第4話 BROTHER、誕生(下)
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六:天は、希望を捨てなかった者に輝く
ゼロアスの表面までは、障害らしい障害もなく、あっと言う間に到着した。
だが、表面に到着すると同時に、物凄まじい数の触手が一斉に襲いかかってきた。
「ちょっと、倒しても倒しても、きりがないよ!!」
流石に2回目なので、シェラルもパニックまでは行かない。
「一気に突破するっきゃないな。」
触手を2本同時に開きにしながら、ゾアメルグスター。
「でも、数が多すぎるぜ。」
光の大鎌をふるうレイアス。
それに反応したのは、りるだった。
「それなら、あったしにまかせるにゃん。」
NWが、懐をごそごそと探っている。
わりと、芸が細かいリテイナーだ。
「にゃいんど・シュレッダー!!」
ズギャギャギャ!!
りるの声に合わせて、左腕に装着された見慣れない装置が輝くと、光の小さい刃が周囲の空間を縦横無尽にはね回る。
一撃で、触手の間を走る道が出来た。
「りるさん、でかした!」
フル・ブーストで、一気に駆け抜ける4機。
ブースター付きのCKや、そうでなくとも速いMW、PTの部隊だ。
触手の群れは、一気に引き離されて、点になる。
だがそんな彼らの前をふさぐ者があった。
この世の『白』と言う色を冒涜しているかのような、白いMW。
それにもう片方は、まるでアメリカンコミックにでも出てきそうな、漆黒の忍び装束のSS。
レイアスは、この機体に見覚えがあった。
「ブラスター・・・それに、ナインか?」
返事は、無い。
だが、それは確かにブラスターとナインに間違いなかった。
恐らく、ゼロアスが過去の記憶からコピーしたのだろう。
自分の身体を使って。
確か、白い方の機体名はホワイトシェイドとかいっただろうか。
黒い方の名は、聞いていなかった気がする。
返事がない代わりに、ブラスターが一気に間合いを詰め、襲いかかってくる。
凄まじい速さだ。
前より、数段速くなっているのでは無かろうか?
避けきれない。
そう、思った。
ギィン!
「何、ボケッとしてるんだ!」
一瞬で、ゾアメルグスターが間に入って剣で、刃を受けてくれていた。
「ここは俺に任せなって。」
「ゾアメルはそっちね。じゃあ、あっちの黒いのはあたしがやるよ。」
「だが、しかし・・・・。」
「大丈夫、あたしだって一応、シニアランクなんだから。もう少し信用してよ。」
「そうそう。俺達、どうせ好きで付いてきたんだし。」
「・・・・・すまない。」
ゾアメルグスターとシェラルに礼を言うと、レイアスはホワイトシェイドの横を通り抜ける。
ブラスターとナインはそれに反応するが、ゾアメルグスターとシェラルに阻まれてそうも行かない。
「んじゃ、おっさき〜♪」
レイアスの後に、りるが続くが、ブラスター達はそちらには何の反応も見せない。
2機は、そのまま真っ直ぐ中心部へと向かった。
ブラスターとナインは、諦めたのか残った2機の方に向く。
「そうそう。そうこなくっちゃ。」
シェラルが、ナックルを最短距離で効率よく打ち込むための、独特な構えを取る。
「いざ尋常に、ってね。」
剣を両手にしっかりと握り直す、ゾアメルグスター。
2つのそれぞれの戦いの火蓋が、切って落とされようとしていた。
「さあて。」
両者とも、剣をゆっくりと構える。
剣の赤い光が、だんだんと強くなる。
MW同士の戦いの勝負は、一瞬で決まる。
互いに相手の間合いに入る前、自分の間合いに入れる前のぎりぎりの地点でじりじりと間合いを計る。
二人にとって、無限とも思われる時間が流れた。
先に動いたのは、ブラスターの方だった。
必殺の一撃を、真っ向から叩きつける。
すんでの所で見切り、最小の動作で避けるゾアメルグスター。
「もらった!」
剣を振り抜いてしまったブラスターに、ゾアメルグスターの剣が襲いかかる。
だがその時、唐突にゾアメルグスターの視界がぐにゃりと歪んだ。
精神攻撃。
それを悟った瞬間、ホワイトシェイドの白い体が目の前に迫っていた。
ガゴッ!
