行きあたりばったり、バスのノンキ旅
僕が脳梗塞で片麻痺になってから、人生いろいろの面で変わりました。
その一つに、旅の楽しみかたがあります。当然と言えば当然ですが、病気になる以前は、若くもあったし、好奇心に任せてマイカーで国中を走ったし、海外旅行もしたし、エピソードもたくさん作りました。
自分がマイカーを持つなんて考えもしなかった時代が、昭和40年代になって日本にもカーブームが起きて、関西の会社の人たちと一緒にプロジェクトを持ったときも、わざわざ自分のサニーを駆って出来立ての東名名神高速道路で明石市にも度々夜行ドライブをしたし、丁度開催された大阪万博にも車で行って粋がったりしました。
手を挙げて赴任した北海道でも、休日には、車で長距離も平気で運転して観光地はほとんど巡りました。
ところが、片麻痺になって、幸か不幸か、1種2級の身障者手帳の身になったことや、車のゴールデン免許も回転ジグ付き条件で新たに引き継げたものの、この年になって、もし事故ったらという自分や家族の心配を考慮して、もう自分には身を削る運転免許は必要ないと思い返上しました。
しかし、元来温泉好きの上に片麻痺の緩和のための温泉リハビリ効果も期待できるので、家計を乱さない程度の温泉行脚が欠かせません。
名だたる温泉は大抵山の中にあります。北海道でも内地でも、JR駅を降りたら歩いて5分などという温泉は私の知る限りでは、三沢くらいで稀ですから、車が便利は分かっていますが、負けず嫌いではありません、車が無くても気の持ちようです。
フンダンにある時間でバスを使って、安上がりの自由な旅を楽しむことだって出来るのです。
忌まわしい後期高齢者などと呼ばれて、長年務めた会社の健保を追い出される羽目になり、去年サヨナラ記念にまだ行っていなかった保養所の連泊旅をしました。
先ず、加賀温泉郷のうち片山津温泉にある保養所へ行くのに、鎌倉駅前から夜9時発の夜行特急バスで金沢駅に。
何よりも旅費が安いし、着いた先も便利だし・・・。
一段と背が高くて大きい車体の高速バスは、片麻痺の自分には手摺に捕まって運転席横の階段をよじ登るのも大変です。トイレも付いているけれど、客室から降りる狭い階段は夜中にトイレに降りると、アリ地獄のように客室に戻れなくなって途方に暮れる姿を想像して敬遠です。
また、夜行バスの高速走行の振動音は相当なものですが、朝6時にでっかい赤いゲートモニュメントがある金沢駅に着きます。あらかじめ計画したとおり、朝早い普通通勤電車で1時間、景色を眺めながら加賀温泉郷駅に。
それでも朝早いので、駅前はまだ眠っています。
駅前から出るキャン・バスという温泉郷循環観光バスは、海回りと山回りの2系統があり、それぞれが一回り1時間程度で約20ケ所の観光地バス停を回っていて、駅前で乗り換えることができます。
1日券が1,000円、2日券が1,200円で乗り降り自由ですから、時刻表に合わせて行きたいところを選んで、スポットを回ることができます。健脚の人なら徒歩を併用すれば行動範囲はズーンと広がるでしょうが、杖に頼って歩く私にはバス停と至近見学箇所までの歩きがやっとです。
目的の加賀保養所は片山津温泉の前の柴山湖の対岸にあり、片山津温泉の外れの中谷宇吉郎記念館キャン・バス停から1km強ですから、キャン・バスで行ってそこでタクシーを呼んでワンメーター位で行くのが一番です。
駅からタクシーだと3,000円以上だと誰かが言っていました。
こうして、一日目は海回り、二日目は山回りを使って、日本百名山の深田久弥山の記念館をはじめ、北前船記念館、中谷宇吉郎雪の記念館、北大路魯山人の寓居いろは亭、那谷寺などを巡ることができました。
まだまだ、見るところは沢山あるでしょうが、これで満足です。
これほどの無案内の広い範囲をマイカーで巡ることは、近頃のカーナビがあっても、駐車場などを考えると、とても出来ないだろうと思いました。
温泉だらけのこの地でも、毎日保養所の温泉が使えるので、街の温泉に行かないで済むのは助かりました。
おまけにシーズン・オフのこの日は保養所の来客は、自分たち夫婦だけ、節電の折り柄、男湯だけ用意して家族風呂仕立にしてくれました。僕たちだけですから、不要な照明を消してくれるように頼みました。2日目はもう一組み増えたので、別々の貸し切り風呂に。思わぬハップニングです。翌日の休日は満員だそうです。
金沢から帰る日は朝10時過ぎのJRに乗って再び金沢駅に着き、バスで兼六園下に行き、金沢城址公園の石川門などを見学し(自分は休憩所で昼寝)、兼六園を杖で歩いて見学し(連れには申し訳ないが、歩きに楽な下り道だけを選び)、兼六園出口にある有名な金沢21世紀美術館を駆け足巡り(杖付きの駆け足はないが)出来ました。
駅に帰って夜の9時に出る夜行急行バス時間待ちで、金沢駅内で夕食を取りました。ここで残念、大失敗!
最初にインターネットで調べていたビル上階の食堂街に行ったのが運のつき。美味しくもない在り来りの弁当に手を出した後、1階の商店フロアーの奥に、賑やかで美味しそうな一大大衆食堂街があるのを見つけました。
地元のカニや魚の寿司や料理、焼き鳥の店や、土地の惣菜、沢山の店が昭和の祝日の賑わいを見せているではないですか! 唯一つ、悔いが残ったこのバスの旅、もう一度あの金沢の食堂街に行こうかな〜、行きたいな〜♪
(2012年4月3日)