とある英霊と赤い宝石

 

 

──間に合わなかった!

 凛は自らの失策に臍を噛んだ。

 まさか、あの時間に生徒がいるとは考えてもみなかった。運が悪い生徒は一体どこのだれか……。

 先行していたアーチャーの姿が見える。その足元で倒れている生徒は……。

「おお、アーチャー。死んでしまうとは情けない」

「なんでさっ!」

「ちょっとまてえええええ! なんでそんなネタをしっているのよ、ライダー!」

 こいつは本当に英雄なのかと、今更ながらに疑問に思う。

 倒れているのはアーチャーと同じ顔の小柄な少年。衛宮士郎であった。

「気にしてはいけません。英霊の座にはゲームショップがありファ○コンを売っているのです」

「今時フ○ミコン!?」

「アレは、英霊化していますから」

「嘘を言うな、嘘を!」

「本当ですよ。他にも『バンゲ○ングベイ』や『スパ○タンX』、『マ○ピー』など名作ソフトが英霊化しています」

「ごめん、流石にわからないわ」

 そりゃそうだ、下手をすれば凛が生まれる前のソフトだ。

 というか、同じ年代でも普通は『バンゲリング○イ』など知らない。

「そんな、こんな名作ソフトを知らないなんて! 魔術師ともあろう者が『マイティ○ンジャック』や『たけ○の挑戦状』も知らないのですかっ!」

「普通は知らないと思うぞ」

「くっ、これがジェネレーションギャップといものですか」

「それ以前の問題だ。第一、生まれた年月で言えば10世紀単位で差があるだろう」

「年上のお姉さんは嫌いですか?」

「年上で済ませられるレベルか?

 ──まったく、雰囲気を変えたい気持ちはわかるが、それよりも……」

 そう言うと、アーチャーは倒れている少年に一瞥をくれる

「これをどうする?」

 アーチャーの指摘に、二人が黙り込む。

 衛宮士郎はこのままでは死ぬ。それは確実だった。

「──」

「──シロウ!?」

 凛が指示を出そうと口をあけた瞬間だった、遅れて来たバーサーカーが驚愕の叫びを上げる。

「ランサー……、殺す」

 バーサーカーから、視認できるほどの魔力が吹き上がる。

 彼女のクラスは狂戦士。本来なら理性など存在せず暴れまわるだけの役割。

 激怒のあまり理性のたかが外れ、その力が溢れかえっているのだ。

「バーサーカー、落ち着いて!」

「ランサー……あそこね」

 凛の静止も聞かず、バーサーカーはとび出す。窓ガラスが派手に砕ける。あの勢いで暴れられたらどれだけ被害が出るか、凛は自らの従者に指示を飛ばす。

「あ、ちょっとバーサーカー! えーい、もう。アーチャー、バーサーカーを止めて!」

「ちっ! 仕方が無い、か。了解だ、マスター」

  バーサーカを追ってとび出すアーチャー。まぁ、あちらはアーチャーに任せる事にして……。

「凛、どうするのですか?」

「黙ってて、ライダー!」

 考えたのは一瞬。凛は胸元の赤いペンダントを毟り取る。

「何を!?」

「黙ってて!」

 短い呪文を唱える。赤いペンダントから膨大な魔力が溢れ出す。

 魔力の奔流は倒れている少年に注ぎ込まれ……、手の中からペンダントが転げ落ちた。

「凛!?」

「これで助かったはずよ……。 ふぅ、帰ろうか、ライダー」

 たしかに、少年の胸が僅かに上下を開始していた。まだ顔色は真っ青だが、いずれは血色を取り戻すだろう。

「よ、良いのですか? あれだけの魔力があれば……」

「かまわないって。確かにあれだけの魔力は惜しいけど……」

 何か吹っ切れた、しかし自嘲を滲ませる凛に、ライダーは優しく微笑み。

 

「なるほど、ここでシロウに恩を売っておいて、身体で返してもらうわけですね。

 『へっへっへ、初心なネンネじゃあるめぇし』『やめて、遠坂、イヤー!』『ほーれほれ、身体は正直じゃけんのぉ』と。さすが諸葛凛先生!」

 

「あんたの頭の中にはスポンジでも詰ってるのかああああああああああああああああああああ!」

 思わずガントをぶっ放す凛。あいかわらずひらりとかわすライダーは、そのままピンク色の独白を続ける。

「初心なシロウは凛の毒牙の前に散るのです。女王様のごとく君臨する凛。『ああ、凛様。お慈悲を』『ふふふ、私の靴をおなめ』『はい、凛様』と、ああ、なんと甘美で背徳的な日々」

