○片方からの穿孔と両方からの穿孔の実験。
2話で気になっていた宿題。片方からの穿孔の方が、スムーズに孔を貫
通させることができるのに、何故両方向からの穿孔が多様されているの
か?
と言う疑問に対する答えを探したいと思います。
2話からの抜粋。
初め、何で表裏の二方向から孔をあけているんだろうって(考古資料によ
くある。)中内さんと話をしていたのです。
実際穿孔をしていると、一方向のほうが孔を貫通させやすいって思ったわ
けです。逆の裏からあけるときに、ちゃんと表からあけてる孔にたどり着い
て貫通させるのって、難しくない?・・・そりゃー単純に、一方向からが簡単
やでってね。
その答えが・・・難しくやりにくい、孔の幅を広げる作業を避ける為・・・なん
じゃないだろうか?同じ幅の孔を貫通させる為に、裏表から孔をあけたので
はないかと言う私の直感。疑問@;
一方向から孔をあけても石材を手に持ってする方法(2話でやった方法。孔
広げ作業②・・・孔広げ作業①②③は、このページ
の最後に書いてます。)でやれば、案外容易に孔の幅を広げられるぞって
思うしなぁ〜
でも、両方から孔をあけた方が均一な孔の大きさには、しやすいと思うしな
ぁ〜 それとも、製作者の気まぐれって感じもあるしなぁ〜 疑問②
気まぐれって言うのは本当にそう思うことがある。
何時間も同じ事をやってたら、ちょっとでも違う事をしたくなるから、孔をあ
けてて深くなってくると、掘りにくくなるのは本当!ゴリゴリ削っているつもり
でも、実際は孔の中の壁面を削っているということもある。2時間ゴリゴリや
って、孔の深さがぜんぜん変わってない事がよくある。こんなときは、本当
にがっかりする。それだったら、逆からやってみようかって思うからね。
さてさて、どうなんだろう?
とりあえず、一方向掘りと両方掘りの検証をしてみる事にします。何か分
かる事があるかもしれないしね。
という事で、片方あけと両側あけの実験をします。
上の話、第2話での話しだったんだけど、2話を書いた後、情報を収集し
たり実験でわかったことなどで、終盤の連続ドラマみたいに話がググッと変
化しています。

図 1
この図は、玉・勾玉・管玉 などの断面図です。
ネットの遺跡調査報告書や、図書館などで発掘調査報告などを見ている
と、ターゲットは縄文中期ぐらいなんだけど、弥生や古墳でも上の図のよう
な感じの断面図がほとんどなんです。両あけで貫通して、紐が通ればそれ
でオーケーみたいね・・・
何を言っているのかといいますと、上で書いている疑問①の「同じ
幅の孔をあける為に・・・」という答えだと思うんですよ。
つまり私が考えた「同じ幅の大きさの孔を貫通させる為」と言うのは間違
いだと言うことです。同じ幅やまっすぐキレイに孔をあけるという事に、当時
の縄文人は重きを置いてないようです。縄文土器などの美的感覚からする
と、ちょっと意外に感じますが、出土遺物が証拠なんで仕方が無いって言
いますか、そういうもんなんだと理解するしかないです。
ただし、縄文中期より前の大珠(だいじゅ 縄文中期ぐらいで、大珠から勾
玉に変わっていく。大珠は、旧石器の終わりぐらいからあったんじゃないか
と、言われています。)なんかは、キレイな同じ幅の孔を貫通させるている
ようです。
と言うことで、疑問①は解決という事にします。
次に疑問② なんですが「製作者の気まぐれ」これもねぇ〜証明の
しようが無いのでなんとも言えないんですが、穿孔方法が圧倒的に両あけ
の方が多いところを見ると、ちょっと可能性として薄いですねぇ〜 でもで
も、絶対違うとも言えない とも思うんですがねぇ〜
俺としては縄文人の気まぐれって言うほうが、好きですけどね・・・
で、両あけをする理由としての可能性が高いのが、まあ、考古学で定番に
なっているスピードですかね。片あけより両あけの方が早く貫通する。定説
@
それともう一つ、片あけの場合、最後の最後貫通するときに、貫通した方
の表面が弾けて丸くキレイにあかない。定説A と言うのがあります。これ
も考古学での定番の学説ですね。
と言うことで、片あけ・両あけの実験をやってみました。
しかぁ〜〜〜し その途中の写真・・・みんなすっ飛んじゃって・・パソコン
おかしくって・・あぁ〜あ 復活ならずです。
まあ、途中経過の写真をみてもしゃーないんで、データはメモしてあるし
何とか機嫌直して書きます。