ホワイトシェイドが体当たりでフィーリアンを吹き飛ばす。
「何!?」
まさか、前に向かってくるとは思ってもいなかったゾアメルグスターは、盛大に吹き飛ばされてしまう。
ガギンッ!
続いて襲いかかってきた剣を、何とか受けるゾアメルグスター。
不利な体勢なのはどうしようもなかった。
単純な押し合いの場合、よほど力が上回っていないと、上にある者が勝つ。
今、ゾアメルグスターの剣よりもブラスターの剣の方が、位置的に上にある。
このままでは、いずれ押し負ける。
「くっそお!!」
駄目もとで、フィーリアンにバーニアを全開で噴かさせる、ゾアメルグスター。
ボコッ・・・・
突如、例えでも何でもなく、地面が崩れた。
少々予想外の展開だが、駄目もとが上手く働いてくれたようだ。
双方とも、バランスを崩してしまう。
一瞬で体勢を立て直す、2機。
これで体勢は、振り出しに戻った。
「はぁっ!」
そして、2度目の影の交差。
どさ・・・・
膝を着くフィーリアン。
そして、真っ正面から真っ二つになって倒れる、ホワイトシェイド。
腕も性能もほぼ互角。
精神攻撃が出来る分、ブラスターの方が有利そうに見えたこの戦い。
勝負を決したのは、技でも力でも特殊な能力でもなく、ゾアメルグスターの運であった。
ドウッ!
ナインとシェラルの戦いは、初めから高速戦闘となった。
シェラルはリテイナーの種類的にも高速戦闘の得意な機体だし、ナインは機動力こそ劣るものの、それをカバーして有り余る動きで翻弄する。
ナインの手裏剣ランチャーが飛び交い、シェラルのビームが閃く。
だが、互いに決定打を与えられない。
どちらかが勝負に出ない限り、この戦いは終わらない。
「いっけぇ〜!!」
ズバババ!!
ビームを連射しながら、一気に間合いを詰める、シェラル。
ナインは、少し後ろに下がったようにも見えたが、単純なスピード比べになると、シューティングスターに及ばない。
必殺の間合いからの、ナックル!
だがそれでも、シェラルは負けたと思った。
その時ナインが取った構えを、前に見たことがあるからだ。
『合気』の構え・・・・・。
力を殺さず、そのまま相手に返す技。
打ち出される拳と、シューティングスターの胸元に手を添える
ナイン。
ドガッ!
吹き飛ばされる、シューティングスター。
この時、この勝負の決着は付いた。
ボンッ!
一瞬の沈黙の後、爆発したのは何とナインの両肩だった。
ナインの合気は、シェラルのナックルの力を殺しきることは出来なかったのだ。
耐えられないほどの、過負荷がかかった瞬間。
ナインの両肩は、粉々に吹き飛んだのだった。
「まだ、やるの?」
立ち上がる、シューティングスター。
こちらの方は、損傷らしい損傷はない。
それでも構えを取る、ナイン。
「そう・・・じゃあ、すぐに終わらせてあげる・・・・・!」
ズガッ!
