第7話 Partner、復活


ガッシャーン!!
MHK第三宴会室。
今、この場所では・・・・・。
「まま、どーぞ一杯!」
「なにぃ!?俺の酒が飲めねぇってのか!!」
「酒たりね―ぞ、もってこーい!!」
・・・・・・・・。
ネモ以下、ガラオンの乗組員全員による盛大な宴会が催されていた。 まだ日が昇っていると言うのに、宴会は終盤のような盛り上がりを見せている。
だが、いつものパターンで行けば、この宴会は翌日の朝まで続くだろう。
壁には『副長の誕生日おめでとう』と書かれた看板が貼り付けてある。
だが、もはやそれを覚えている人間はいないのではないかと言う盛り上がり方だ。
「それではここで、副長エレクトラさんの28歳の誕生日をお祝いして・・・・!」
スコーン!
一人の男が唐突に立ちあがって演説をはじめたが、何処からか飛んできたビールビンがその頭に直撃して沈黙した。
「ちがいます!」
憤怒の形相で立ちあがったのは、ガラオンの副長エレクトラだ。
金髪で巨乳の美人である。
「何を言ってるんだ!我らが副長は30さ・・・・・うぐわ!」
またビールビンが直撃した。
投げたのはエレクトラだ。
恐らく、最初の一撃も彼女の手によるものだろう。
「じ、じゃあ、29・・・・ぐばっ!」
「にじゅうな・・・うげはっ!」
立ちあがる男が次々にビールビンの一撃で沈黙していく。
「あの、じゃあほんとは何歳なんです?」
恐る恐ると言った感じで上がった声に、ぴたりと喧騒とビールビンが止んだ。
「あ・・・・あの・・・・・。」
『うんうん?』
その場の全員が一言も聞き漏らすまいと耳をそばだてる。
「は、はたち・・・・よ・・・・・。」
どどぉ〜ん
「えぇえ〜〜!?」
その時、MHKの建物全体が揺るいだ。
静寂。
痛いほどの静寂。
「え、え〜・・・・では、とてもそうはみえない20歳の副長の成長の成果を、副長のストリップでお送りしたいと思います!!」
「うぉ〜〜!!」
一転して宴会場は異様な熱気に包まれた。
「ちょっと、もしかして最初からそれが目的・・・・・。」
「さぁ、さぁ、ぽぽーんといっちゃってください。」
「脱〜げ、脱〜げ、脱〜げ!!」
脱げという単語が渦になって唱和する。
宴会は最高潮だ。
エレクトラは、助けを求めようとネモの方を向いて言った。
「か、艦長、なんとか言ってやってください!」
艦長なら助けてくれる。そう信じて・・・・。
「かまわん、脱ぎたまえ。」
が、当の艦長の方はそう言い渡した。
エレクトラの目の前が真っ暗になった気がした。
「か、艦長?なんだか、目が据わってますけど・・・・。」 「そこにある酒瓶、全部艦長が飲んだのか?」
「うわ、どうりで酒が足りないと思った・・・・。」
もはや、艦長ネモを止められるものは、この世にはいない。
エレクトラは天を仰いだ。
「しかし、盛大な宴会よね。いつもこうなのかしら。」
異様なテンションについていけず、端でちびちびグラスを傾けながらシェラル=草薙は呟いた。
シェラルは銀龍技術開発研究所(G研)に所属しているテストパイロットだ。
物資の受け取りに来ただけのはずが、何故か巻き込まれてしまった。
ちなみに、グラスの中身はレモンティーである。
未成年なので、お酒はご法度だ。
「にゃはははは♪シェラルちゃー、ちゃんと飲んでる〜?」
「こっちの魚料理も美味しいよ♪」
が、そんな常識が通じない(というか考えていない)人間も、もちろんいる。
そこへ乱入したのは異世界ウルサーはリュシアーナの王位継承者、りる・るぅりだ。
ウルサーの人間はみな例外無く猫耳と猫尻尾が生えている。
もちろん、りるも例外ではない。
そしてりるも未成年のはずだが・・・・・・立派に出来あがっていた。
「あぁ〜、まぁ・・・。」
シェラルは咄嗟に曖昧に答えながら、真中ぐらいまで減った紅茶を見せた。