写真 メノウの板 厚さ4mm 均一な厚さです。データを取るにはうってつ
けな板です。この写真は、この板を買ってきてすぐの写真です。何とかこの
写真だけ、残っていました。 ふぃ〜
2話をアップした後すぐこの板を手に入れたのです。知り合いの小垣内君
に買ってきてもらいました。ご協力ありがとうございます。
どこで買ってきてもらったのかといいますと「石ふしぎ大発見展」というイ
ベントって言いますか、鉱物・化石などの即売会って言いますかそんなとこ
ろですわ。彼は、化石マニアなんでよく行くそうです。その話を思い出して、
頼みました。
平らで何個も穴をあけれそうな鉱石、レンガブロックの代わりに実験する
鉱石がほしかったからね。ついでに、水晶の粒と翡翠も買ってきてもらいま
した。合計で、1.260円です。安いもんですわ。

写真 0119 小垣内撮影
「石ふしぎ大発見展」会場の様子。年に2回ぐらい開催されるようです。
興味あられる方は「石ふしぎ大発見展」でネット検索してみてください。

写真 8471 No2が片あけ No5が両あけ 他にも孔が若干あいてますが、
いろいろと実験やってるんですわ。

写真 8457 片あけです。一応1.8mmの竹ひごが通るように、貫通後に孔広
げ処理(孔広げ処理②をした。孔広げ処理①・②・&#
9314;は、このページ最後に解説しています。)をしました。孔広げ処理は、
疑問①で否定しましたが、一応片あけ・両あけの比較する為、いつも
のように処理をした。
それと、注目はまっすぐ孔があいているところです。

