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いのち
いのちとは ただ
待ちぼうけの ことではないか
来るはずのない 何か
巨(おお)きすぎるものを 切なく
待ちわびる ことではないか
水すましは その眩暈(めまい)
ジラフは頸(くび)で 薔薇(ばら)は棘(とげ)
人は言葉
向日葵(ひまわり)は芯で
ただ 待ちわびる ことではないか
(角川文庫『現代詩人全集』第10巻より)
◇◆◇◆◇ 独楽(こま) 如何なる慈愛 如何なる孤独によっても お前は立ちつくすことが出来ぬ お前が立つのは お前がむなしく お前のまわりを回っている時だ しかし お前がむなしく そのまわりを 回り 如何なるめまい 如何なるお前の vie を追い越したことか そして 更に今もなお それによって 誰が そのあり余る無聊(ぶりょう)を耐えていることか (詩集「独楽」から)
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鏡
何という かなしいものを
人は 創ったことだろう
その前に立つものは
悉(ことごと)く己(おのれ)の前に立ち
その前で問うものは
そのまま 問われるものとなる
しかも なお
その奧処へと進み入るため
人は更に 逆にしりぞかねばならぬとは
(角川文庫『現代詩人全集』第10巻より)