「ううむ。継ぎ足すにはちょっと多くて、飲んでないと言うにはちょっと減ってる。なかなかやるな〜。」
「この煮物もなかなか・・・・・。」
それをみて背後から顔を出したのは、ゾアメルグスターと言う名の若者だ。
どこに所属しているというわけでもなく、今日もただふらふらとMHKに立ち寄った。
「うにゃ?そ〜ゆ〜キミはど〜なのにゃ!」
「うぐわっ、しまった!ヘタな時に声かけ・・・・・・!!」
「あつっ!このスープ、まだ熱いよ〜。」
早速ゾアメルはりるに押さえ込まれてしまった。
常識的に考えれば男が女に力で負けるはずは無いのだが・・・・・・。
これも悲しい男の性というやつか・・・・・。
「ぐ、げぼっ・・・・・・!」
「うりゃうりゃ〜、もっと飲め〜♪」
酒瓶をさかさまにしてゾアメルの口に突っ込むりる。
みるみるゾアメルの顔色が赤くなる。
「あの〜、そろそろ死ぬんじゃないかな〜。」
「・・・・・・・・。」
ゾアメルの顔色が赤から青に変わった。
「じゃあ、シェラルちゃ〜も飲む?」
「あ、あたし、ちょっと向こうへ言ってくる!」
「きゃあ!」
りるの剣呑な瞳に、心の中でゾアメルに謝りつつ慌てて立ちあがるシェラル。それに引っかかって、謎の女の子が一人すっころんだ。
「うぐぅ、みんなイジワルだよ〜。」
そう言って涙を流しているのは、セシリア=ミストロード。チーム『冥皇ノ巫女』のエースパイロットで、今日は『お兄ちゃん』こと皇 閑からのいいつけでシェラルを手伝ってついてきた。
「あれ、セシリア。いつからいたの?」
「最初からいたよ!」
「まぁ、そんなど〜でもい〜ことは置いとくにゃ。」
「うぐぅ、どうでもよくなんかないもん。」
涙を拭いながら起き上がるセシリア。
ちなみに、ゾアメルの顔色は青を通り越してヤバイ紫色に突入していた。
「では、お次はたまたまMHKに来ていたこの女性に脱いでもらいましょう!!」
「う・お・お〜!!」
そこへガラオンの乗組員メンバーが乱入した。
「え?え?」
あっというまにセシリアがお立ち台の上に立たされてしまう。
「さぁ!」
「あ、あの、私お兄ちゃん一筋だから・・・・・。」
「さぁ!」
「やっぱ、恥ずかしいし・・・・・。」
「さぁ!」
「・・・・・い、いやぁああああああ!!!」
ちゅどーん!
しゃがみこみながらセシリアが叫ぶのとほぼ同時に、その爆発音は建物のすぐそばで起こった。
それが、今回の襲撃の始まりだった。



話は少し遡る。
コウッ!
一陣の風が、真っ白な刃となって駆け抜ける。
その向かう先には、同じく赤い烈風がこちらへ向かっていた。
ガギィンッ!!
接触。
火花を散らし、二つの風が激突する。
その接触は一瞬で、二者は同時に間合いを取った。
先程まで激しい風だった二つが、間合いを取った所でやっと判別できるようになる。
一方は銀色の炎のようなフィールドを纏った薄緑色のCK、『白炎』。パイロットはレイアスと言う赤毛の青年。
もう片方はその機体の全長よりも長大な剣を携えた真紅のMW、『レイ=ギル=ブラッド』。パイロットはレイアスのよきパートナーでもある、キュラーと言う名の黒髪の女性。
二人ともMHKの所員で、リテイナー用兵器のテストを行なうテストパイロットだ。
ここは、そのMHKのリテイナー用戦闘訓練場。レイアスとキュラーは、戦闘訓練の真っ最中と言うわけだ。
双方とも持っている武器は普段使用している物に形だけ似せて作った練習用の装備だ。
「ははっ、なんとか、着いていけた、かな。」
レイアスは、ひゅるんと手に持った鎌を回転させて構えながら呟いた。
余裕の表情を浮かべるその額は汗でぐしょぐしょで、吐く息は荒い。
「いいえ、まだまだよ。」
