…頭はボーっとするし体は節々が痛む…風邪でもひいたのかな。
試合が終わって控え室に戻り、どうにか身支度を整えたクリス・ジェリコは
会場から引き上げようと、体を引きずるように駐車場へ向かおうとしていた。
いつもは難なく担いでいるバッグも、今日はやたらと重く感じられる。
ハードスケジュールには慣れきっている筈なのに、体調を崩した自分に腹が立つ。
「クソ、動け俺の体!」
他の選手は既に引き上げ、人もまばらになった場内で一人呟く。
「だ〜めだ、ちょっと休憩」
このまま車を運転するのは危険だと感じたジェリコは駐車場へと続くドアの前に座り込んだ。
早く暖かいベッドに潜り込みたいとは思うものの、一度座り込んだ足が言う事をきかない。
このままで居た方が楽だと、ストを決め込んだようだ。
足が楽な方を選ぶならと、頭の方も楽をしたがる。
どこかで自分を奮い立たせないとこのまま眠ってしまいそうだった。
ちろん、そんな事をしたら体調が悪くなるばかりか肺炎を起こしかねない事は重々承知である。
が、状況を打破するのは今の彼にとって難しい事だった。
「おい、何してんだ。お前…クリスか?」
黒い髪を垂らした大男が、クリスに近寄りつつ声を掛けた。
「うるさいな。ちょっと休んでるだけなんだから、放っておけよ!」
言う事を聞かない体に苛つき、刺々しい言葉が口から飛び出した。
心配そうに覗き込むブラッドショーを、後悔しつつも睨み付ける。
普段から強気な人間を演じているので、弱った自分を見せたくなかったのだ。
ましてや相手が好きな好きな人間なら、なおさら迷惑を掛けたくない。
「おー怖。我らがロックスター様はご機嫌斜めか?
真っ赤な顔して、熱でもあるんだろ。目も充血してるぞ。」
額に当てられた手を、鬱陶しそうに振り払う。
「やめろよジョン、早く帰れ。」
頼りたい気持ちとは裏腹に、精一杯迷惑そうな顔を見せる。
「馬鹿、愛する風邪っぴき放って帰れるかよ。ほら、送ってやるから車の鍵貸せ。」
内心有り難いと思いつつ、クリスは渋々といった表情でキーを差し出す。
「素直じゃないな、お前は。」
ジョンは苦笑しながらクリスのバッグを自分の物と一緒に左肩に担ぎ、
右手で彼の腕を掴むや否や、その肩に担ぎ上げた。
「おい降ろせよ!誰かに見られたらどうすんだよ!!」
力一杯暴れて脱出を試みるも虚しく、がっしりと腰に回された手が解ける事は無かった。
しばらくは目の前にある背中をドンドン叩いたり、怒鳴ったりしていたクリスだが
体調の悪さも手伝い、大人しくされるがままになっていた。
やがて車にたどり着くと、ジョンは後部座席に荷物を放り込み、
シートを倒した助手席にクリスを寝かせる。
「寒くないか?」
自分が着ていたジャケットを掛けつつ声を掛けると、彼は目を瞑りながら面倒くさそうに頷いた。
そっとドアを閉めると運転席に乗り込む。
「どこまで乗せていけば…おいクリス?寝てんのか?」
クリスを振り返って返事を待ったが、彼は暖かい車内で昏々と眠り込んでいた。
「しょうがない」
ジョンはため息を付き、自分が泊まっているホテルへと車を走らせた。
翌日、クリスはカーテンから漏れる光で目を覚ました。
「うーんと、ここはどこだっけ?」
目をくりくりと掻きながら、まぶしさに顔を顰める。
きょろきょろと周りを見渡し、記憶を懸命に辿るが、やはり見覚えのない部屋である。
とりあえずベッドから出て、隣の部屋を覗いて見ようと起きあがると、
APAと書かれたシャツとアンダーウェアしか身につけていない事に気付いた。
「あぁそっか…俺寝ちゃったんだ。」
何となく納得し、部屋のドアを開ける。
真っ先に目に飛び込んできたのは、ソファで居心地悪そうに眠るジョンの姿だった。
「ジョン、ジョーンー?俺起きたよ。ねえってば。」
ソファの前にしゃがんで顔を覗き込みながら声を掛ける。
が、ジョンは「う〜ん」と生返事をするだけで目を覚ましそうになかった。
「しょうがない、もうちょっと寝かしてやるか。」
勝手な事を言いながら、クリスは食べ物を物色し始める。
冷蔵庫を開けてもビールくらいしか無く、それらしい買い物袋も見あたらない。
もちろん自分のバッグにだって、食糧を詰めているわけがない。
