戯歌番外地

                 替歌にみる学生運動
                               野次馬旅団編(1970/6/15刊・三一新書) 
 
     
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「野次馬旅団」さんが収集した替歌の数々、
その中から日大闘争に関するものを転載
 
 
   歌詞  解説  
  日大闘争時代 (元歌「学生時代」)

立看の連なる並木で アジビラを配った日
デモ多かりしあの頃 思い出をたどれば
なつかしいミンの顔が ひとつひとつ浮かぶ
重い旗ザオかついで デモったあの道
下高井戸 お茶の水 神田の三崎町
なつかしいあの頃 日大闘争
万余の大衆が古ダヌキ体制のカラクリに怒って白山通りを埋め尽くした、スバラシイあの頃の歌。

日大の教授連の部屋にはエロ写真、エロ本の山。肩書きがつけばつくほどに質量ともに増していた。もしかすると日大の先生様の位はエロ本の収集量で決まっていたのかもしれない。粋な教授もいたもんだが、エロ本を奥さんに隠れて読めなくなるからといって「バリスト反対」などというと、恐妻家ぶりがバレてしまうだけ。最初は全共闘にいた民青はムッツリスケベなのでエロ本の山を見ると、そらぞらしいツラをして逃げ出してしまった。この歌は、芸術学部と並んで日大教授の影響を素直に受けて、それからの全共闘運動を乱しに乱した(?)文理学部闘争委員会銀ヘル部隊の歌。 
 
 
体育会ブルース
 (元歌「山谷ブルース」)

きょうの仕事はつらかった
あとは部屋へ帰るだけ
どうせ ぢうせ三派をつかまえる
ほかにやることありゃしない

ひとりつかまえ半殺し
帰らぬ昔がなつかしい
泣いてみたって何になる
今じゃ部室がふるさとよ

リンチ終わればそれっきり
お払い箱のおれたちさ
いいさいいさ学園を守るため
8千円もらってガマンしよう

ひとは体育会をわるくいう
だけどおれたちいなくなりゃ
安保すらも結ばれない
エイチャン ほんとにわかってるの
「かわら版」69年4月号より。
日大闘争は、その当初から右翼体育会との鋭い緊張関係の中で進展していった。68年11月芸術学部バリケードを襲った関東軍との熾烈な攻防戦をはじめとして武勇談は尽きない。この歌もこうした右翼のことを扱ったものだが、日大の右翼は正確には"秩序派"ともいうべきもので、それなりの筋目を通すような気骨のある連中ではない。せいぜい、どこの学部の給料が良いかなどとハイエナよろしく当局の財布をかぎまわるぐらいがおちである。もっとも、こんなことは日大に限らず日本の右翼全般にいえることではあるが。 
 
 
古田ブルース
 (元歌「山谷ブルース」)

今日の団交はつらかった
あとは病院へ入るだけ
どうせ どうせおいらは居直るぜ
ほかにやることありゃしねえ

ひとりベッドに寝る夜は
かえらぬ昔がなつかしい
泣いて泣いてみたって 何になる
いまじゃ日大がふるさとよ

会頭おわればそれっきり
お払い箱のおれなのさ
いいさいいさ佐藤がついているぜ
おれをやめさせて何になる

ひとは古田をわるくいう
だけど おれたちいなくなりゃ
中小企業はできゃしねえ
だれもわかっちゃくれねえか

だけど おれたちゃ居直るぜ
右翼はびこる日大が
きっと きっと来るさ そのうちに
その日にゃ笑おうぜ カラ笑い
「かわら版」69年2月号より。
「体育会ブルース」とこの歌はともにフォーク・ゲリラセンスの歌で、本書が中心に据えた60年代学生運動の戯歌とは系譜を異にする。後者は運動からこぼれ落ちたものが替歌になるが、前者では、替歌自体が運動の一環を形成している。
 
 
戦友
 (元歌「戦友」)

A

ここは日大 解放区
元は右翼の 解放区
今じゃ赤旗 たなびいて
音に聞こえし バリケード

思えば悲し 昨日まで
真先かけて 突進し
敵をさんざん ゲバりたる
勇士はここに パクらるか

ああゲバルトの 最中に
となりにおりし わが友が
うしろ手錠で 連れ去られ
我は思わず かけよりて

拘禁厳しき 中なれど
これが見捨てて おかりょうか
しっかりせよと 差入れし
入れた中身は 資本論

B

ここはお江戸を 何百里
はなれて遠き 神大も
ファッショの光に 照らされて
自治も自由も 石の下

折りから政府の 手助けの
大学法案 通ったれば
全国初の 空洞化
近経の砦を 守りたる

くまなく晴れた 月今宵
窓に見えたる灯 唯一つ
うらみの落首 かぎりなく
明日は落城 走馬燈

立入り禁止の 監獄で
職員せっせと 消したるは
反戦思想のラクガキ(@)よ
消しても呪いは 消えはせぬ

折から政府の 攻撃に
進歩派教授は 顔上げて
妻子の為じゃ かまわずに
講義しようと また一人

封鎖解除の その夜に
心ほそぼそと 筆とって
古いノート ごてごてと
デッチあげたる この講義

思えば悲し 昨日まで
まっ先かけて 教官の
欺瞞を散々 こらしたる
勇士の心境 かわれるか

学長これを 見るにつけ
なんであんなに かたくなに
反対したのか 大学法
早速文相に 謝罪文

残り火燃ゆる 109
残党狩りも もう少し
松下首(A)を 切ったれば
文相の感謝が 雨あられ

Aは、日大闘争を扱ったもので、日大全共闘の勇姿をあますところなく伝えている。

Bは、神戸大で出来たもので「朝日ジャーナル」の"学園ハガキ通信欄"に掲載された。全曲では十六番迄あったが、番外篇に収めた「大学の歌」(京大滝川事件を扱ったもの)の剽窃とおぼしき箇所がかなりあり、全体として冗長なので、大学側の対応を中心に抄録した。


































@

「六甲空間」を占拠した神戸大全共闘の落書きは、天下にその名が高い。特に、どの大学のバリケードでも不思議と手のつけられなかった黒板という処女地を開拓した功績は高く評価されている。こうした大学強姦闘争によって操を汚された醜女=大学当局は強姦の首魁の一人松下昇氏を告訴し、一方では夜間ロックアウトで処女膜再生手術を行なったという。














A

松下首――松下昇氏のこと。封鎖解除後も、ねばり強く自主講座運動を組織。当局及び民青学内機動隊の指名手配人物となる。109とは、自主講座運動の拠点となっていた教養部の教室。