シューティングスターの拳が、ナインの胴に突き刺さる。
それでも動こうとするナイン。
その姿はさながら、生にしがみつこうとする死者のようにも見えたが、やがて沈黙した。
ゾアメルグスターとシェラルの二人がそれぞれに勝利を収めていた頃、レイアスとりるの二人はゼロアスの中心部へと進入していた。
人間の内臓のような(特に、腸みたいな)ものでびっしりと埋め尽くされた、半球形の空間。
その中心にそびえ立つ、柱のような物に彫像のように埋め込まれた人影は・・・・・。
「キュラー!」
そう、それは間違いなく、キュラーそのものだった。
「感動の再会、邪魔して悪いね。」
何の前触れもなく、キュラーとの間に立ちはだかる影。
ゼロアス。
同じ人間から作られたとは思えないほどに、怪物になってしまった兄弟。
「ゼロアス!キュラーは、無事なのか!」
「ははは、アーカムの時と同じ反応をするんだね、お兄さん。安心しなよ。まだ何にもしていないさ。」
「まだだと?」
「もっとも、もうすぐお兄さんと共に、僕と一緒になってもらうけどね!」
「何度でも、取り返すさ。キュラーが、生きてる限りは。」
「出来ないよ。僕は、完全体なんだからね。」
「一つ聞きたいんだけど。・・・・あんたは、何の為にこんな事をするの?」
それまで静観していたりるが、静かに口を開く。
怒っている。
恐らく、負傷したファーサの事を思って。
「みんな、僕を否定するからさ。」
ほんの少し、レイアスはゼロアスが自分をどういう感情で眺めているのか、分からなくなった。
これは、嫉妬?
「否定するから、取り込んでやるんだ。オリジナルは、人にこんなにも好かれているというのに、何故だ!」
「それだけ・・・・・。」
「何?」
ぎぎぎっと、ゼロアスがりるの方を向く。
「たったそれだけのことで、みんなを巻き込んだというの?」
「たった、それだけのことだとぉ!」
「たったそれだけのつまんない事じゃない!あんたは、人に好かれるために何かしたというの?」
剣を地面と水平に構える。
「あなただけは、許さない。」
また、戦いが始まった。
「くそ、この!」
まるでゾンビのように次々に現れる、CKもどき。
シェラルとゾアメルグスターの二人は、そのCKもどきの大群と戦っていた。
数時間前から、ゴルダリア惑星軍もゼロアスに対して攻撃を始めている。
だが、大したダメージになっていない。
「ちょっと、シェラル。」
「ゴメン、もうちょっと待って!」
そう言いながら、CKもどきの頭を潰すシェラル。
「いや、何だか急に周りの軍隊が退いてるよ?」
「え?」
軍隊が退く。
勝負も決まってないし、べつにどちらかが決定的な打撃を受けたというわけでもない。
と、いうことは、次元砲の発動準備が整ったか。
「そんな、早すぎるよ!」
「連邦の人間が、優秀だったって事だろ?早く退かないと、不味いよ。」
高速で後退しながら、シューティングスターの通信回線を開く、シェラル。
ゾアメルグスターも、同じく通信回線を開いている。
「レイアスさん、りるさん!」
「だめだ、応答がない・・・・・。」
「そんな、それじゃあ・・・・・。」
二人にはもはや、祈ることしか残されていなかった。
「発射準備と、全軍の退避、ほぼ同時に終わりました!」
「ふん。上が腐ってた割には、下の奴は良くやるじゃないか。」
ゴルダリア惑星軍の旗艦。
その司令室に座ってふんぞり返っているのは、何処の王でもなく、エルリックであった。
その旗艦の横では、巨大な大砲――――次元砲――――の準備が滞り無く終わったところだ。
ゾアメルグスターとシェラルの会話にもあったとおり、次元砲の準備がここまで早く終わったのは、一重にエルリックの指揮の腕前であろう。
「次元砲、発射!」
始めは、次元砲が薄紫色に輝いただけに見えた。
だが、次の瞬間にその効果が現れた。
一気に爆発四散する、CKもどき。
だが、効果はそれだけだった。
ゼロアスの表面を少し抉ったところで、次元砲の効果はそれ以上進まなくなってしまったのだ。
「何だ?何が起こってる?」
「わ、分かりません。次元砲には故障は無く、完全に動いています!」
「次元を歪める力を、逆に修復しているというのか。そんなでたらめな奴、聞いたことも無いぞ。」
エルリックは、苦々しげに呟いた。
やがて、次元砲の放射が完全に停止する。
「再充填、急げ!何回でもやるんだ!」
「は、はい!」