「勝手に女王様にするなあああああああああああああああああああああああああああああ!」

 真っ赤になってガントをぶっ放すが、やはりひらひらとかわすライダー。

「でも、ちょっぴり憧れません?」

「そりゃ、ちょっとは……。

 って、何言わせるのよっ!」

「いえ、それが凛の本質なんです。さすがは女王様体質。さすがは諸葛凛。さすがは8月のビキンズ」

「なによ、それはっ!」

「いえいえ、全て凛のキャラです」

「勝手に人を変なキャラにするなっ!」

「ふっ、凛はそういう血筋なのです。大丈夫、私が保証します」

「勝手に保証するなぁぁああああああああ!」

 血管が切れそうなほど絶叫する。

「つーか、あんた本当にサーヴァント? その手の発言しかないじゃない」

「サーヴァントでも愛はあるのです」

「愛というより肉欲じゃないのっ!」

「なにげにすごいストレートな表現を。さすがは遠坂の魔術師」

「そんなことで感心するなああああああああああああああああ!

 あー、もういいわ。此処には用は無いんだから、帰るわよ!」

「それでは、私がシロウを送っていきましょう」

「却下」

「何故です! そんなに私が信用できないと」

「どこを信用しろというのよ! だいたい、このまま連れて帰って何をする気?」

「そりゃ、朝まで二人でしっぽりとくんずほぐれずのライダールートで」

「却下よ、却下! 大体、貴女それじゃヨゴレルートと変らないじゃないの」

 決して声の大きいわけではないその一言に、ライダーがガーンとショックを受ける。

「そ、そんな……言われてみれば確かに。

 この私が──ヨゴレなんて。私はクールで上品で美人な年上のお姉さんで、ヨゴレは彼女の専売特許じゃ……」

 よほど衝撃だったのか、ライダーは呆然とぶつぶつと呟く。

「勝手な事をいっているわね」

「いえ、世間一般の私への認識は、クールで上品で有能で美人だけど、ちょっぴりドジで甘えん坊なお姉さんで通っています。あ、でもちょっぴり妹属性もありますね」

「増えているわよ。

 でも、それが本当ならこのSS作者は後で首を吊らなきゃダメね」

「メタ発言はダメですよ。あんまりやってると見捨てられます」

「それもそうね、で、帰るわよライダー」

「わかりました、これ以上のイメージの低下は私も避けたい」

 どこか未練がましく倒れている士郎を一瞥すると、ライダーは凛に続くのだった。

 

 もっとも、妙にげっそりしてボロボロのアーチャーと必要以上にニコニコとしているのバーサーカーと合流する頃には……。

「そんな、私が見ていない間にあーんなことやこーんなことを、野外プレイですかっ!」

「ふん、どうかしらね」

「ひどいです、アーチャー。私という者がありながら。私だったらそんな小娘よりも経験が豊富!」

「誤解を招くような発言をするな、バーサーカー。 って、ドサクサにまぎれて何を言っているのだ、ライダー!」

「ふっふっふ、何やっていたの。アーチャー」

「り、凛。な、なぜ腕が光っているのだ。 って、ライダー。短剣をなぜ構える!」

「ふふふ、アーチャー。またしようね」

「って、こんな状況で抱きつくな! 誤解を誘発するような発言をするなっ! イリ……じゃなかった、バーサーカー!」

「この、エロ学派がー!」

「それは、どこぞの病弱絶倫メガネだ、……くぁwせdrftgyふじこlp!」

 飛び交うガント、炸裂する宝石。もしかすると、聖杯戦争前にマスターに殺される史上初のサーヴァントは自分じゃないかなーと、アーチャーは思うのだった。

 しかし、この連中が聖杯戦争を真面目にやる気があるのかどうかは、甚だ疑問である。

 

 

