1月8日(日)

この日は久しぶりに、ある方面へ向かうことにした。

もう随分と長い間、自分の中で封印してきたポイント。

今日はおよそ10年ぶりにそこへ行く。


今までその場所をあえて遠ざけてきた理由は幾つかある。
それは、そこがメジャーだとかレアだとか。
材が多いとか少ないとか。
オオクワガタが居るとか居ないとか。

別にそんなことじゃない・・。




 9:55

本日快晴!
今日は風も穏やかで、絶好の散策日和だ。

目指すエリアは決まってはいるが、いきなりそこへ行くのは面白くないし、また時間も半端になってしまうので、この日は少し離れた所からスタートしてみることにした。
とりあえず、たぶんダメだろうポイントなどを少し散策してみる。

空き地に車を止め、準備完了。

林に入っていくと、直ぐに視界の隅をちょろちょろと動くものがある。
まずは二ホンリスのお出迎えだ。
長年山梨に通っていて、こんな至近距離でリスを目撃したのはもしかしたら初めてかもしれない。
前方約15mくらいの距離感で、2匹のリスがこちらを警戒しながらピョンピョン跳ね回っている。
とても愛くるしい^^
聞くところによると今ではかなり個体数が減っているようで、多産地などでも中々姿を見ることが難しくなってきたらしいので、こんな所で遭遇するとは幸運である。
今日はなにかいい事がありそうだ。
画像に収めようとしたが、動きが早く全然オハナシにならなかった^^;;;


少し気を良くしつつ、先へ進む。

すると今度はいかにも・・という地帯に入ってくる。
こういうところは苦手だって、いつもあれほど言っているだろう・・。

ふと気付くと、衣服には奴が居た!



 けっこう大きめ?

ふざけんな!!

このダニエル地帯を早々に切り抜ける。



そしてそのまましばらく進むが、このエリア・・どうもぱっとしない。
ここは何となく、オオクワガタの生息域とは少し違うような気がする。

クヌギはあるし、朽木もそこそこ点在している。
割ればコクワも少なからず出てはくる。
でも、違う。
何が?と言われても説明は出来ないのだけれど、この山にオオクワは居ない。
行けども行けども、そんな気がして仕方がないのだ。
アルテ流オカルト採集術的にいうと、「呼ばれてない」状態というところか(笑)
もっともここは元々「たぶんダメだろうポイント」なので、始めからそんなに期待はしていなかったのではあるが・・。


倒木の上に腰掛け、朝買っておいたおにぎりを齧りながら遅い昼食で作戦タイム。
どうしようかと考えたが、結局この場は移動することとし、筋を変えて目的の方面へ向かうことにする。
今日は(も)遅スタートだったので既に日は西に傾き、時間はもう幾らも残っていない。

途中、幾らかの材を確認しつつ、とはいえオオクワが出る程の物
もなく。
いよいよ本日の最終目的地、核心のエリアに入ってきた。


辺りを見渡すと、思ったとおり誰も人の入った形跡は無い。

真っ先に目に留まったエノキの立ち枯れは、朽ちてから既に相当な時間を経過していると思われ、分解者によってその材全体を完全に侵食されていた。
手を触れた途端、一瞬にしてパラパラと粉になってしまった。
過湿による劣化もないだろうことから、もしかしたら5年くらい前ならオオクワも居たような。
そんな気のする立ち枯れだった。


そして、その横にもエノキが生えている。

こちらは、ただの枯れ木か・・。















あ”っ!!










何の気なしに通り過ぎようとした立ち枯れの側面に、紛れもないオオクワガタの脱出口!
大きさと形状からして、間違いなくメスが抜けた跡であろう。
昨年の夏か、若しくは一昨年の夏か。
一足遅かった。

なんてこった・・

と思ってみたところで、もはや後の祭りである。

そういえば、昨シーズンも丁度似たような状況で同じような経験をしたことがある。
その時も確かこんな立ち枯れから空の蛹室を4つほど確認し、しかしそれは全ても抜けの空だった。

またかょ・・


いちおう中も確認してみるが、当然・・

 お留守です

何も居る訳はない・・。


ちょっと悔しいので、この蛹室に続く食痕でも調べてみようとこの材を割ってみることにする。
しかし、これより上部は腐朽が進んでかなり柔らかくなっており、そこにはコクワともオオクワとも判断のつかない食痕が幾重にも重なり合い、既にボロボロになっていた。
丹念に探してみたが、結局その他の蛹室等は確認できなかった。


残念だが仕方がない。
手遅れなのは判ってはいるが、それでも下部はどうなっているのかもう少し調べてみる。

そこは、こんな感じになっていた。










おおっ!
下にも食痕あるじゃん!!


そこには、おそらくオオクワガタに間違いないであろう食痕が数本走っていた!

そしてそれは、下部に向かってもう少し割り進んでいくに従い、意外にもすばらしい変貌を遂げていく。














 極太&古い!