だが、再充填を始める直前に、一条のビームが次元砲を直撃した。
「今度は何だ!」
「ビ、ビーム攻撃です。敵からここまで、撃ってきました!」
「な・・・・とことんまで、でたらめな奴め。ここまでどれだけ距離があると思ってるんだ。しかし、これだけの距離を飛んできたビームだ。さほど影響はあるまい。」
だが、エルリックの考えは、またしても裏切られた。
「報告します!次元砲、銃身に歪みが生じたため、再使用不可能とのことです!!」
次元砲は、超威力を誇る兵器なだけに、ちょっとした銃身の歪みでもエネルギーがリバースする恐れさえある。
かといって、今からこの場でその歪みを直そうにも、設備もなければ人も居ない。
つまり、次元砲は完全に使用不能となってしまったわけだ。
こうまでになると、もはや呆れるしかない。
「くそ、してやられたか!」
キイイイィィィィン・・・・
その時、まるで脳味噌でもかき回されているかのような、凄まじい音が響いた。
「ぐ・・・・何だ、今のは?」
「次元そのものが振動する音、次元砲さ。」
「な、嘘を言うな!それだったら、俺達が無事なわけがない!」
「ふん。信じる信じないは、そっちの勝手さ。もっとも、僕には効かなかったってだけなんだけどね。」
「レイアス、多分そいつの言ってることは本当にゃ。」
「な、そんな・・・・ありえるはずが・・・・。」
「多分、さっきの音は次元を破壊する力と破壊させまいとする力のせめぎ合いよ。」
「ご名答。つくづく、すごい人だね。」
空中に向かって、右手をかざすゼロアス。
「だけど、これ以上喰らうと、さすがに嫌だな。壊れててもらおうか。」
壁の一面が、まるでテレビの画面のように外を映し出す。
宇宙空間の先には、ゴルダリア惑星の軍隊が。そして、次元砲の巨体が見える。
と、突然一瞬だけ画面が真っ白に輝く。
次の瞬間、見えたのは小さな爆発を起こす次元砲の姿だった。
「これで、もうあれの発動は、無い。」
ゼロアスは、レイアス達に向かって微笑んで見せた。
「く、次元砲まで効かないなんて・・・・・。」
すでに、レイアスは他に打つ手を思いつかなかった。
「レイアス、チャンスかも知れない。」
だが、りるは全く、これっぽっちも絶望していなかった。
「急いで壊したって事は、やっぱりダメージになってるにゃ。少しでも弱ってる今しか、チャンスはないにゃ。」
急に、レイアスは絶望しかけた自分が恥ずかしくなった。
まだ十分に戦える力が残っている。
まだまだ余力のあるうちに、レイアスは諦めようとしていたのだ。
レイアスは、これまで以上にりるのことを頼もしいと感じた。
「ふん。ダメージになってるわけが無いじゃないか。そう。見えるのかい、本当に?」
「へ、まだやれるうちに諦めれるかって!」
バスターライフルを真っ直ぐに構える、白炎。
その身体が、白銀色のフィールドに包まれ、真っ白に燃えているかのようだ。
これまでになく、真っ白に。
そのころ、外ではリテイナーのなり損ないみたいなのが、大量に発生していた。
ゼロアスの身体から、止めどなく放出されている。
先程のCKもどきよりも更にグロくなっていて、もはやゾンビとしか呼べないようにまでなっている。
「なんだか、ずっと同じ事してる気が・・・?」
「ほんと、ゼロアスって奴は、こんな攻撃しかしてこないのかな。」
やはりというか、何と言うべきか。
ゾンビとゴルダリア軍のCKが戦う真っ直中を、シェラルとゾアメルグスターの二人は高速で駆け抜けていた。
群がるゾンビをなぎ倒す二人のその姿は、周囲のゴルダリア軍を勇気づけた。
だが・・・・。
「キリがないよ!これじゃ、弾薬だって足りないわ!」
「そりゃ、そうだよ。さっき大雑把に計算したんだけど、こっちが相手を倒す量より、相手の増える数の方が多いみたいだしね。」
「それって、絶対勝てないじゃない!」
「しかも、こっちの倒す数は時間ごとにどんどん少なくなってるしね。」
ドォォォン・・・
忌々しいことに、実にタイミング良く、すぐ側で味方リテイナーの爆発が起こる。
「ほら、また味方が1機減った。」
ゾアメルグスターの言ったとおり、初めは拮抗しているかに見えた戦場も、相手の無限にも思えるほどの物量作戦に、徐々に傾きつつあった。
やがて、ゾアメルグスターとシェラルの周りは、ゾンビーの群れで囲まれてしまった。
倒しても倒しても、目の前に敵が居る。
これほど、戦士の気力を削ぐ状況があろうか?
