第0話(続) ZERO_A=S、危機(エピローグ)
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熱い。
恒星の真っ直中にいるのだから、これだけですんでいる分、ありがたがらなければならないのだが、それでも人間の限界を超える温度だ。
頭がだんだんぼぉっとしてくるのを、何とか気力で押さえつける。
「安全点まで、あと1000。」
規則正しく報告するキュラーの声も、辛そうだ。
リテイナーの中はほぼ密室なので、汗が思うように乾かない。
これが、更に不快感をもたらす。
「あと、500。」
もう少し、あと、ほんの少しで恒星の重力から抜け出せる。
「もってくれよ、後少し。」
「あと、100」
だが、装甲等もズタボロのこの機体では、そこまでが限界だった。
とつぜん、衝撃がコクピットを襲う。
「脚部ブースター、オーバーヒート!駄目です、重力に引きずられます!」
「だめか!?」
ほぼ反射的に、白炎の腕を天に向かって伸ばす。
だが、こんな所につかまる物があるわけがない。
一瞬の浮遊感、そして・・・・落下!!
ガシィッ!
しかし、つかまる物はなくても、それを掴む者はあった。
「間一髪だな。」
「ネモ?どうして・・・・・。」
そう。それは、ネモのノーチラス号だった。
「光が見えたからな。」
「なんだよ、それ。」
「いいじゃないか、助かったんだから。」
「ああ、そうだな。せっかく返した借りが、大きくなっちまった。」
キュラーが、ただ一人話に参加できずに困っている。
そして、生還を祝い合う二人の男の目に、オーラシップ、ガラオンが近付いてくるのが見えた。
「じゃあ、世話になったな。」
レイアスが輸送船のモニターに向かって言った。
あれから1週間。
レイアスとキュラーの二人は、オーラシップ=ガラオンの世話になっていた。
骨や神経に達するような酷い怪我はしていなかったので、回復も早かった。
今日で、人間もリテイナーもほぼ完治である。
「ネモさんは、これから何処へ行くのですか?」
キュラーも、人との会話に少しだけなれたようだ。
「ああ、今回ので休暇をもらったから、みんなで温泉にでも行こうと思ってる。そっちはどうするんだ?」
「俺もMHKに入ろうかと思ってる。テストパイロットか何かで。あそこだったら、今回アーカムの後ろについてた奴についての情報収集も、やりやすそうだしな。」
「そいつはいいな。」
「入隊試験っていうか、入社試験って言うか、在るのか?」
この言葉を聞いて、ネモがニヤリと笑った。
「ああ。人事部長との対戦して、一発でも弾を当てればいいのさ。がんばれよ。」
「へぇ、そうか。」
ネモの後ろの方で押し殺した笑い声が聞こえたが、それが何なのか、レイアスには分からない。
「じゃあ、また合うかも知れないな。」
「ああ。じゃ、またな。」
二人の男は正反対の方向に向かって飛び立った。
レイアスは知らない。
MHKの入社試験が何を意味するのか、MHKに入ることで、自分の人生がどうなるのか。
そして、ネモも知らない。
それから数日後、休暇を終えて帰ったネモが見るのは、自分のことをネモ”さん”と呼び、敬語まで使うようになっているレイアスだと言うことを・・・・・・・。
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