| 知的生命体は存在するか? |
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宇宙に人類以外の知的生命体(ETI=Extra Terrestrial Intelligence)がいるとするならば、彼らはどうして地球にやってこないのでしょうか。 「いや すでにやって来ている」と主張する人はMIB(Men in Black)やXファイルの見すぎです。宇宙の知的生命体が地球にやってきたことを示す明確な証拠は何ひとつありません。UFOや宇宙人の目撃は多くが見間違いや妄想、あるいは故意のねつ造によるものです。本物のUF0も存在しますが、それが宇宙人の乗り物(エイリアン・クラフト)であると証明されたこともありません。 地球は一種の保護区になっていて誰も近づかないのだと言う人もいます。またETIは大量のエネルギーを必要とする植民には興味を示さないのだとか、高度に発達した文明は精神世界(仏教の高僧のようになって解脱している?)になっていて宇宙開発の必要がないのだと考える人もいます。しかしそのような主張に根拠があるわけでもなく、いまだにETIが地球に到達していないと考える方が理にかなっています。
そこで、もし人類が恒星間飛行をすれば銀河系の端から端まで到達するのにどれくらいの時間がかかるか計算してみましょう。植民するためには居住可能な惑星を持つ恒星が必要です。そのような恒星までの平均距離が10光年と仮定すると(この仮定は妥当だと考えられています)、光速で移動しても到達するのに10年かかります。人類が出せる現在の最高速度は光速の0.02%ですが、将来の技術革新(恒星間飛行をおこなおうという意欲が湧く程度の速度)で光速の10%までは可能だと考えられます。そうすると100年で到達できることになります。到達した惑星はそのままの状態では住めませんから惑星環境の改造(テラフォーミング)が行われます。そして次の移民船を送り出すのに400年かかると仮定します。 100年移動、400年植民で計500年のサイクルを繰り返すと、10光年を500年ですから1光年移動するのに平均50年かかることになります。銀河系の直径は10万光年と推定されていますから端から端まで500万年で到達できます。非常に長い時間のように感じられますが、500万年は150億年の宇宙の歴史では一瞬です。(0.03%にしかなりません。宇宙の歴史を人の一生75年に換算すると、わずか8日の旅行になります)移動速度やテラフォーミングを低く見積もってワンサイクルが5000年と計算しても5000万年で到達できます。図1はETIが中央の母星から周辺の惑星系に植民していくイメージを示しています。
銀河系内のどこにETIが誕生しても、植民を開始するとわずかな時間で銀河系全体に拡がってしまうので、地球にもやって来ていると考えた方が妥当です。しかし地球にそのような証拠はないので、これはフェルミのパラドクスとよばれ、ETIがいないということの逆説的な証明だと考えることもできます。エンリコ・フェルミは20世紀の著名な物理学者です。都合よく考えれば、他の惑星の生物はまだ進化の途上で、地球人類が宇宙に進出すれば最初の征服者として銀河系全体を植民地にすることも可能だということになります。わずか数千年前の先祖が住んでいた土地さえ知らない私たちですから、宇宙に進出した人類は自分たちのルーツである地球など忘れてしまうのでしょうね。映画「インディペンデンスデイ」(ID4)に登場した悪者宇宙人の役を人間がやるのかもしれません。 注:光速は秒速30万kmです。人類の作った物体が宇宙空間で出した最高速度は惑星探査機ボイジャー1号(写真)が出した秒速60kmです。ボイジャーは現在太陽系を脱出して銀河系内を放浪するコースの途上にありますが、まだ太陽の引力の及ぶ場所にあります。