が、そこにレイアスの被っているヘッドセットから、同じだけの運動をしたとは思えないような冷静で乱れの無い声が聞こえた。相対しているキュラーのものだ。
まぁ、武器の性能でも機体の特性的にも近距離はMWの方に分があるので、CKでなんとか渡り合っているレイアスのほうが疲労するのはしょうがない事だ。
「−1ポイントだよ、兄貴。」
さらにレイアスの声を少し幼くしたような声が同じヘッドセットから響く。これは、すぐそこの建物でこの戦いを観戦している、ゼロアスのものだ。
ゼロアスは(具体的には少々異なるのだが)レイアスの弟という事になっており、レイアス達と同じくMHKのテストパイロットだ。仲間内では、ゼロの愛称で呼ばれている。
「なにぃ!?どこにだっ?」
「右肩。」
「接触時の3つはちゃんと受け流せたみたいだけど、離れ際に放ったのが2連撃だったの。分かった?」
「ぐあ、ほんとだ。右肩にダメージが・・・・・。」
記録を呼び出してみると、確かに右肩にダメージが記録されている。
「どうするの?」
「うーん・・・・・。」
「今の所通算で・・・・・・・。」
が、ゼロの通信が途中で唐突に消え、雑音が聴覚を支配した。
「何だ?」
ヘッドセットを外し、外部スピーカーをONに切り換える。
「ミノフスキー粒子ね。」
キュラーもどうやら同じく外部スピーカーをONにしたらしい。
とその時、レイアスの耳にくぐもった何かの音が聞こえた。
「あれは・・・・爆発音か!?」
「研究所の方だ!」
ゼロがそう叫ぶ。少しして、1台のエアバイクが少し離れた所にある建物から飛び出した。恐らくゼロが乗っているのだろう。
それにキュラーも続こうとしたが、レイアスが制した。
「待て。このパターンは、嫌な予感がする。」
言いながらレイアスはゼロが飛び出した建物からビームライフルと長大な剣を取り出した。剣の方はキュラーのほうに投げて渡す。
前に練習中を襲撃されてから、練習場にもこのように実践用の兵器を置くようにしたのだ。
どうやら、これが初めて役に立ちそうだ。
果たして予想通り、その場に張り巡らせたレイアスの感覚に触れてくるモノがあった。
感覚的には、頭の中に張り巡らされた糸の一部がぴんと震えるような感じだ。
最近、レイアスのこうしたニュータイプ的な感覚の鋭さは、どんどん鋭くなっている。
望まぬ身体の改造手術によって素質はある程度開花していたのだが、幾度もの戦いの中でその感覚にも磨きがかかってきた。
「リテイナーが8、9、・・・・おいおい、大勢だな。」
相手はこちらの存在をあらかじめ知っているのだろう。えらく慎重に包囲している。
その包囲のだいたいの様子を接触回線でキュラーに伝える。
「極悪商会とかじゃないみたいね。やとわれ傭兵みたい。」
「へ、どっちでもいいさ。先手必勝あるのみってな。」
同時に接触回線を切り、心の中で3つ数える。
どちらが言い出したというわけではないが、レイアスとキュラーは同時に行動を起こした。
白炎とレイ=ギルの二機が同時にまだ完成しきっていない包囲の中心に向かって一気に間合いを縮める。
幸運な事に、どうやら相手の場所までは森だ。
森の木に隠れながらの接近はそれなりの腕を必要とする技術だが、この二人にとって、いや、富士の樹海を背に持つMHKのテストパイロットにとって、造作もない事だ。
ズバババッ
まずは景気付けに、白炎が木立から飛び出しつつ『ヘル=フレイム』を連射した。
相手は、目視距離に唐突に現れたそのリテイナーに泡を食ったようだ。
ただ真っ直ぐに撃っただけのビームが、2つの火の玉が空に咲いた。
「血で、溺れなさい・・・・・。」
ヒュバッ!
そこへ、レイ=ギルが真紅の稲妻となって駆ける。
こちらは一閃で3機のリテイナーを鉄屑に変えた。
「どこのどいつか知らねぇが、土足で人様の土地に入ってきたらどうなるか、たっぷり教えてやるぜ!」
ズババババッ!!
