氷ノ山にチビデオゾウ出現!

rev. 15.ix.2002
rev. 15.viii.2004
rev. 1.ii.2008
[part 1]
part 1
 
↓氷ノ山のヤナギにチビデオ
 ↓ヤドカリ状態の幼虫
 ↓繭のような蛹室
part 2
 ↓ヤナギ雌花穂の住人たち
 ↓チビデオゾウ表裏横斜図
part 3
 ↓珍品?オビデオゾウ
 ↓栴檀についての薀蓄

 チビデオゾウやオビデオゾウを含むAcalyptini族の分類については下記のレビューを参照ください.
Kojima, H. & K. Morimoto, 2005. Weevils of the Acalyptini (Coleoptera: Curculionidae: Curculioninae): Redefinition and taxonomic Treatment of the Japanese, Korean and Taiwanese Species. ESAKIA, (45): 69-115.


兵庫県のチビデオ

 チビデオゾウムシ Acalyptus carpini (Fabricius) は,成虫の体長が2〜3mmの,小型のゾウムシです.名前の通り翅鞘の先からお尻(尾節板)が露出しています.
 保育社の図鑑では[北海道・本州(中部以北)・シベリア・ヨ−ロッパ,ヤナギ類]となっていますが,これまでも兵庫県でも少数ながら採れていました([宍粟郡波賀町]音水, 30.v.1970, 1ex., 24.vi.1973, 1ex., 宍粟郡[波賀町]水谷, 17.vii.1981, 3exs., [宍粟郡]千種町日名倉山, 26.vii.1995, 1ex., すべて博物館所蔵).


チビデオゾウムシ

氷ノ山のヤナギにチビデオ

 ところが2002年4月25日に関宮町の氷ノ山の東尾根登り口付近のヤナギ類(主にヤマヤナギ,オノエヤナギでも少し)の雌花で多数採集できました.林道の国際スキ−場〜大段ヶ平の間の山腹の日当たりの良い路傍,高度は約800mです.
 今年が特に多いのか,いままで適期に採集しそこなっていたのかは不明です.


ヤマヤナギの雌花にとまるチビデオゾウ

 "Die Kaefer Mitteleuropas" に本種の生態が載っていて,幼虫は柳の雌花で育ち,土中で蛹化するそうです.

 チビデオゾウを主に採集したヤナギは未同定のままここに写真を掲示したところ,ヤマヤナギだろうというご教示をうけました(ありがとうございました).穂は上向きで,写真のような感じです.葉は長くないようです.採集の対象になったのは特に低い株だけです.高い株の上部にも同じように居るかどうかは不明です.
 この付近にはオノエヤナギ(セアカヒメオトシブミが巻く)もあります.少数ながらオノエヤナギの雌花についている個体も居ました.

 ゾウムシは一つの穂に一匹か一ペア付いていることが多く,産卵モ−ドのように思えました.♀個体は頭を突っ込んでいて,多少のビ−ティングでは落ちないものもいます.結局,目視して指で揉みおとすような感じで採集しました.雄花でも探してみましたが,全く居ませんでした.雌花に対する食害は目につきませんでした.


オノエヤナギの雌花に突き刺さっているチビデオゾウ




チビデオゾウムシがいる雌花(上)と,いない雄花(下)(なぜか立体写真)

ヤドカリ状態の幼虫

 約1カ月後の5月28日に行ってみると,穂は綿毛をふいたような状態でした.よく見ると,雌花(さく果)は鳥の嘴状に裂けて,中から綿毛を吹きだしています.




1カ月後の雌花穂と花

 幼虫は一匹づつ花の中におり,ピンセットで引きだそうとすると抵抗します.綿毛を引き抜くと,前半身を乗り出してうまく引き戻します.
 取り出した幼虫は下図のように消化管の色が透けて見えて緑色です.後半身を丸めたまま前半身を活発に動かしますが,ヤドカリ状態で,歩くのは下手です.
 花には濃い緑色の種子が2,3個づつできており,幼虫は主にそれを食べているようでした.






チビデオ幼虫と花と種子

繭のような蛹室

 飼育(というか5月28日に持ち帰って放置)していた穂を6月12日にみてみると,綿毛がもっと派手にふきだしており,虫は鞘の中で蛹化したり,綿毛の塊の中で蛹化したりしていました.蛹室がまるで繭みたいです.ただし外側がぼさぼさで,本物の繭のように整った形にはなっていません.
 蛹室には蛹化直前の老熟幼虫も見られました.消化管の緑色が消え,脂肪の黄色が目立ちます.
 6月18日になると一部は早くも羽化していました.穂は土(昆虫マットも混合)の上に寝かしておいてのですが,マットに潜って蛹化したものはいません.


鞘の蛹室


綿毛の蛹室

 6月14日に現地に行くと,穂はほとんど地上に落ちており,おそらく雨でビチョっとなった綿毛とともに地面に貼りついたようになっています.穂の下や周囲を少し探しましたが,幼虫は見つかりませんでした.持ち帰って6月18日に見てみると,鞘から出て穂の中心部に毛球を作って蟄居してる幼虫が数匹見つかりました.上記のように5月28日採集分はすでに一部羽化してますから,飼育分は早く育ったようです.
 それでも6月末には現地分も羽化脱出してきました.そこで7月5日に現地でビーティングなどで採集を試みましたが,成虫は採れませんでした(リンゴノミゾウが多かったです).
 前記のようにヨーロッパでは”土中で蛹化”となっています.氷ノ山のものも絶対に土中蛹化しないとは言いきれませんが,少なくとも一部は鞘の中や穂の周辺で綿毛の塊を作って蛹化するようです.


老熟幼虫と蛹


新成虫

 脱出してきた新成虫は,適当なエサがないというか,ちゃんと世話をしなかったこともあり,硬化することなくほとんど死なせてしまいました.しかし,土に潜り込んだ個体もいて,9月15日に暴いてみると動き出しました.野外でも羽化脱出後,短期間活動をしたあと,夏眠にはいるのではないかと思われます.



1: 氷ノ山東斜面,2:日名倉山東斜面

 この頁の最初の方に記したように,県内でからはすでにいくつかの採集例がありました.そのうちもっとも南のものは日名倉山です.そこで適期をねらって行ってみると(2003年4月22日),やはり,いっぱい居ました.氷ノ山のとちがう感じの木にも潜っていたので,持ち帰って調べてもらうと(ありがとうございました>兄@植物屋兄弟),ヤマネコヤナギだそうです.この時期に六甲山でも少し探してみて,良さそうな木はありましたが,採れませんでした(居ないと確信できるほどではありません).
 他の採集例は音水など氷ノ山東尾根と日名倉山の中間あたりですので,まぁ,上の地図の1〜2のあたりには普通に居るようです.


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沢田佳久