書名 連鎖破綻          

      著者名  香住究               

      刊行日 2003/8/28 ダイヤモンド社

 
 私は、生命保険は怪しいと常々思ってきた。生命保険には入らない。

 怪しさが「清和生命」を舞台とする「連鎖破綻」で解き明かされる。怪しさはこのような所にある。「生命保険の保険料は、純保険料と付加保険料の二つから構成されている。純保険料とは将来の保険金・年金・給付金の支払いに充てられる部分を指す。つまり、契約者自身の積み立てているお金のことだ。一方の付加保険料とは、生命保険会社が保険事業を営むために必要な事業費のことを言う。そこには生保レディへの報酬である募集費や集金費、生命保険自体が存続していくための維持費などが含まれる。−−大型保障商品であり最大の売れ筋である定期付終身保険では、付加保険料の最大35%を超えた。一万円の保険料のうち3500円が、保険会社の取り分である。」銀行で言うところの振り込み手数料が35%の保険商品もあるという事実が怪しげさを感じさせる。こんな手数料を取る業種が他にあるだろうか。それとも小説だから虚構なのか。「連鎖破綻」は元大手生命保険会社課長と元大手新聞社記者の共署である、と記されている。私はこのような数字の部分で虚構があれば、小説のリアリティは失われると思う。

 また、こんな事実も知らされてはいない。「生保レディと呼ばれる営業職員には、契約締結権がない。つまり生保レディが、契約の際に『私が保証します』と言っても、実はそんな権限を彼女らは持っていない。契約締結権を持っているのは、生命保険会社だけ。つまり、生保レディは、契約者と保険会社の仲介者に過ぎない。その結果、契約に際して生保レディが約束したり保証したとしても、それを生保会社自体が認めない限り、『与り知らぬ』ことになってしまうのだ。」

 ほんとに怪しいのである。生命保険は住宅購入に次ぐ人生の大きな買い物である。欠陥住宅については、近頃大きな関心が寄せられるようになった。しかし、生命保険はどうだろうか。

 清和生命がもがきつつ、ついに会社更生手続きを行い、アメリカ合衆国プレジデンシャル生命に引き取られた物語を縦糸に、社長室次長各務裕之や同期の中根亮介の苦悩を横糸に、編まれた企業小説である。この小説を読みながら、教育職場や自衛隊に強かったK生命保険を思わずにはいられなかった。「契約者の幸福を最大の目標に」が清和生命の企業理念である。このような生命保険という特殊な領域、それを示す特殊な経営システムとしての互助会社。日本の生命保険会社は今でも多くが、株式会社ではない。日本の風土のなかで育った生命保険会社は、「日本の生保はペットだって言われている。つまり、彼らは弱肉強食のジャングルでは生き抜くことはできないってこと」といわれているそうだ。日本の生保が「ペット」なら、そのペットに黙って多額の付加保険料を支払い続け、その果てに予定利率を一方的に引き下げられても訴訟ひとつ起こさない日本の契約者はなんと呼ばれればいいのだろうか。

 今でも生命保険に入っている方は、是非、この小説を読んで欲しい。主人公達のかっこよさが鼻につく以外は、読み応えのある「企業もの」である。
楽書快評
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