「あ〜、今日は暇だねぇ」
体を思い切り伸ばしながら、ジェリコは傍らのジョンに話し掛けた。
「だな。さっさと引き上げて、家でゆっくりするか。」
欠伸をしながら、ジョンものんびりと返事をする。
「よし、決定。帰ろう。」
ジョンが重い腰を上げて荷物をまとめ始めた途端、
ドアでは無い場所から「ちょっとお邪魔しますよ。」とリーガルが入ってきた。
「おい、ドアから入れよ。」
「ホントに邪魔だよ。」
二人の歓迎ぶりに顔を顰めつつ、リーガルはジョンに向かって用件を伝える。
「ファルークが探してましたよ。何だか試合の事で話したいって。」
ジョンは荷物をまとめる手を止め、
「話ならここに来てすりゃいいのに…」と、丁寧にドアから出て行った。
憮然とするジェリコを見てニヤリと笑うと、
リーガルはまたもドアでは無い場所を選んで「では」と手を振る。
「っだよ、もうちょっと早くここ出れば良かった。」
ジェリコは不満そうに口を尖らせ、大人しくジョンの帰りを待つ。
「今日はゆっくり出来ると思ったのにな〜」などと漏らしながら。
しかしリーガルの来訪をきっかけに、
APAオフィスはにわかに賑わい始めるのであった。

「悪いなクリス、帰るか。」
ようやく帰ってきたジョンが荷造りを再開し、
ジェリコも自分の荷物を片付け始めた。
そこに「ジェリコ、ベノワが呼んでるよ。」とドアから顔を覗かせたのは、フナキ。
今度はジョンが肩を落とし、ジェリコは「すぐ帰るから」と慌てて出て行った。
残されたフナキは済まなそうな顔を見せ、すぐに退散した。

「なんだよ、ベノワのヤツ。急ぎの用事じゃなかったんだよ。」
プリプリと帰ってきたジェリコを見て、今度こそ帰ろうとジョンが促す。
が、またもドアをノックする男が居た。
ノックするといっても、その姿は丸見えである。
タジリは居心地の悪そうな顔で、
「ブラッドショー、スティーブン・リチャーズが呼んでる。」
とだけ言うとそそくさと帰って行く。
ジョンは頭を抱えながら「あの野郎、下らない用事だったらブチのめしてやる」呟いて、
律儀にドアからその大きな体を消した。

「あのガキ、絞め殺してやる!」と拳を押さえながら、
ジョンが帰ってきたのは数分後。
「ロクでもない事で呼び出しやがって、あいつにムカツくのはRTCだけで充分だ!」
などと憤るジョンをどうにかなだめて二人で荷物を担いだ途端、
またもオフィスに人影が。
最初に顔を出したリーガルである。
「お急ぎの所申し訳ないがジェリコ、ハンターが呼んでましたよ。」
暗い顔で「何の用だろ…」とオフィスを出るジェリコ、
荷物を降ろさず抱えたまま椅子に座り込むジョンを見て
リーガルは口の端をピクピクさせながら「では」と、
やはりドア以外の場所から姿を消した。
「せめてドアから出ろ!」
空いたビールの缶を投げつけながら、ジョンはため息をつく。
今日は何かおかしい。
早く帰ってクリスとのんびり過ごそうと思っただけなのに、
次から次へと呼び出される。
確かにロンとは真面目に話をした。
しかし後の呼び出しは何だったのだろう。
急ぎの用事では無いベノワ、下らない話をするリチャーズ。
呼びに来たのは、フナキ、タジリ、リーガル。
一体何の因果で、今日に限って足止めを喰らうのか。