「ところで、凛」

 先程よりさらにボロボロになったアーチャーが口を開く。サーヴァントなので外見の傷など瞬時に直せるのだが、直すような気力が無いらしい。

「なによ!」

 一方こちらは凛、かなり不機嫌そうだ。

「3m以内に近づかないでって言ってるでしょう、不潔」

「だから、君が思っている類いの行為など無かったといっているだろう。彼女はああいう悪戯が好きなのだ。それにライダーの性格がアレなのは君も分っているだろう」

「ふーん、彼女ね」

「違うといっているだろう」

 思わず天を仰ぐ。見えるのは遠坂邸の居間の天上。ちなみに、ライダーとバーサーカーはこの部屋に居ない。さっさと戦略的撤退をしてしまった。

 敗走が出来ない身も大変なのだ。

「大体、あの短時間で何をしろと。暴れるバーサーカーを取り押さえるだけで精一杯だったのだぞ」

「取り押さえるついでにいかがわしい行為に及んだと」

「だから、何もしていないといっているだろう」

 全くもって取り付くしまもない。

「凛よ」

「なによ、スケベ赤毛」

「だから……、もういい。

 ──前に持っていたペンダントはどうしたのだ?」

「ふん、貴方になんて関係ないでしょう」

「まったく……。

 ところで凛、戻る時にこれを拾ったのだがな」

 そう言うとアーチャーは懐から赤い宝石のペンダントを取り出す。

「大切な物なのだろう」

 凛の手の中に赤い宝石が戻る。

 呆然とアーチャーを見上げる。そこには優しげで寂しげな微笑があった。

「あ、ありがとう……。

 って、3m以内に入るなっているでしょう!」

 反射的にガントを撃ちこむ。さらに、小足払いからの正拳突き。

 壁まで吹き飛ばされるアーチャー。

「ぐふぉ……。凛よ、自分のサーヴァントにここまで無意味に攻撃を加えるマスターなど、多分君以外いないぞ」

「し、失礼ね。乙女の操を守る為よ! 5m以内に近づくんじゃないわよ!」

「距離が増えているが……、それでどうやって護衛しろと。

 ……ところで凛、あの赤毛の小僧──エミヤシロウはどうした?」

 むくりと立ち上がるアーチャー。ダメージはそれほどでもないらしい。単になれているだけかもしれないが。

「え? なんでそんなこと聞くの?」

「ふむ、あのランサーが戦闘を中止してまで目撃者を消しに向かったのだぞ。どうやら君はあの小僧を放置していったようだが……」

 アーチャーの言葉に、凛の表情がめまぐるしく変る。

「……しまった、そんな奴ほっておくわけなじゃないの!

 アーチャー、出かけるわよ!」

 慌ててとび出す凛。アーチャーもそれに従い……。

 

「何やってるのっ! あんた達はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 思わず叫び声を上げる凛。

 玄関先には、ちゃっかり待機していたライダーとバーサーカーの姿があった。

 それは、まあいい。

 しかし、なにやら改造のしすぎで原型のわからないバイクにまたがったライダーと、バイクのサイドカーにちょこんと乗るバーサーカーの姿にはツッコミを入れないわけにはいかなかった。

「凛、夜中に大声は近所迷惑だぞ」

「うるさいっ! それよりそのバイクどこから持ってきたのよ!」

 凛はもっともなツッコミを入れる。しかし、そのツッコミに対してライダーはと言うと。

「これですか? 私の宝具です」

「嘘言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! どこの世界にバイクを宝具としている英霊がいるのよ!」