これを見た瞬間、この食痕を作った主が成虫になっていることは確信した。
ただ一つ心配なのは、上部に居たメス同様既に抜けてしまっているかもしれないということ。
昨年の二の舞い・・が一瞬脳裏をよぎるが、しかしこの立ち枯れの周囲を丹念に調べてみても、先ほどの脱出口以外の穴が開いている様子はないのである。

キタ・・!!

高まる期待に胸膨らませつつ、いよいよ最後の仕上げに入る。
この食痕の先にあるであろう巨大な空洞をイメージしながら、慎重にひと割り・・ふた割り・・


そしてついにポコッと穴が開き、その中からオオクワガタのオスの大腮が見えた!!

















【 その時の状況を、動画でご覧頂けます 】






 仮死状態


おおおぉ・・!
やった!!!



 ♂59mm中歯型

食痕の太さから想像していたよりは大きくない、オオクワガタのオス。
60mmにも届かない全然大したことのない個体だが、オスであればどんなものであれ、やはり嬉しいものだ^^
年末の割り納めからなぜか続けてオスの成虫に辿り着けてはいるにせよ、しかしそれはそれぞれに別々のプロセスや思い入れがあり、そしてそのどれにも感動的なドラマが沢山詰まっているのである。



しばし勝利の余韻に浸り写真や動画のチェックなどをしていたが、気持ちも落ち着いてきたところで再び仕事に取り掛かる。
辺りは既に薄暗くなってきており、急がねば日が落ちる。

この蛹室の少し横から別の食痕が下に向かって延びているので、それを慎重に追い掛ける。
ただそれはストレートに走っているのではなく、互いの食痕を避けるかの如く螺旋状に絡み合うように進んでおり、叩き場所の予測が難しい。
まさかここまできて短気を起こし、「成虫真っ二つ!」なんて悲劇は何が何でも避けなければならないので、時間を掛けて丁寧に剥がしていく。

そして程なく、ついにポコッと穴が開く。

もちろん、中から見えているのはオオクワガタのオスの大腮。
しかも今度は大歯型である!














やった!!

一頭目の個体が50mm台の中歯だったことから、おそらくコイツは62〜3といったところか。

手袋をしているとアゴを掴めないので、素手になり引っ張り出すことにする。





【 その時の状況を、動画でご覧頂けます 】






な、なんじゃコリャ〜〜〜!!




 ♂68mm大歯型

穴から引きずり出された個体は、自分の想像の遥か上をいく超大物!

このクラスは多産地でさえそう多くは輩出されないし、ましてや自身の手で見つけるとなるとそれは困難を極める。
また、私のようにただの道楽でやっている半素人が手に出来る確率など、僅か1%ほどもないだろう。
しかしそれは、こうして突然やってきた。

ついに山神は降り立った!


ス、スゲェーーー!
やったぞ・・!!








ここで完全に日が落ち、暗闇の中、この後は手探りでのチェックとなった。

大歯の居た裏側の辺りが気になったのでちょっと剥がしてみると、食痕とともに再びポコッと穴が開き・・

なんとそこには3頭目!





 ♂58mm中歯型

(暗闇のため動画はありません)

よ、よっしゃ!!


ほんとうに信じられない成果であった。

そして、ここで日没サスペンデッド。
既に林の中は真っ暗で、もう手元も見えなければ帰り道も覚束ない。
これでこの日の採集を終了することとした。

月明かりを頼りに林の中をなんとか歩き、このすばらし過ぎる成果をもたらしてくれたお山を後した





しかし、このポイントを10年寝かせた結果がこんな結末を迎えようとは・・・
自分自身、まさか夢にも思っていなかった。

今になって思えば、そんなに長くここを封印することも無かったような気もする。
ただ、そうしなければならなかった理由も勿論ある。
それは、ここがかつて虫友と一緒に開拓をした山だからである。
そしてその後、その虫友が採集を引退してしまったため、必然的に私もここへ入る事が出来なくなってしまったのだ。

もっとも、このポイントは元々私が案内した場所なので、いつ入ろうと私の勝手・・という考え方もあるにはあった。
だがもしその虫友が採集を復活し、再び一緒にここを訪れるようなことがあった時、私の割り痕がアチコチに付いていたらその虫友はどう思うだろうか・・
そんな事を考えると、自然とこの山から気持ちが遠のいたのである。


一緒に開拓をしたのなら次に来るときも当然一緒というのは当たり前の話で、
また、許可も得ず人のポイントに勝手に入ったり、誰かに喋ってしまったり、なんてことは論の外。
キレイ事かもしれないが、そういうことをキチンと出来ずに周囲からの信頼を失い、そして孤立し、やがて消えていった採集者を、私はこれまでもう何人も見てきたのである。

その虫友は残念ながら、その後ついに復活することはなかった。
なので10年は少し長かったかもしれないが、ただ自分の中のケジメとしてそれくらいの時間も必要だった。

ただそれだけのことである。


でも、こんな結果がついてくるのであれば、やっぱりそれは間違っていなかったよな・・・














本日の成果
 オオ 成虫3♂



2012年の記事 MENUへ