「全く〜、結局俺じゃなくてもいい話だったよ。」
鬱陶しそうに髪をかき上げながら、ジェリコは椅子にへたり込んだ。
「このパターン、まだ続くのかな。」
自分を見上げるジェリコに、ジョンは肩をすくめて返事をする。
「そうなる前に、帰りたいがな。」
しかし当然、またも邪魔が入る。
ギターを持ったオースチンが、ドアを蹴破る勢いで入ってきたのだ。
「よーし、お前らに特別歌ってやる。まずはリクエストにお答えして…」
何の前触れもなく、彼のコンサートが始まった。
「お、おい…」
「リクエストって…」
制止しかける彼らに、オースチンはとびきりの笑顔を見せた。
「お前らが、俺の歌を聴きたいって聞いたからよ。」
思わず顔を見合わせるジョンとジェリコ、
しかし謎はすぐに解ける事になる。
連続呼び出しのスタートとラストを飾ったリーガルが、
物陰で大爆笑していたのだ。
その姿たるや、リングやスキットではちょっとお目にかかれないような代物である。
『まさか…』思わず声を揃えた二人を見て、
ハンカチで涙を拭いながらリーガルは頷いた。
「ええ、今までの全部ウソですよ。あんまり楽しそうにしてたんで、ついね。
退屈だったものですから。良い人選だったでしょう?
呼び出した相手側だって、こんな事になってるとは知らないんですよ。
しかしここまで予想通りに動いてくれるとはね。
久々に面白い物を見せて頂きました。」
悪のコミッショナーを絵にしてみたら、
ちょうどこんな感じに仕上がりましたといわんばかりの笑顔で言いたい事だけ言うと、
リーガルは手を振って立ち去ろうとした。
「あ、お前なに一人で帰ろうとしてんだ、待てコラ!」
「くそ、ふざけんな似非紳士が!」
二人は慌てて席を立ち、互いにいち早くドアから出ようとした結果、
小さな出口にぎゅうぎゅうに挟まった。
それを見てまたも涙を流したリーガルは、
横で「師匠凄いッスねー。」としきりに感心しているタジリをおもむろにドアへと突き飛ばし、
次の瞬間には姿をくらませていた。
「お前も知ってて俺等を呼び出してたのか、あぁ?」
ジョンに凄まれ、タジリも師匠に負けないスピードで姿を消す。
「ニンジャ…」ジェリコは力無く呟くと、怒りのやり場を無くしたジョンに寄りかかった。

急に気が抜け、どちらからともなく、くすくすと笑いが起こる。
「まぁ、いいか。それなりに楽しかったじゃん?」
荷物を背負いながら、ジェリコがドアを開ける。
「そうだな、今から帰っても充分ゆっくり出来るし。」
同じく荷物を背負い、ジョンがドアを閉める。
なんてめまぐるしい一日だったのだろう。
そして自分たちは、なんて様々な人間と関わっているんだろう。
そんな事をしみじみと考えながら、お互いの顔を見やる。
ここで出会えたのは、奇跡的な確率だったのかもしれないと。
「ジョン、思ったんだけどさ、ここで色んな人間が居て…」
懸命に自分の考えている事を伝えようとするジェリコを見て、
ジョンは穏やかな表情で頷く。
「言わなくても解ってる。でも、この先は二人だけの時間だ。」
駐車場の冷たいコンクリートに、
ぴったりと寄り添う二人の長い影が伸びていた。









いえーい!ゆきえさんFIC第5弾です!
しかも今回は私の誕生日に送って頂いたのです!
嬉しかった!

今回は、じぇりこ、じょん、ロンの他に、“ウィリー”リーガル登場です!
何て表に書こうか迷いました。
だんだんJJの世界が広がってきてる!
出てくる人物のチョイスで分かるような、
ゆきえさんの描くWWE世界、私好きなんで嬉しいす!
だけどなんかJJなんていう物凄いマニアックな絡みを
そこに入れて書いて頂くのなんだか申し訳ない。(笑)

私丁度この時ドラフト1週間前のSMACK DOWN見てたんですよ。
で、それがリーガルとAPAの絡みがあった回で、超タイムリーでした。
しかもその時、ドアネタだったんですよ。
ドアネタはゆきえさんのこだわりだそうなんですが、私も大好きです!
いやいやツボつかれました。

しかもそしてね、やはりこのラストの二人。いいっす…
私も解ってるぜ?!みたいな。(笑)ウヒヒ!
とてもヌクい気持ちになりました。
あーあーあー、憎いねゆきえさん&リーガル。(笑)

ええ、この後ゆっくりしていただきまいわ。
ゆっくりもにゃもにゃ、ウヒ。
ゆきえさん!ほんとにどうもありがとうございました!

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