火車・・・宮部みゆき

ある評論家さんの台詞。「今の日本の作家は、宮部みゆきか否かの、二つにわけられる。」ですって。
私はそこまでは言い切りませんが(笑)、宮部さんの実力は誰もが認めるところ。今さら、説明するまで
もない、作家さんです。

そんな彼女の代表作は、やっぱりこれになるのでは。前回紹介した「大誘拐」に次いで、20世紀を代表する
作品第2位にも、選ばれていました。私もこの作品がでた年にすぐ購入して読みましたが、例のごとく人に
あげてしまって、でもまた読みたくなって、文庫本を友人から貰い受けたのでした。

火車とは、生前悪事をした亡者をのせて、地獄に運ぶ、火の車。このお話は、止まらない火車に乗って
しまった、いや、乗らざるをえなかった女性が真の主人公。でも彼女は姿を見せない、正体が掴めない。
必死に追い求める人たちの、人物描写が、素晴らしいですね。特に、宮部さんは少年の描写が神業的に
うまいっ。これは、ほかの宮部作品にも共通しています。京極夏彦氏は、「彼女は、半ズボンをはいた永遠
の少年が理想なのだ。」と仰る(笑)。真偽の程は定かではありませんが、宮部さんは独身です(笑)。

この作品をハードカバーで購入して、さぁ読もう!と思ったとき、同居する前の義父母の家に滞在していま
した。確か、夜の9時ころだったでしょうか。ミステリーは一晩で読まないと気のすまない私は、明日読もうか
迷いましたが、本から立ち上るオーラに負けて(笑)、読み始めたのです。

区切りのいいところで止めないと、ここは自分の家じゃないんだし・・・大変だぞ〜と思いましたが、もうもう、
止める事などできません。明け方の3時ころまでかかって、読みきりました。私も一緒になって、「彼女」を、
追いかけている気持ちになって、しばらくは茫然自失でしたねー。100%感情移入してしまいました。

それから、もう、10年以上たっていますが、宮部さんの活躍はとどまるところを知りません。直木賞を受賞
された「理由」、SMAPの中居君主演で話題になった映画の原作でもある、「模倣犯」などなど、読み応え
のある素晴らしい作品を、次々に発表しています。

醜く利己的で残忍な犯人を描きつつも、宮部さんの作品に「救い」を感じるのは、私だけでしょうか。人間は
愚かでどうしようもない存在でも、やはり一人では生きていけない、弱く愛すべき生き物なのだと、作品から
語っているような気がしています。

まぁ、むずかしいことはともかく(笑)、義父母の家で夜中に一気に読んだ、あの時間。夢中でページをめくっ
ったあの時間の醍醐味こそが、私にとってのミステリーの素晴らしさ。ハードカバーで購入する事はあまり
ない私ですが、このときばかりは、「買ってよかった、お金以上の面白さ!」と、大満足でありました〜。

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