お久し振りです舘野泉さん

 先日1110日のこと、NHKの朝の番組、ご存知「朝一番」にピアニスト舘野泉さんが出演された。

 もう8年前になると思うが、舘野さんはヘルシンキでのコンサート中のステージで脳梗塞に襲われたと聞いた。
今から6年前の2004年に、偶々僕が、舘野さんと同じ病気で倒れて入院中にそれを知った時、もう2年が経っていて、舘野さんは既に「左手だけのピアノ演奏」に取り組んでおられるようだった。

僕は早速インターネットで、舘野さんのファンクラブのサイトなどの氏の演奏の動画や、エッセイ集「星にとどく樹」を読んだりなどはしているものの、肝心のコンサートに伺うことも出来ずにいるが、久し振りにテレビでお目にかかって懐かしかった。

 偶々だが、僕は舘野さんと同い年だが、僕如きが気易く「舘野さん」などとお呼びして大フアンになったのを、お許し頂きたいには、こんなエピソードがあった。

僕が仕事で赴任していた、北海道札幌市のお隣・恵庭市の市民会館で「舘野泉と素敵な仲間のコンサート」が開かれることになった。地元の親友春夫さんから「恵庭市有志の実行委員会のメンバーは女性ばかりだから、テッチャン司会を引き受けてくれないか」との突然の電話だ。春夫さんはその有志の会の唯一の用心棒だという。「自分でやれば」と言ったが「いや地元でないほうがいい」とかなんとか、結局押し付けられてしまったのである。春夫さんは作家の小檜山 博さんのファンクラブ「博酔会」を主宰している地元の文士・文化人の飲み友達だ。

その時の演奏会や司会のことはほとんど忘れてしまったが、世界的なピアニスト舘野泉さんをお招きしての手作り手弁当の「ノルディックライトin ENIWA」の会で、「素敵な仲間」の若い女性オーボエ奏者のヘレン・ヤーレンさん、若いフルーティストのトビアス・キャロンさんが、実行委員会のメンバーの一人、ステンドグラス会の手作りステンドグラス装飾の舞台で、楽しい演奏をされたことを、覚えている。僕は舞台の袖で、演奏する方々と入れ替わり立ち替わりして、小声でお話しながらのお付き合いだった2時間もあっという間に過ぎた。この偉大なピアニスト舘野さんは、僕ごときにも対等にお付き合いくださった。

ちょうどその日は、奇しくも、先日のTVご出演の1110日と同じく舘野泉さんのお誕生日だったことを、演奏会のあとの、同会館の2階での手作りパーティで知った。

フィンランドの声楽家の奥様、バイオリニストのご子息も、札幌から(多分)駆けつけられ、みんなでハッピー・バースデイを歌った。実行委員会の方々の心こもった手作りのケーキ・カットをしていただいて乾杯したのも、僕の一生の思い出だ。

あのとき演奏前に会場で買った舘野泉さんの弾くフィンランドの作曲家シベリュウスのピアノ曲集2枚や奥様の歌曲集のCDを、幾度となく聴いたり、氏の名随筆を読んだりして、もう十数年経った。

舘野泉さんはTV番組の中で「右手も左手も意識しない、音楽が愉しくって仕方がない」と仰っているが、この音楽にひたむきな、大らかな心が、なによりも氏の健やかさの源だろうと、同病の自分も励まされるのである。

と同時に、このような奇しき出会いを持てたことを、宇宙に在る、なにか大きなお方のお力に感謝するのである。

舘野泉さん、ますますお元気で、音楽をお愉しみになって、音楽のよろこびを我らにもお与えください。

 ご参考:「星にとどく樹」舘野泉著 株式会社求龍堂刊 1,500