しかし昨晩から何も食べていない事で、胃は食物を要求している。
何か食べないと今度は空腹で倒れてしまいそうだった。
「いいや、ルームサービス頼んじゃお。」
部屋主が寝てるのを良い事に、体が欲するまま電話で注文を始めた。
そっと電話を切ると、彼はテーブルのセッティングにかかる。
エンドテーブルにあった小さな花瓶をテーブルの真ん中に乗せ、椅子を向かい合わせに並べる。
自分はシャワーを浴び、身支度を整える。
と言っても先程のシャツとジーンズを身につけた程度だが。
程なくして料理が到着し、運んできたボーイにチップを握らせ、カートごとテーブルの脇に付ける。
「ジョンー、ご飯食べようよ。早くしないと冷めちゃうよ。冷める前に俺が全部食べちゃうよ。」
「うん…今何時だ?」
寝ぼけまなこでジョンが体を起こすと、既に席についたクリスが上機嫌で料理を眺めている。
「何だそれ、お前こんな朝っぱらからルームサービスなんか頼んだのか!?」
驚いて跳ね起きてもクリスは悪びれる様子もない。
「いいだろ?これ。何かのお祝いみたいで。俺の風邪全快記念。」
罪の無い笑顔を見て、ジョンはつい微笑んでしまう。
ゆっくりとソファから立ち上がると、眠たそうな顔で両腕を拡げるクリスを抱きしめ
小鳥がついばむようなキスをする。
「全快おめでとうのキスだ。」
クリスはそれを聞いて、嬉しそうな笑い声をあげる。
「じゃあ俺からは、ご馳走様のキス!」
ジョンの大きな体に手を回しながら、彼もまたキスを返す。
そしてどちらからとでも無く言い出す。
「愛してるのキスだ」
永遠とも思える濃厚な口づけを交わす。
昨日の夜、あの時間あの場所で倒れて良かったと。
たまたま帰り支度が遅くなって、あの時間あの場所を通って良かったと思いながら。
しかしどんな物にも終わりは来る。
二人の甘いキスに終わりを告げたのは、クリスの腹が発した「グゥ」という音だった。
恥ずかしさで真っ赤になるクリス。
あまりの色気の無さに笑うジョンだったが、クリスの頭を撫でると席についてこう言った。
「さぁ、二人の貴重な一日を始めるとしよう。」
★★★
28日の深夜、チャット中にゆきえさんに頂きました。
文章を書かれると聞き、JJ書いて書いて!!とシツコク言っていたのが実を結んだのです。(笑)
しかも頂いたのは日付変更した29日!ジョンの誕生日!!!嬉しかったですよ〜〜。
いや、モウマジで嬉しかったです。
その渡され方が実にさりげなく、サプライズでかなりビックリ&興奮でした。
残りのチャット、ずっとこの作品読んでにやけながらしてました。(笑)
ラブラブだよ〜〜!じょんとじぇりこがラブラブだよ〜〜!
APAシャツはね、汗だくになってたじぇりこを着替えさせてあげたんだそうですのよ。
きっと、何かないかな〜って考えて、じょんが自分のバックから取り出して着替えさせるんですよ。
そんなの想像してコーフン。
そしてこのアンダーウェアは、thongなのかしら、とかとかとか。(笑)
じょんはかなり紳士ですな!!テキサン的なゴーカイさとその紳士らしさがかっこよ過ぎ。
じぇりこ、まじかわいい!そうそう、こんな感じなんですよ!!!!
強がりで小悪魔で、キュートこの上ない感じ!!
ゆきえさん、高校の頃文章を書かれていたとのことですが、
やはりスゴイセンスあるなあって思いました。
あやうく眠りかけてしまいそうになるところとか、凄いなあって思いました。
本当ゆきえさん、どうもありがとうございました!
大感謝です!!!!!
★★★
2004年明け、サイト改装後、6's追記。
始めて頂いたゆきえさんからのficなんですが、もう何回読み返したことか。
思えばゆきえさんはモロslash!ってな感じのものを書かれる方ではないのに、
それなのによりによってこんなマイナーなカプのものを書いて頂いちゃったんだ、
と今になっては申し訳ない気持ちで一杯です。(汗)
やっぱり、この一番はじめに頂いたficは、思い入れも格別です。
じょん/じぇりこを普及したい!っていう思いももちろんありますけども、(笑)
私以外の方がこれを読んでちょっとあったかい気持ちになってくれたりしたらとても嬉しいと思うのです。