再び白炎のライフルが連続してビームを放つ。
流石に不意打ちで無い2度目の攻撃は避けられてしまう。
が、白炎がいる方向とは全く別方向から再びビームが閃き、敵を飲みこもうと襲い掛かる。
その攻撃もいくらかは外れるが、その隙にレイ=ギルの長剣『ブラッディ=マリー』が敵のリテイナーをその牙の餌食とする。
白炎に装備されたリフレクターインコムを利用した、一糸乱れぬ完璧なコンビプレーだ。
「しかしこいつら、何者だ?」
味方を撃墜されて、やっとそいつらは動き出した。
散発的な銃弾が白炎とレイ=ギルに向けられるが、どれも当らない。
数こそ多いものの、それでもMHKを襲うにしては熟練度が足りてなさすぎる。
「何だ?何が目的だ・・・・?」
MHKが襲撃される事自体はそう珍しい事ではない。
MHKには、研究に使用される豊富な資源が集まっている。
エネルギーも、最先端のリテイナーも揃っている。
それこそ山賊達には垂涎モノのアイテムばかりだ。
だが、それだけに宇宙一と言って過言でないほどのリテイナーパイロットが揃っている。
普通の山賊が攻め込んでどうこう出来るような場所ではないのだ。
「しかもこいつら、山賊って訳でもなさそうだし・・・・・。」
根拠は無い。
これは直感だ。
しかし、前にもこんな事が無かっただろうか?
確か前は・・・・・・。
そうだ。NHKの狙われる最も大きな理由は、エネルギーや資材などではない。
MHKが狙われるのは、保有する超兵器のためだ。
MHKには問題を抱えた、それでも強力な兵器がゴロゴロ転がっている。
その中には今だ未解明なオーパーツや、未だ制御の難しい重力兵器、次元兵器などなど。
・・・・・・・。
・・・・・次元兵器?
そういえば、前の時はどうだったっけ?
門外不出の次元兵器や重力兵器が流出した事があった。
その時からこの『ヘル=フレイム』は例え練習中だろうと持ち出すようにしたのだ。
「通信、開け!!」
レイアスはそこまで思い付いた時、衝動的に通信ボタンを押した。
が、当然先程からのミノフスキー粒子の妨害にあって無線通信は意味を為さない。
「くそ、ここから間に合うか!?」
思わずレイアスは後ろを向いていた。
その視線の先には、MHK本部の倉庫の中でも特に重要度の高い、それこそ少しも解明されていないオーパーツの置かれた場所がある。
見れば、MHK本部の方からも煙が上がっているのが見えた。
「!?」
が、直後。まるでそれを狙っていたかのように、レイアスの感覚に新たな意識が触れた。
真っ直ぐに突き抜ける光のような意識。
少し迷いのような感覚も混ざっているが、この感覚は間違い無い。
いや、間違える筈が無い。
過去、レイアスがフリーファイターだった時、ただ一人だけレイアスがコンビと認めた人間がいた。
レイアスの良きライバルであり、良きパートナーであり、良き友人だった。
その人間の名は、『鬼を喰らう殺人蜂』ことヤスノリ=イワサキ。
だが、ヤスノリはまだフリーファイターとして各地を駆け回っている筈。
それがどうしてここへ?
だが、その思考は唐突に中断せざるを得なかった。
ズギュゥゥゥン!!
「レイアス!!」
キュラーは、目の前で起こっている事が一瞬信じられなかった。
ヤスノリの接近には、気付いていた。
今回もたまたま通りかかったかなにかで、手助けしてくれるものだとばかり思っていた。
だが、ヤスノリの愛機ヴァンブレイズνの放ったフォトンライフルの青い光条は、一直線に白炎の腹部を貫いていた。
爆発は起こさず、ただ崩れ落ちる白炎。
大抵のリテイナーがそうであるように、白炎のコクピットはその腹部にある。
「・・・・・・!!」
気が付けば、レイ=ギルとヴァンブレイズの距離は無くなっていた。
キュラーが無意識に間合いを詰めたのだ。
ヴァンブレイズを攻撃するために。
ギュバッ!!
レイ=ギルの放った一撃必殺の剣撃は、盾ごとヴァンブレイズの左腕をぶった切った。
返す太刀で更にヴァンブレイズを追撃するレイ=ギル。
が、ヤスノリの対処は冷静だった。
スター=マインをばら撒き、更に変形して躊躇しているキュラーとの距離を一気に離す。
再び距離を詰めようとレイ=ギルが動くが、ヤスノリの張ったビームの弾幕の前にうまく前に進めない。
ヴァンブレイズは、そのまま戦線から離脱した。
気が付けば他の襲撃者達も撤退してしまっている。
そこに残されたのは、キュラーとレイ=ギル、それに破壊されて沈黙したリテイナー達だけだった。


「ほぉっ、ほっほっほ!なんと他愛の無い。これが今まで散々てこずらせてくれたMHKだと言うのか?」
「お代官様の腕が良いからであります。」
その男の格好は、何処から何処までもヘンだった。
頭にはマゲ、服装もそれに合わせてか和服。
地球圏で1、2を争う裏組織、『極悪商会』のトップ、お代官とはこの男の事だ。
ちなみに、相槌を打ったのはそのお代官のリテイナー、越後屋だ。
お代官は高らかに笑いながら剣を振るった。
ズドンッ!!
