ななつのこ・・・加納朋子

いきなりですが、皆さんが「青春」を感じていた頃って、いつですか。
「それは今よっ!!」と、熱い目をしている人もいれば、「もう、遠い日の事よ。ふっ。」と、遠い目を
している人もいるでしょう。私もかなり遠い日の、短大時代が青春でしたねぇ。

北海道の小さな町に、生まれ育った私には、札幌は憧れの町。絶対、高校を卒業したら、札幌に
進学しようと決めていました。第一志望の4年制大学に入る事はできませんでしたが、短大に入学
して、友人達にも恵まれ、都会生活が本当に楽しく、ススキノも大好きになりました。(笑)

短大を卒業したあとも、OLとして札幌で生活していました。ずっとずっと、札幌にいるんだろうと
思っていましたが・・・。なぜか今は、札幌ではなく。あれほど嫌っていた「普通の専業主婦」に
なっています。けれど、今、キラキラとした青春のような毎日ではなくても、安らいだ落ち着いた
毎日です。これはこれで・・・とても幸せなことです。

前置きが長くなりましたが、この「ななつのこ」は、私にとって青春を思い出させてくれる一冊です。
主人公の入江駒子は短大生。日常の小さな謎を、ある作家にだしたファンレターに、何気なく
書いたところ・・・。作家は、鮮やかにその謎を解いてみせます。駒子と作家の、不思議な文通が
始まりました・・・。所謂、「日常ミステリー」といわれる作品です。

人が何人も殺されるような、「えーっ、うっそー」と叫ぶような、そんな作品ではなく、本当に日常の
さりげない、けれどちょっぴり恐ろしい、ささやかな謎。そんな謎を見つけ出す駒子。鮮やかに
解き明かす作家。その二人を取り巻く世界が、私にはとても懐かしいのです。バカを言い合う友達。
短大の食堂。大人になって離れていってしまうように思えた、親友。変わっていく、故郷の友達。
退屈で長い長い講義。変わりたくて変われない自分・・・。

割と早くに結婚して、子供を産んだ私は、あっというまに、「お母さん」の自分に慣れていきました。
そんな頃、この本を読んで・・・。すごくすごく、懐かしい気持ちになりました。加納さんの本は、それ
からもハードカバーでも買い続けました。が、人にどんどんあげてしまって、手元には残っていなか
ったのですが、最近、再読したくなって、文庫になったものを全て購入しました。

本当は、思い出に浸るのは好きではありません。大切なのは、今とこれからと思っているので。
けれど、加納さんの文章は、本当に優しく懐かしい。それでいて、小さなトゲもしっかりあって。
読んでいると、思わずタイムスリップしてしまうんですよねぇ。

加納作品に共通するのは、雨上がりの虹のような、鮮やかな謎解き。「ななつのこ」の続編の
「魔法飛行」の、作品の解説を書いたのが、有栖川有栖氏。名文があります。

「論理じゃない、魔法だ。」・・・漢字だとわからないのですが、英語にして、ルビをふると・・・。
「ロジックじゃない、マジックだ。」となります。加納さんの謎解きの鮮やかさは、まさにマジック。
私には青春まで思い出させてくれる、最高のマジックなのです。


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