では本当に知的生命体は存在しないのでしょうか。電波は光と同じ電磁波の一種です。その電波を使って宇宙の知的生命と交信しようとする試みが1960年から始まりました。宇宙からの電波を受けたり、宇宙に向かって電波を発信するには電波望遠鏡が必要です。しかし電波望遠鏡を使用するには予算と時間が必要で、可能性のないことに使える電波望遠鏡はないので、電波望遠鏡でETを発見できる可能性を示さなければなりません。コーネル大学のF・ドレイクは銀河系のなかの進歩した文明の数をみちびきだす公式を提案しました。 ドレイクの公式 N=N*×fp×ne×fl×fi×fc×fL N :進歩した技術文明のある星(人類と交信可能) N* :銀河系の中の恒星の数 fp :惑星系を持った恒星の割合 ne :ある特定の惑星系の中で、生物の存在しうる生態学的環境を持つ惑星の数 fl :適当な環境を持つ惑星の中で、実際に生物が誕生した惑星の割合 fi :生物の住む惑星の中で知的生物のいる割合 fc :知的生物の住んでいる惑星の中で、通信技術を持つ文明のある割合 fL :その惑星の寿命の中で、技術文明の存在する期間の割合 小文字の部分には0〜1までの少数が入るのですが、N* やfp はかなり正確にわかるものの、後半のファクター(要素)についてはほとんどわからないことだらけです。知的生物の進化や技術文明の寿命などはほとんどわかっていません。しかし、この公式は恒星天文学、惑星天文学から有機化学、進化論、歴史、政治、心理学まで多くの科学を含んでいる点で素晴らしい課題を人類に投げかけているのです。宇宙や生物のことの多くはこのドレイクの公式に含まれているといっても過言ではありません。 それぞれの項の評価は現段階では研究が不十分なため、いろいろ意見が分かれるところですが、典型的な値を示してみましょう。 まず銀河系には約2000億個の星があるので、N* =2000億個です。 太陽系には惑星があるし、最近の観測でも生まれたばかりの星の周辺に惑星系のもとらしいものがぞくぞくと発見されています。太陽系の中の木星や土星などの大型惑星は多くの衛星を持っていて、さながら太陽系のミニチュアです。つまり、太陽のような大きな天体の周辺には惑星系がある確率がかなり高いと考えられるのです。fp = 0.5 ぐらいと考えらてもよいでしょう。また太陽系の場合、生命が生存できる条件を備えた惑星は地球だけなので、ne=1 としておきます。 生命のもととなる分子は、宇宙の最もありふれた条件のもとで容易に作られます。生命発生の条件があれば必ず発生するとは限らないのですが半分くらいは発生するかもしれないので fl =0.5 とします。 ここからが難問です。人間が現在のような知能と技術を持つためには、ほとんど起こり得ないような多くの偶然の出来事が重なり合ったと考えることもできるし、他方、技術文明が発達には数多くの道筋があるとも考えられます。 地球は約6億年前のカンブリア紀に爆発的に生物が増えたのですが、それまでの数十億年は単細胞に近い小型の生物がひっそりと暮らしている星だったのです。何かの要因が生物の進化を加速させたことは間違いないのですが、同じことが他の惑星でも起こるかどうかはわかりません。また惑星全体が海におおわれて陸のない星なら、技術文明が発達したかどうかわからないし、もし恐竜が絶滅していなかったら、地球は今も恐竜がはい回っている星かもしれないわけですし、逆に恐竜が文明を持つ可能性も否定できないのです。わからないことが多すぎるのですが、fl×fi × fc=1/100 としておきます。 知的生物が存在したとしても、電波による通信をするとは限りません。平安時代の人間は明らかに知的生物ですが、電波の存在を知らずテレビもラジオを使っていません。人間が電波を使い始めてまだ100年も経っていないのです。100年は宇宙の歴史の1億分の1です。もし今人類が滅びたなら、fL =1/100000000となります。 N=200000000000×0.5×1×1/100×1/100000000=10 となります。 現在の銀河系の中には私たちと同程度かそれ以上の技術文明が10個あることになります。しかし、地球の文明が明日に終わることはないとすればどうなるでしょうか。技術文明が1000年つづけば N=100 1万年つづけば N=1000個となります。科学者の中には最大で1000万個と考える者もいるし、1個(地球だけ)と考える者もいます。 我々の文明が宇宙文明平均よりも短い部類にあるのならば、宇宙には数多くの文明が満ちあふれているといえるかもしれません。その場合には、「短期間に滅んでしまった文明」となるのは「宇宙的な恥」になりかねないし、もし、平均よりも長い部類にあるならば大変貴重な存在と言えるのです。 ただし、この式で考慮されているのは、地球上に存在する生命と同じような種類の「炭素質を身体の構成基盤とする文明」に限ったものなので、それとは全くかけ離れた形態の生命・文明が存在した場合、その数は、この式では推定できないし、存在するかどうかをこの式から確かめることもできません。 2001.2.16 前に戻る |