その一振りで、MHKの無人リテイナーがあっさりと打ち倒されてしまう。
「ぬははははっ!ヌルイ、ヌルイぞぉ!!」
ズギャ!ズバッ!!
返す刃で更に2機のリテイナーを切り伏せる。
ヴィシューン!!
「何!?」
そこでお代官にビームライフルの弾が命中した。
同時にお代官のそばにいた極悪商会のリテイナーにもビームが突き刺さる。
「おのれ、何奴!」
だが、ビームは命中した中で、お代官だけは無傷だった。
良く見れば塗装の一部が溶けて蒸発している。
アンチビーム塗装というやつだ。
「俺の敷地で悪事を働くとは、いい根性だ。月に代わって御仕置きしてやる!!」
「所長、そのセリフはまずいです。」
お代官の視線の先には、2機のリテイナーがいた。
片方はMHKの所長ハスター=ハストゥールの駆る月光。
もう片方は、バイゼルハイム家当主にしてMHK研究員のジン=バイゼルハイムが乗っているのは、メカゴジラというリテイナーだ。
「お代官様、あやつは月光というリテイナーで、そうとう強いとの噂で御座います。」
「むむむっ!どうすればよのじゃ?」
「CKは近接戦が苦手に御座います。」
「そうじゃの。ワシらは足止め出来れば良いのじゃったわ!」
お代官のリテイナー、越後屋が一気に加速する。
それに応じて月光のビームライフルが閃くが、相手の速度の速さに照準が合わず、当ってもUB塗装に阻まれて思うようなダメージにならない。
「ちぃ、相性が悪い!」
「ここは私に任せてください!」
所長を庇って前に出るメカゴジラ。
その口がカパッと開き、
ズギャー!!
背鰭に当る部分が青白く発光し、赤い炎が一直線に噴出する。
炎は地面を舐めるように進み、凄まじい爆発を引き起こした。
「やったかっ?」
もうもうと立つ煙。
視界内に動く物は見当たらない。
グオオオォォォン・・・・
その時、異様な音を発して空気が振動した。
見れば、富士の裾野にある次元トンネルが妖しく蠢きながら振動している。
次元トンネルとは、どこかにある平行世界や異次元世界とこの世界を繋ぐ回廊だ。
近代の生んだ超兵器、次元兵器によって次元間のバランスが壊れた事にで出来てしまったもので、言わば公害の表れとも言える。
「何だ?」
思わずそちらの方を見てしまうバイゼルハイム。
が、そこに隙が生まれた。
「余所見とは、まだまだ甘いわっ!」
ズギャッ!
「ぐわっ!」
突如煙の中から姿をあらわしたお代官が、一刀の下にメカゴジラの左腕を切ったのだ。
バランスを崩し、倒れてしまうメカゴジラ。
お代官は更に踏みこんだ。
「お命、頂戴っ!!」
ズバッ!
「くっ・・・・!!」
後ずさりながらなんとか越後屋の剣を避けるハスター。
が、ビームライフルを犠牲にしてしまった。
あと1歩踏みこまれれば斬られる。
「デッドリィ、ファーングッ!!」
ズドドドドドッ!

「くぉっ!あと一歩というところで・・・・・。」
間一髪、駆けつけたゼロの乗るリテイナー、ハングドマンの指から放たれた黒いエネルギーが越後屋の前進を食い止めた。
その間にメカゴジラと月光は体制を整える。
「うぉのれぇい・・・・。」
「お代官様、引き際で御座います。」
「ええい、そうであったわ。ここで怪我をしてもつまらぬしの。」
お代官が合図をすると、極悪商会のリテイナーが一斉に飛び上がった。
そして、そのそれぞれが丸いボールのような物を射出する。
「あ、こいつら、逃がすか!!」
メカゴジラが火を吹くが、再び避けられてしまう。
代わりに、極悪商会のリテイナーが落として行った物がシュウシュウと黒い煙を吐き始めた。
「うわっ!何だ、これは!」
「くそ、煙幕か!?」
ミノフスキー粒子によって電波もレーダーも遮断されている今、視界まで閉ざされてはどうしようもない。
煙が晴れた時には、極悪商会のリテイナーは綺麗さっぱりいなくなっていた。

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