スケッチ旅行帰ってから写真で絵を制作する
三宅 明画伯写真で楽しむ風景画

先生のお手紙から

 旅行に出ますと一日に36枚撮りフイルムで2本くらい写真を撮ります。
写生は午前1枚、午後1枚くらいです。一枚についやす時間は2時間くらいです
から、
もっとたくさん描くこともできますが、毎日のことですから、あまり熱をあげないこ
とにしています。
 旅行から帰ると、家にこもって、旅で撮った写真を見て、朝から晩まで、日がな
一日絵筆を
とってゐます。
 毎日写生に出かけることなど、とても出来ませんが、写真を使えば、それこそ
毎日画くことが出来ます。画くことになれることは、たいへんよい手段です。
 ヨーロッパ旅行は、たいてい2週間です。しかし、300枚から1,000枚くらい
の写真を撮って帰れば、年6ヶ月間はたっぷり遊ぶことが出来ます。
 こうして毎日画いて居りますと、絵そのものは、本質的に変わるものではあり
ませんが、
技術、速度はどんどん進歩いたします。
 皆さん、なんといっても、いくらも画いて居られません。なまけものです。
もうちょっと精をだしてください。
 そのうちに、何でも上達すればするほど、はげみになって、ますます上達する
ものです。


先生はスケッチ旅行のお話で、写真を撮って来ると簡単に仰っていますが、先生の数多い写真を
拝見しますと、画家としての絵を描く目で写真の構図をきめて撮影されているのが分かります。

また、写真のポイントとして、絵にしたとき重点にしたいところを決めて撮られているように
感じます。あつらえ向きの人物が居るとは限らず居ても刹那ですから、どの絵にも後から
    追加したい人物像が欲しくなります。モデルになりそうな動きや表情がある人物写真を
数多く撮っておくと役に立ちます。


その1

上の絵は10号大の絵を
2L大の写真プリントに
したものです。中世を思わ
せる古い街並みの中に
今も人が生きている、と
いうことが表現したかった
ので左上や中央の部分に
アクセントを置きました。
下はヨーロッパでよく見る
古い街並みの写真です。
現場では赤い屋根の重なり
の中にも左上の木立や
中央下から右手上の方に
向かう生活の匂いが残った
ような空間が面白かった。


2008/8/4記
その2
 画家の目は、何の変哲もない
ように見える風景を、すでに絵
の構図でスナップ写真にしてい
る。

 多分、ブルゴーニュ辺りの
家と思われるが、家の周りを樹
木で囲った、極めて日本風な
佇まいに感動されたのであろ
う。
家の配置と構造の描写に気分
が良く出ていると思う。
山は安定感があるようにデフォ
ルメされているし、手前の畑も
花の季節を思い起こしたもので
あろう。写真を使って描く楽し
みである。


2008/8/23記


その3
この絵の場合も、写真を撮った
時、すでに絵の構図になってい
るのは天才的である。

先生は「君たちは怠け者だよ。
いくらも描いていない」と仰る通
り、10号大の絵を殆ど毎日、描
いておられるくらいに励んでお
られるので、直感的に写真で
絵を描かれている様に思う。ま
ねをしようにも、とても生徒たち
の及ぶところではない、という
心情である。

ともあれ、経済が許せば、先生
の毎年の取材旅行にご一緒し
て、現場での先生の目を学ん
でみたいこと、しきりである。
国内の現場では、先生は「画
家の目」を見せられることは滅
多にないようだ。


その4
この絵を拝見しますと、単純明
快先生がお城の美しさに惹か
れているのが分かります。
前景の森の処理、川の処理が
適度になされています。
特に、わたしどもは直ぐ船を描
きたくなるものですが、描いた
場合描かない場合は・・・・・と
考えるとよく分かります。

それと、驚くべきは写真に記録
されているカメラの日付です。
現場の写真から絵が出来上が
るまでが僅か2ヶ月足らず、取
材の旅から帰られると直ぐに、
次々に絵を楽しまれているの
が分かります。冒頭の先生の
お手紙にもあるように、毎日絵
を描いておられるという意味が
わかります。


2008/9/14記


その5
画家がおぞましいアウシュビッ
ツをお訪ねのときの図です。
これを見ても写真撮影の段階
ですでに絵になっているように
思います。


2008/9/21記