「ゾンビ以外、見えない、な。」
「そう、だね。これは、本格的に、まずい、よ。」
二人とも、息が荒い。
身体に鉛が入ったかのように重い。
ゾンビの包囲網が、じりりと小さくなる。
ズバァ!
だがその時、一条の閃光と共に、辺りのゾンビが文字通り吹き飛んだ。
それがビームの輝きであることに気付くのに、二人はほんの少しだけ時間がかかってしまった。
続いて、青いCKが目の前を横切った。
「あ、あれは・・・。」
「なに?知ってるの?」
「あの青いCKはまさしく、『鬼を喰らう殺人蜂』のヴァンブレイズだよ!確か、パイロットはヤスノリとか言う人の筈。ってことは、さっきのが噂に聞くフォトンライフルか!」
「ヴァンブレイズって、名うてのフリーファイターの?でも、そんな人がどうしてここに・・・・。」
そのヴァンブレイズとレイアスがフリーファイター時代、『ゴールデンコンビ』と呼ばれ、恐れられていたことまでは思い出せない二人は、ヤスノリがどうしてここに来たのか、分からない。
その時、二人の会話に割り込んで後方から通信が入った。
「こちら、MHKのハスターだ。機体に損傷があるようなら、後ろにいる戦艦に乗りなさい。」
「ハスターって、MHKの所長の!?」
「助かったぁ・・・。」
ゾアメルグスターは驚いて、シェラルの方は安心して後ろを振り返ると、そこには数機のリテイナーとオーラシップ、ガラオンが宙に浮かんでいた。
そして、その先頭にいるのは、まさしくMHK所長のリテイナー、月光。
周りには、少し前に見たネモのノーチラス号や、連邦最強のリテイナーパイロットと名高いエルリックの乗るZ、他にもずらりとMHK所員がいる。
「す、すごい。俺よりも数段高ランクの人間が、こんなに沢山来るなんて・・・・。」
「どうした、動けないのか?ならば、私たちで戦艦まで・・・・。」
「あ、こちらG研のシェラル=草薙です。まだまだ、戦えます。」
「ああ、そうか。どこかで見たことがあると思った。では、戦列に加わってもらいます。」
こうして、そうそうたるメンバーによるゼロアスに対する反撃が、今始まったのだった。
「へへ、外の方は、どうにかなっちまったみたいだな。ゼロアス。」
「く、だが、所詮は無駄な足掻きだと、思い知らせてやる。そのために、まずはお前等から血祭りにあげてね!」
ボゴッ!
ゼロアスの目の前に、1体のリテイナーが出現する。
「な、これは!?」
「どうだい、良くできているだろう?」
「レイアスのリテイナー、そっくりにゃ。」
そう、それは白炎そのものであった。
「いくよ!」
ゼロアスの合図と同時に、白炎コピーの銃が火を噴く。
とっさに、横に避ける二人。
ビームの光が、二人の背後で爆裂する。
どうやら、白炎のバスターライフルと同じだけの威力があるらしい。
「俺はキュラーを絶対に連れて返るんだ!邪魔するな!!」
気合い一閃、ブースター全開で一気に加速する白炎。
目標は、キュラーの救出。
だが、ゼロアスも白炎コピーも、既にレイアスに反応している。
「人の恋路を邪魔する奴はぁ!!」
しかし、その二人よりも、更に早く動いた者があった。
りるである。
りるは、フルブーストしたレイアスの真後ろから突然飛び上がると、空中で決めポーズを取った。
「猫に蹴られて地獄行き、にゃ!!」
閃く赤い光。
それは、何者をも切り裂く、意志の剣の輝き。
赤い稲妻の如く、一気に振り下ろされる。
狙いは、白炎コピー。
ザン!