「何を言うのです。世の中にはバイクを武器だと言い放って激流に浮ぶイカダに乗っかる学生もいるのですよ!」

「どこの世界よ! どこのっ!」

「どこかのですよ、彼らは日本男児として闇の世界と戦っているのです」

「知るか、そんなのイカレた学生なんて! というより、それとこのバイクは関係ないでしょう!」

「関係ありますよ。未来の英霊の中にはバイクを武器とする英霊がいてもおかしくは無いでしょう」

「なんで未来の英霊が古代ギリシャの豊胸術なんて知っているのよ!」

「意外と細かいところ覚えていますね」

「忘れるかっ! で、そのバイクはどっからちょっぱって来たのよ!」

「ちょっぱるとは失礼な。知り合いのおじいさんから借りてきたのですよ」

「なんでサーヴァントに知り合いなんているのよ! 最近召喚されたばかりでしょう」

「いえ、昨日知り合って今日借りてきたのです」

「なんでさっ!」

「美人は特ですね」

「それで済ますかぁぁぁぁぁぁ!」

 凛が絶叫を上げる。横では顔を青くしたアーチャーが呆れて見ている。

「まぁ、細かいところは気にしないで下さい。この子なら目的地まですぐですよ」

「ほんと?」

「保証します。こう見えてもライダーのサーヴァントですから」

「まぁ、いいわ。いろいろ腑に落ちないけど時間が大切ね」

 そう、何か見逃してはいけない何かを忘れている気がするが、ともかく今は衛宮士郎をランサーの襲撃から守るのが先決なのだ。

 無関係の一般人を巻き込むなど、遠坂凛の矜持が許さない。

 凛はとりあえずサイドカーに乗り込もうとして……。

「私はどこに乗ればいいのだ、凛よ」

「あ、アーチャーはそこに」

 そう言ってライダーが指さす先には、縄でくくりつけられた自転車、その名も自転車2号が。

「ちょっとまてええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 魂の限り絶叫するアーチャー。

「アーチャー、夜中に大声は近所迷惑よ」

「私に死ねと言うのかっ!」

「大丈夫です、アーチャーは密かに屋根を突き破って落ちてきても平気なギャグ体質!」

「人を変な体質にするなっ! というか、この自転車はどこから持ってきたっ!」

「あ、これは土蔵に放置されていた自転車を勝手に」

「どこの土蔵だっ! 人の家の物を勝手に持ち出すのは犯罪だぞ!」

「いえいえ、この機に2号を亡き者にしておけば、1号は私のものに」

「ならん、絶対にそうはならん!」

「どっちみち、1号も2号も私のものになりますから、気にしてはいけません」

「強奪宣言かっ!」

「永久就職ではどうでしょう?」

「何を言っているのだっ! 君は!」

 なにやらすごい勢いで言い争うサーヴァント。端から見ている分には面白い漫才だが、時間が無いのも事実だ。

「アーチャー、時間がもったいないわ。その自転車に乗って!」

 そう、だからアーチャーを自転車に乗せるのはマスターとして冷静な判断なのだ。

「凛よ、顔がニヤついているぞ」

「そう? でも、時間が無いのは事実よ」

 そう言うと、左手をひらひらと動かす。令呪を使うと暗に脅しているのだ。

「命令よ、アーチャー。その自転車でついてきて」

「……了解した。地獄に落ちろ、マスター」

 そう言うと、アーチャーはしぶしぶと自転車にまたがる。その表情は、なんだか達観している。

「それでは、行きますよ」

 ライダーはバイクのエンジンに火を入れ、その魔力をバイクに流し始める。

 目覚めた機械の心臓は轟音を上げ、貪欲に酸素と油を喰らい始める。

「あ、ところでライダー」

 不意に、バーサーカーが声をかける。

「免許あるの?」

 

「ありませんよ」

 

 その一言に、サイドカーの二人が一瞬沈黙して……。

「先日召喚されたばかりなのに、どうやって免許を取れと?」

「降りるー! むしろ降ろしてー!」

「いやー、運転変りなさいよ。ライダー!」

 

「もう遅いです。

 ──騎手の手綱(ベルフォーン)!」

 

「ほ、う、ぐ、っ・・・・ヵ・・・・・ぅ・・・・・ぁ!」

 

 ドップラー効果を残して、女性3人が乗ったバイクは消えていった。

 

「ふっ、愚かな」

 

 サーヴァント・アーチャー、真名は■■■。スキル真眼を持つ男。

 ちゃっかり縄に切れ目を入れていたアーチャーが、自転車にまたがり一人寂しく勝ち誇るのだった。

 

 

続く……といいなー。

 

 

 

 

おまけ劇場 〜劇場版・不思議の島のワカメ(予告編)〜

 

南の孤島に漂着(放置)した間桐慎二は、その日運命に出会う!

 

出会い……

慎二「青い空、白い砂浜、透き通るような海。そして降り注ぐ太陽!

   でも、僕は一人(´・ω・`)ショボーン」

ワカメ「フハハハハハ! よく現れたなメイガス。 我は腑海林アインナッシュ──」

慎二「まさか、死徒!?」

ワカメ「──の、従兄弟の父親の母親の姪っ子の孫の叔父の叔母の従兄弟のはとこの姪の甥の従兄弟の飼っている犬の元の飼主の兄の嫁の弟だ!」

慎二「それって、他人と言わないか?」

 

契約……

ワカメ「契約するのだ、汝が我と契約をすれば、伝説のワカメ魔術を授けよう」

慎二「(・∀・)イラネ」

 

宿敵……

師匠「タイガールートをつくる為、悪のワカメを打ち砕く。この英霊■■■、型月の輝きを恐れぬのならかかってこい!」

弟子「ししょー、月なら無敵超人じゃないっすか!?」

師匠「気にしちゃいかんぜよ、弟子よ! 人間爆弾にはなりたくあるまい」

弟子「ういっす。了解っす!」

慎二「(目を合わせないようにしよう……)」

 

別れ……

ワカメ「ぐふぁっ!」

慎二「ワカメ!」

ワカメ「ふっ、俺はもうだめだ。お前は最強のワカメだ、ナンバーワンだ! ワカメの誇りを思い出せ!」

慎二「ワカメぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

そして、愛……

マーボ「慎二……貴方を愛している」

慎二「お前が言うなあああああああああ!」

蟲爺「慎二……貴方を愛している」

慎二「だから、お前も言うなあああああああああああ! ってか、なんで此処にいるお前ら!」

蟲爺「ところで慎二や、メシはまだかのう?」

 

 

大スペクタクルで贈る超大作! 制作費100億$(おもちゃ銀行)

この夏最高の冒険活劇

 

『エミヤえもん

 シンジと海底若芽城』

 

慎二「最初とタイトルが違わないか?」

アングラー「まてっ! なぜ私の名前が出てくるのだ!?」

 

製作中止!

果報は寝て待て!!