写真 8460 こっちが両あけです。これも1.8mmの竹ひごが通るよう孔広げ処
理(孔広げ処理①の後②)しています。注目は、斜めにあいて
いることです。そう・・・表と裏からの穿孔がうまく通りませんでした。やっぱり
ね、難しいですよ。うまく貫通させるのは。出土遺物の実測図の断面図も、
両あけで真っ直ぐ貫通しているのって、あんまりないんですよねぇ〜・・・上
の図1のように!
穿孔している写真がないので、後はデータで説明しますわ。
| No 2(片方から穿孔) |
No 5(両方からの穿孔) |
キズ付け |
30分 |
表からの穿孔 |
キズ付け |
15分 |
研磨剤 |
金剛砂 |
研磨剤 |
金剛砂 |
穿孔2時間後 |
2mm弱 |
2時間後 |
2mm弱 |
穿孔3時間後 |
2.5mm |
3時間後 |
2.5mm弱 |
穿孔4時間後 |
3mm弱 |
ここまでは、片あけと同じで、穿孔もほとんど同じ
です。若干浅い位です。 |
穿孔5時間後 |
3mm |
穿孔6時間後 |
3.5mm弱 |
裏からの穿孔 |
キズ付け |
15分 |
合 計 |
6時間27分
貫通 |
2時間後 |
1.5mm弱 |
|
|
|
|
2時間21分貫通 |
|
|
表 裏 合 計 |
5時間21分貫通 |
|
|
|
|
|
キズ付け |
30分 |
表裏キズ付け |
30分 |
穿孔 |
6時間27
分 |
表裏穿孔 |
5時間21分 |
孔広げ |
45分 |
孔広げ |
2時間42分 |
合 計 |
7時間42
分 |
合 計 |
8時間33分 |
表1 片あけと両あけの穿孔データ。
一番下の合計水色の時間は、穿孔と孔広げ作業を含めた合計タイムで
す。上の疑問①で書いたように、同じ大きさや幅の孔を貫通させる必
要がないようなんで、この合計は参考にしません。その上の、貫通した時の
時間(黄色の時間)の方が比較になります。
参考に、孔広げ作業は、両あけより片あけの方が断然早いです。その解
説は、2話の最後の方で書いてます。
まず、表の黄色の時間から。
ただ単に孔あけ選手権なら、両あけの勝ちです。まあ、ずっと穿孔をやっ
てきて、感覚的に想像がつく結果でした。孔は、深くなるごとに削れて掘れ
にくくなります。No2の3時間以降を見れば分かりますよね。
それでですね、この結果から(片あけより両あけの方が、早く貫通させるこ
とができる。)縄文人が、両あけにこだわる最大の理由に「片あけより両あ
けの方が早く貫通させられるから」だと結論を出してしまっていいのだろう
か?
あまりにも単純で、短絡的ではないだろうか?
私がいつも言っている縄文時間でいうと、一つの孔をあけるのに1時間短
縮したからって縄文人は満足なんだろうか?おっといけね・・・・この穿孔実
験は金剛砂でやってます。だから、縄文時代で縄文人がやる穿孔とは研磨
剤が違うので、1時間の短縮って言うのは間違いです。縄文時代でもあった
研磨剤で穿孔をすると、貫通するまでもっと時間がかかって、そして片あけ
と両あけの時間差ももっと差があると思います。
その差が何時間あるのか?
今それを実験してますが、現代の金剛砂は物凄いです。凄い威力があり
ます。ハハハ・・・これ以上はまだ言えません。実験が終わってからここで話
を書きますので・・・1つの孔の貫通まで80時間とかかかるかも・・・ハハ
笑い事ではなくなっているのだ! 見たか!
話は戻って!
両あけの穿孔で難しいのが、表裏の穿孔をまっすぐ貫通させると言うこと
なんですが、これがなかなかできない。中内さんと俺と3回やって、3回とも
上手く貫通できなかった。それに、上でも書きましたが、縄文時代の遺跡で
出土した玉や管玉などの実測図を見ると、上手く貫通できてないのが多い
ですね。
表裏からの穿孔が、上手く通らないのを押してでも両あけにこだわる最大
の理由が「早く穿孔できるから」という定説@をそのまますんなりと納得でき
ないんですよねぇ〜 他に何か最大の理由があるように感じるんです。
両あけの穿孔で、表裏が上手く貫通できているのと失敗しているのとの
比率みたいなのが分かれば面白いんですがねぇ〜 それに、片あけと両あ
けの比率も分かれば面白いんですけど・・・ 私にはそのような情報網があ
りません。誰か知りませんかぁ〜?? ご一報ください。お願い!
次に、定説A「貫通した方の表面が弾けて丸くキレイにあかない」と言う
のについて。