次の瞬間、白炎コピーは、受けた盾ごと頭の先から真っ二つにされ、左右に倒れた。
「ば、馬鹿な!コピーとは言え、オリジナルなのに!!」
「よそ見してんじゃねぇぜ!」
動揺するゼロアスに、クラスターサイズを思いっきり振りかぶる、レイアス。
「炎零式、白龍降ろし!!」
全てを焼き尽くす、恒星の炎よりも熱い炎。
純白の、混じりっけ無しの純粋な炎が、その時閃いた。
この時初めて、白炎はその機体のエネルギー源である、灼熱金剛石を100%解放した。
全てを、世界ごと真っ白に塗りつぶしての、レイアスの斬撃。
全てを、真っ白い炎の中に掻き消した。
エピローグ:そして、物語は終わりを伝える
「いててて、まだ身体がきしむな。」
そして、あれから1週間。
レイアスはやっと、うざったい病院通いから解放された。
「何言ってるの。それだけですんだだけ、ありがたいと思わなきゃ。」
キュラーの方は、身体に特に以上がなかったし、何よりかすり傷一つ無かったので病院のお世話になることさえなかった。
「みんな、帰っちまったな。」
「そうね。」
二人揃って、窓の外を見る。
空は、何処までも青く輝いていた。
りるは、一度ウルサーの方に帰ってみるとかで、えるとファーサを連れて里帰りしてしまった。
ファーサの療養も兼ねて、と言ったところだろう。
シェラルも、銀流技術開発研究所に帰ってしまった。
今回のことで、今までやってなかった兵器のデータが大量に取れすぎてしまったので一度整理する必要がある、と言っていた。
ゾアメルグスターは、MHKに入隊しようかどうしようか悩んでいたが、結局決まらずまた放浪の旅に出た。
気が向いたら、またここを尋ねてくるだろう。
ヤスノリに至っては、あの一件が終わってすぐさま、その足で何処へともなく飛び去ってしまった。
なにか、他にも仕事が入ってでもいたのだろう。
「ふあ〜ぁあ。」
何処までものどかな昼下がりである。
と、レイアスの通信機が鳴った。
「はい、こちらレイアス。あ、所長。」
それは、所長室への呼び出しであった。
とにかく、レイアスは所長の部屋へと向かうと、ドアをノックした。
「開いているよ。入りたまえ。」
「はい、失礼します。」
ドアを開けると、ハスターが真っ正面の椅子に腰掛けていた。
「用件だけ手短に言おうか。」
「はい。」
「ゼロアスの件だが、彼はまだ生きている。」
「何ですって!?」
「まあ、落ち着きたまえ。彼の細胞が一欠片、凄まじい速度で成長しているのが、あの後見つかった。とりあえずMHKで預かってみたんだが、つい昨日、人間の赤ん坊くらいまで成長した。」
「そんな危険なモノ、何で持ち出したんですか!」
「ここ以上に安全な場所は、そうはないよ。それに、恐らく脳を一度完全に破壊しているから、記憶までは受け継ぐことはないそうだ。それと、おそらく前の外見までは急速に成長するだろうが、その後は人並みの成長になるそうだ。これは、葉月博士の報告によるものだ。」
葉月博士。
彼の報告であるのならば、間違いはあるまい。
普段はマッドな研究に手を染めているが、とてつもなく頭の切れる人間である。
このとき、レイアスは急に自分のやるべき事が見えた気がした。
「そこでだ。キュラー君もいることだし、とりあえず君に預けてみたいと思うのだが、どうだ?」
レイアスは、返事するよりも先にキュラーの方を見た。
無言で、頷くキュラー。
「わかりました。今日から僕の家族として、ゼロアスを育てます。」
同じ悪夢は、もう二度と見させやしない。
その悪夢を見たことがない人間はともかく、悪夢を見た人間にも、悪夢を起こした人間にも。
こうして、レイアスに新しい家族が出来たのだった。
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