインが覗き込んだ。そうだ、今は余計なことを考えている暇はない。仕事だ、仕事を上手くやり遂げることに集中しなきゃ!ウォメの方をチラッと見ると、彼はいつもと同じ仏頂面に戻っていた。 あわてて窓の方へ進もうとすると、ケタンがすでに窓の枠に腰掛けて準備していた。 「おーおー、白い顔しちゃってよ。何お前、びびってんの?」 ケタンは月の光を背に、馬鹿にしたようににやっと笑ってみせた。プールはむっとし、何か言い返そうとしたがそれにかぶるようにして、ケタンが続けた。 「まーぁ俺が特訓で教えてやったことの半分くらいは思い出して、せいぜい足引っ張ってくれるなよ。」 そう言い捨てるとケタンは体を支えていた足をほどき、闇の中へと消えていった。 「あっ!このやろう!」 「まったく・・・あれほどサポートして2人で行動しろと言っただろうが!」 トラインは引きとめようとしたが、彼が前へ踏み出すより早く、ケタンは下へと向かって落ちてしまった。ウォメは額に手をあてながらため息をつき、プールを急かして窓の近くへと連れて行った。 「うっ、わっ、わっ」 プールは、ぐいぐいと押してくるウォメの腕をわっしとつかみ、必死で窓から落ちないように踏ん張っていた。 「いいか、怖気づくな。夜の大地はお前を必ず受け入れる。」 プールはカディラの中で、何度も着地の練習もしたし、シュミレーションもした。自分に大丈夫だと繰り返し言い聞かせた。そしてウォメの言葉で、彼が落ち着くにはそう時間はかからなかった。 「だぃ・・・大丈夫だよ。俺、お、俺はできるっ。」 プールの顔を見てウォメは手を放し、プールは窓の枠に立った。下を見るのが恐いから、アロエのように後ろ向きにしようかと思ったが、見えない方がもっと恐いことが分かったので、前かがみにした。 「プール頑張れよ!落ち着いてなっ。」 トラインの言葉の終わったと同時に、プールは足にぐいと力を入れて、飛ぼうとした。 その時、 ガクン! カディラ全体が大きく揺れた。 「えっうわ何っ」 「プール!」 ずるっ 彼の準備も空しく、プールは情けない声を上げながら、無防備な体制で窓の外へと放り出された。 「うあぉぉぉおぉぉぉぉぉー」 残った2人は唖然としながらも、窓から乗り出しその情けない声の主が小さくなっていくのを見た。 「ああっ危ないなぁありゃあ〜死ぬかな?」 「はーっまったくどいつもこいつも世話のやける・・・」 |