写真 8639 8641
確かに、片あけの出口の方って(写真下)最後の最後、力の入れ具わい
もあると思うけれども、最後の薄皮1枚で力を入れすぎると、削れるって言う
よりも割れるに近い感じになっているんやと思う。上の写真なんかまさしく
そうですね、孔の淵が弾けて薄く剥がれている。これは確かに汚いよね、で
も、表の方はどうだろう?
上の写真の2つ孔は、どっちも孔あけをした方なんだけど、孔の淵を見て
くださいよ。キズだらけでしょう。穿孔するときに、水付けて研磨剤付けて、
孔の中に先を差し込むんやけど、何回もそれを繰り返す・・・天文学的な数
字・・・大げさやけど、物凄い回数になる。
毎回毎回ぴっちり孔の中へ先を差し込めない。ずれて何度も失敗します。
もうね、失敗って言わないですねこうなったら、当然って感じぃーです。
穿孔の初めの方なんかは、孔から竹管が何度も滑って孔から逃げていき
ます。
だから孔をあけた方(穿孔を始めた方)がキレイだという認識は違うと思う
な。
両あけにしろ片あけにしろ、どっちにしても最後は穿孔であいた孔の淵は
研磨してキレイに仕上げないといけないんだと思う。
ということで、私には、考古学会の定説Aの「貫通した方の表面が弾けて
丸くキレイにあかない」というのが、両あけの最大の理由としては、弱いよう
に思う。
上でも書きましたが、何かもう1つ理由があるように思うなぁ〜
これは今回の宿題としておきます。
★ 最後に、疑問①で却下しましたが、孔広げ作業@・A・B
を解説しておきます。
片あけでも両あけでも、一旦貫通してしまうと研磨剤も水もその孔から下
へ流れてしまう。だから貫通した孔に、何か加工しようとしてもそれはなか
なか難しい。加工というのは、ここでは孔を広げる作業のことなんですが、
私が経験してやってきた事や、穿孔しながら考えて実践をした孔広げ処理
を3つ解説します。
これは、あくまでも私が考えて実践したものです。考古学的に何の根拠も
ありません。ただ、縄文時代でできる方法が条件で考えやりました。
きっと他にも画期的なやり方があると思います。私の一生では、縄文時代
1万3千年間の技術を、追いかけるには短すぎる! ハハハ・・・
孔あけ処理①
穿孔を無我夢中でやっていると、いろんな事を考えます。それで、単純で
簡単で自然と思いつくのがこの方法だと思います。

写真 0038

写真 0044
石材を固定している木の台に、水と研磨剤をいっぱいにして穿孔する。実
際やってみましたが、劇的な効果があるとは感じなかった。すいません、こ
れは孔広げ処理①ではありません。
次に自然と思いつくのがこれ!

写真0047
★ 孔広げ作業①
貫通した孔の片方を、小さくカットした竹管でふさいでしまう。要するに、底
の孔から水と研磨剤の流出を防ぐ作戦です。ふたした後は、木の台に固定
していつものように穿孔です。これはそれなりに効果ありました。孔広げ処
理①とします。
第2話の最後に書いた水晶の穿孔では、孔広げ処理①をした後孔
広げ処理②を施して1.8mmの竹管が通るようにしました。

写真 7812
★孔広げ処理②
孔広げ処理①である程度の大きさに孔を広げ、先を細くした竹管を
通します。
竹管と石材の孔を水平にするようにします。これは水と研磨剤を逃げにくく
するためです。

図2
材と竹管を水平ぐらいにして、竹管をくるくる回したり出したり入れたりを
繰り返す。この方法は、かなり効果がありました。10分20分では無理です
が、孔が広くなっていく感触が分かりますので、仕事としてやりやすいです。
★ 穴広げ処理③
上の孔広げ処理②の発展版です。
私が中内さんの前で、孔広げ処理②をやっている時に中内さんが
考えたものです。

写真 8500 手のモデルは原田一夫さんです。ご協力ありがとうございまし
た。
石材を通した長めの竹管の上に、石材を固定していた台を乗せます。そ
して、台を前後に動かすと、台の下の竹管が回るという仕組みになってま
す。回転力が凄いです。指で回しているのと桁が違いますわ。さすが中内さ
んって所です。
若干、石材を持っている方も、台の前後に合わせて前後に動かした方が
滑らかに回転力を維持できます。
と言うことで、孔広げ処理① ② ③でした。
今回の宿題 片あけ両あけの理由が、何かもう1つ説得力のある理由
があるように思うなぁ〜 です。
今回はここまで!
おわり〜
次のページ vol 46-5話 穿孔途中の孔の底にできる突起物など