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大木 実

(おおき・みのる)


その1: 連翹(れんぎょう)

その2: 花影

その3: 楢の若葉

その4: 花季

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詩人インデクス


 ◇◆◇◆◇ 


          連翹(れんぎょう)
          

       連翹は三月咲く花
       小さな可憐な花 黄いろい十字の花である
       道のかたわら とある籬(まがき)のうえに
       わたしの知らない花をみて
       妻に花の名を訊うた
       妻は訝(いぶか)しげに連翹とこたえた

       連翹は
       むかしわたしの好きだったひとの
       好きだった花である
        その花の名をききながら その花を
       わたしはきょうまで知らずに過ごした
       早春
       花咲いて
       花あれど実のらぬという連翹の花
       さながらひとの身のように

       それは妻の知らない そして妻を知るまえの
       わたしの秘かなできごとだが

                    (詩集「遠雷」より)
 

 ◇◆◇◆◇ 


          花影
         

        夏の日を
     夾竹桃は咲きつづける
     昼がながくなり 日暮れがおそく
     花のあたりだけいつまでも明るい

     夾竹桃をはげしい花のように感じてきたのは
     この花が夏の日咲くためか
     この花を好きだと言ったひとのためか
     みていれば夾竹桃のくれないも 花のさびしさを持つものを
   
     あれから幾年経つだろう
     二度と会わない別れであったのに
     わたし達はあんなにも静かであった

                       (詩集「初雪」から)
 

 ◇◆◇◆◇ 


          楢の若葉
       

        あれは
     何という木だろう
     いまうまれたばかりのようなうすみどり
     梢梢に揺れながら若葉は花のようだ
     花のように美しい
     「楢の若葉だよ」
     友はこたえながら
     「きみは何も知らないね」と笑った
     ほんとうに私は何も知らない
     木の名も
     花の名も
     それは私が町で育ったためだろう
     そして草や木の美しさを知らなかったためだろう
     私は知りたい
     目に沁みる 楢の若葉よ
     世界はいつからこう美しかったろう
     そしてそれは何故だろう

                      (詩集「遠雷」から)
 

 ◇◆◇◆◇ 


          花季
         

      嘆きもなく
      驕りもなく
      この世の日の暮れを
      静かに咲いている花花を仰ぐ
      花花を仰ぎつつ
      耐えねばならなぬ哀しみや 生きねばならぬいのちをおもう

      あさゆうの暮らしの埃によごれず
      短かったから
      短かったから美しかったのだ 花花のように
      花花は
      としどしにひととき咲き 私たちは
      花花のしたで別れ それからふたたび会わなかった

                      (詩集「屋根」から)
 


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更新 03/01/01