私は昔から酷い意地っ張りだった。

それは今もかわらない性格であるし、変えようとも思わない。

今後も変わらないだろう。

私は1人でも何とかできる。

そう、悩みがあっても笑顔で周りに嘘を吐き続けるのだから…











…!」

1年に及んだ長期任務を終えて木の葉の里に戻ってきた私を懐かしい声が呼んだ。

「……チョウジ」

私の年下の幼馴染の秋道チョウジだった。

、一年ぶり…元気だった?任務はうまくいった?」

眩しい笑顔で彼は私に笑いかけてくれる。それは昔と変わらないのだけれど…

「…私、火影様に報告書出さなきゃ…」

上手く笑えたかは判らなかった。

何とかその場から離れる。

一年ぶりに出会ったチョウジの笑顔が変わってしまった今のの私には、ただ、眩しいだけで。

そこにいる自分が酷く汚く思えたのだ。

私はまだ何か話したそうなチョウジをおいて火影邸に向かった。










中忍、ただいま戻りました」

火影様の執務室には、火影様のほかにも人がいた。


  奈良 シカマル


チョウジの親友だ。

何もかも見透かすような目で私を見てくる彼のことが私は昔から苦手だった。

今もあの彼の視線が私に容赦なく突き刺さっている気がする。


中忍、今回の任務報告書、しかと受け取った。ご苦労だったな」

「ありがとうございます」


火影様…綱手様に椅子に座るように視線で促され、私は綱手様の正面のいすに浅く腰を下ろした。


「今回の任務では肉体よりも精神ダメージが大きかっただろう。しばらくの間休めばいい」

「お言葉ですが火影様、私には問題はありません。明日からでも任務を入れていただいて…」

「駄目だよ、火影命令だ。一週間の休暇を取りなさい」


困ったような笑顔で諭されて、私はうなずくしかなかった。

退室しようと腰を上げると綱手様に呼び止められる。




「はい」

「シカマルから個人的な頼みがあるそうだ」

「え?」

「私はちょっと出かけるからここで話すといい」


思わず奈良シカマルを凝視する。

別に親しいわけでもないのに…頼み?個人的な?


綱手様は身支度を整えるとシズネさんを呼んで出かけてしまった。

残されたのは私と、奈良シカマルの二人。


「…、サン」

「…はい」

しばらくの沈黙の後困ったように頭をかきながら奈良シカマルは口を開いた。


「あんたさ、歌、得意なんだよな?」

「…まぁ、普通だと思うけど」


実は歌は結構好きだ。

一族自体が音楽に関係することの多い一族であるし、私も幼いころからよく歌を歌って育ってきた。

でもなんでこの人がそんなことを知っているのだろう?


「…明日、何の日か知ってるか?」

「明日?5月1日…」

「あんたは覚えてないかもしれねぇけど…明日はチョウジの誕生日なんだ」


覚えてる。大事な幼馴染の誕生日だから。


「誕生日に何が欲しいってチョウジに聞いたら…あんたの歌が聴きたいって言うんだ。だから…」

「私は…もう、歌えないわ」

「だけど…!」

「用件がそれだけなら帰らせていただくわ…」

瞬身の術で私はその場から逃げ出した。









チョウジの誕生日。

幼いころは彼の誕生日には一日中歌を歌ったものだ。

彼は何故か私の歌が好きで、彼がアカデミーを卒業するまでは毎年彼の誕生日には彼と一日中歌うことが私から彼への誕生日プレゼントだった。

でも、もう彼のそばで歌えない。

だって私は忍で、何人もの人を傷つけているのだから。


他の人の血で汚れてしまった私に、

優しい歌はもう歌えない、歌えない

…歌えないんだよ、チョウジ。

知らず知らずのうちに涙がこぼれた。

頬を伝う涙が地面に落ちて、私の足元にいくつかの染みを作った。







サン」

名前を呼ばれ、慌てて振り向くと奈良シカマルがいた。

「探しましたよ」

探さなくていいのに。

「…なんで、歌えないんですか?チョウジはあなたの歌を聞きたがってるのに」

戸惑いながらも問いかけてくる、奈良シカマル。


「…私は…もう、汚れているから…チョウジの前では歌えない…」

呟くように答えると、奈良シカマルは首をかしげた。

「…だってよ、チョウジ」







「…

奈良シカマルの後ろの方からチョウジが現れ、私の名を呼んだ。

今の言葉をチョウジに聴かれたのかと思うと私はどうしていいのかわからなくて、動くことも言葉を発することもできなかった。

「…、僕は君に歌って欲しいんだ」

私をしっかり見つめ、いつになく強い口調でそう言うと、チョウジは私の傍までつかつかと歩み寄ってくる。

そのままチョウジに抱きしめられた。


「…チョウジ?」

は、汚れてなんかいないよ…ずっと綺麗なままなんだ」


チョウジは私を抱きしめたままで、小さい声だけれどはっきりとそう言った。


、僕はもう子供じゃない。がどんな任務についてても人を傷つけててもいいから…
 …本当のことを話して欲しいんだ。
 綺麗とか汚いとかじゃなくって…その…僕のこと…」


「僕のこと、好きかどうか、本当の気持ちを聞かせて欲しいんだ」





時間が止まった気がした。

私が何も答えられずにいると彼は焦った声で

「あ、その…僕は、のことが…好きだから」

付け加えるように言うのがいかにも彼らしくて私は思わず笑ってしまう。

「やっぱりの笑っているときと歌っているときが僕は一番好きだ…」

真顔で言われて、思わず赤くなって。



「…私、汚れてるけど…チョウジのこと、好きでもいい?」

小さな声で聞いた。







眩しい彼の笑顔。

その夜、私は彼の為だけに歌った。



歌声は響く

音楽に言葉は要らない

彼と見詰めあって、微笑みあうだけで

私は綺麗になれた気がして

彼のことを一層愛しく感じる

彼の笑顔を見るだけで悲しみも切なさも断ち切れて

歌声が響くたびに私たちの想いはひとつになっていく…



                       *** end ***                         

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