四
国に二ヶ所ある三県境。
一つは曼陀峠近くの薄暗い杉林の中に、ひっそりと手製の小さな標識がある愛媛・徳島・香川の県境。これは、一度訪れている。
次は、高知・愛媛・徳島の県境。何時かは訪れようと思いながら延び延びに。
天気予報では高気圧に覆われ四国全体が快晴の予報。
というわけで前夜11時過ぎに急遽「明日行こうか?」ということに。
それから、愛媛・高知の分県登山ガイドを引っ張り出し、S氏の「私の山歩き」を開きコースを検討。結局一番楽そうな高知登山口からのピストンに決定。布団
に入ったのは1時前。
翌朝家を出たのが7時前。コンビニでアルコール・食料を仕入れ高速へ。久しぶりの新宮インターで下車。ここでもETCゲートの工事中。ここまではいつもと
逆で連れ合いは助手席で熟睡中。対向車のない川之江・大豊線を上がって行く。カガマシ山登山口も以前のまま。
笹ヶ峰隧道出口の広場で朝食タイム。いつからか山歩きの朝食は車中もしくは途中の景色の良い所になっている。

【青空】
窓を開け朝食を取っていると、愛媛の鹿が朝の挨拶を掛けてくれている。朝食後少し下って笹ヶ峰登山口へ到着。今までは、工石や、奥白髪を歩いたとき通り過
ぎた登山口。近くの路肩へ通行の邪魔にならないよう駐車。
土佐北街道の標識から歩き出す。直ぐにマツカゼ草の群落。シーズン中なら見事だろうが、今はのんびり者だけが花を付けている。

【マツカゼ草】
しばらく歩くと、傾斜のきつい所には昔のままの石畳。やがてこれまたのんびり者のツリフネ草が花を残してくれている。30分ほどで県境の大きな標識のある
笹ヶ峰へ。

【県境】
頂上のブナは黄色く色付き始めている。

【ブナの黄葉】
樹林越しには橡尾山・カガマシ山が直ぐ近くに見えている。シャツを脱いだりコースのコピーを確認し三傍示山目指し低い笹の中を歩き出す。テープがつるべ打
ちされている静かな尾根歩きである。足下には猪の掘り返しが至る所に見られる。
やがて両脇にシャクナゲが現れ始め、小さなアップダウンを繰り返す。今度は高知側から鹿の鳴き声が聞こえてくる。道端の「まゆみの木」の木肌が綺麗に角で
剥がされている。

【鹿剥ぎ】
尾根道にはスズタケが現れ始め、やがて背丈以上の高さとなる。が、足下は綺麗に踏み固められ歩きやすい。時々木の枝が混じり上にも注意を払わないと頭をぶ
つけてしまい悲鳴を上げることも。かといって足下も確認しなけ
れば倒木に向こう脛をぶつけこれまた痛い思いを。

【スズタケ】
急傾斜のスズタケの中を登り、前方が明るくなり尾根へ飛び出す。明るい三県境である。標識は何もないがここからは南北に山道が続いている、前方には遠く祖
谷の山並みがクッキリと見えている。左手へ進むと、徳島側は段々状に刈り払われ10分弱で三傍示山三等三角点の頂上へ。
昼食を何処にしようかと探しながら更に先へ進む。少しフラットな場所で店開き&昼寝の寝床を確保。食前酒&味噌ラーメン&手巻き寿司のランチタイム。あと
は横になり前夜の睡眠不足の補い。横になると頭上のブナの枯葉が地面に落ちる音のみ。徳島側では鹿が鳴いている。
うとうとしている内に時計を見れば2時間半が過ぎている。登山口からここまでが2時間弱。休憩が2時間半。いつも奇妙な二人の山歩きである。笹ヶ峰まで引
き返し、杖立地蔵まで足を伸ばすことに。沢山の杖が立てかけられている杖立地蔵が優しい顔で迎えてくれた。

【杖立地蔵】
裏側へ上がると正面に三傍示山が谷を挟み見送ってくれている。

【三傍示山】
ここで家族会議。このまま登山口へ降りても面白くない。どちらが土佐北街道を「下り付の集落」へ下り、残りが車担当。今回はジャンケンなしで前回の八面山
が連れ合いが歩いたので今日は旦那が歩くことに円満?に決定。1時間半後に「下り付の集落」で再開を約し別れる。
立派な街道を歩くと、最初は「七曲り」の急坂。道端にはリンドウが一杯蕾を付けている。

【リンドウ】
石畳が敷き詰められているが落ち葉がつもり滑りそう。下りきると杉林の中の水無峠。さらに進むと「笠取峠」「徒武」。下りだけかと思っていたが小さなアッ
プダウンが途中にある。そして「樫の休場」ここで携帯に着信アラーム。でも二本歯で応答は不可能。
ここからは標高差450m程の急降下。「腹包丁」と呼ばれ参勤交代の武士が刀を腹へ回さないとこじりがつかえたという急勾配。ここも丁寧に石が並べられて
いる。石畳の切れ目には猪の掘り返し。

【石畳の土佐北街道】
江戸時代、野根山を抜ける土佐東街道からこの土佐北街道へ参勤交代路が変わり、おそらく地域の住民達の使役により石を並べたのだろう。
当時の住民達にとっては路が良くなり便利になったのだろうか?
それとも使役の苦労が増えたのみだったのだろうか?
左右の沢の音が近づき始め、傾斜が緩くなると「下り付の集落」は直ぐである。道端にはジンジソウが残っている。薄暗い杉林を抜けると廃屋が現れ前方から連
れ合いが歩いてきているのが見える。
無事ドッキング成功。
県道に駐車している車へ戻り、これからの予定を相談。川之江へ出るか、高速へ上がるか、新宮から山城町へ出るか?相談しながら取りあえずインター入り口に
あるはずの「お茶饅頭」を求め走らせる。入り口へ着いてもお店がない???
饅頭は諦め、賢見温泉へ向かうことに決定。賢見温泉に着くと駐車場には車が多数。行き先を池田の簡保の宿に急遽変更。ねんりんピックで一般客の少ない簡保
の宿「さまち湯」にのんびり浸かり汗を流した。
鹿の鳴き声を聞きながら、誰にも出会わない静かな山歩き・街道歩きの一日でした。
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